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スピンオフ企画 スピンオフトップへ戻る
山本理沙編 不良少女とよばれて
クリックすると該当部分へジャンプします。 第22話 第23話 第24話

     


  第22話「ストップ・ザ・デビル」(1984年9月11日放送)

 笙子が葉山家に家事手伝いとして入ってから早くも2週間が過ぎた。
 笙子は父が来ていると言われ、客間に行く。

 歌子「笙子さんにはほんとに気を使いますのよ。少年院帰りの人には優しくしてあげないとカッとして何をされるか分かりませんし……いつ辞めて頂いても結構ですのよあたしは」
 父親を前にして、極上のイヤミを並べる品性下劣な歌子(女優の三ツ矢歌子さんが品性下劣だと言ってるのではない)。

 さすがの笙子も悔しそうに唇を噛み締める。
 そこへ葉山がやってくるが、葉山に対し家来のようにペコペコ挨拶する父の姿をいたたまれないような目で見る笙子。

 葉山は葉山で、「あなたの娘さんはひどい嘘つきですなぁ。家事手伝いと言うことで雇ったんだが、暇さえあれば稽古場の覗き見、どうも私に稽古をつけて欲しいらしい」と、白々しい言葉を吐く。

 その機を掴んで笙子は舞楽の指導をしてくれるよう頼むが、葉山は「舞楽は女子供がするものじゃない」と突き放す。
 笙子が針の筵のような状況にあると言うのに、恋人のトミーは、暢気におやじと囲碁を打っていた。
 多代「お願い、お願いだから、誰か働いてーっ!」

 しかも驚いたことに、早くもモナリザが模範囚として仮出所が認められたことが二人のやりとりで分かる。
 うーん、さすがに、早過ぎないか? しかも明日だと。

 それにしても、笙子が少年院から出てきた途端、少年院の中の世界はまるで存在していないかのように無視されるのがちょっと悲しい。確かに、笙子やモナリザあっての少年院とは言え、山本さんたちが閉じ込められたままなのが、納得いかないのだ。トミーにしても、笙子が退院した途端、ボランティアの音楽教師までスパッと辞めてしまった模様。考えたらひどい話だ。
 そこへ多代が、にこやかに男谷の到来を告げに来る。夫と息子が無職で、収入の道が途絶えていると言うのに、この明るさはなんなんだろう。現実逃避のあまり、既に感情がバカになっちゃってるのかもしれない。

 ま、トミーと昌也、二人の退職金と貯金でしばらくはやっていけるのだろう。
  
 腰を下ろした男谷、いつになく晴れ晴れとした顔で、

 「哲也、俺は決めた。お前俺に言ったろ、恭子さんと生涯を共にする気があるかって……俺は恭子さんと結婚する!」
 と、遂に心の底に秘めていた思いを明らかにする。

 トミーも「そうか、お前がそう言うのを待っていた!」と、思わず本音を口走ってしまう。要するに、恭子さんを男谷に押し付けたくて押し付けたくてしょうがなかったのだ。

 もっとも、慎重居士の男谷のことだから、まだプロポーズなどはしていない。その場にいた久樹夫妻に「プロポーズの言葉はなんでしたか」と、話を振る。
 昌也「私? ……忘れたな」
 多代「私は良く覚えてますわ。あなた、ダンスパーティーの帰りにこうおっしゃいました……信子さん、日本は間もなく独立します。僕らも二人で独立した生活を
 昌也「よしなさい、30何年も前の話は」
 多代「うっふふ」

 信子と言うのは多代の役名である。
 トミー(最低のプロポーズだなと思いつつ)「男谷、俺はプロポーズの言葉くらい簡単なものはないと思う。何の工夫も要らない。愛情さえあれば良いんだからな」
 男谷「愛情さえ、か……いやぁ、実はその愛情がないんだ。財産目当てだから」
 トミー「帰れ!」

 本当は、「愛情さえ、か、そうだな、ありがとう」と、簡単に納得する。
  
 だが、肝心の恭子さん、すっかりドラッグ地獄へ落ち込んでしまい、会社のオフィス、社員たちのいる前で、自分で覚醒剤を打つまでになっていた。注射を打ち過ぎて青くなってしまった腕がリアルで怖い。
  
 酒井「だいぶ手付きもなれましたね。明日あなたのご両親に上司として挨拶にうかがわせて貰います。クスリが欲しければ幸せそうな顔をするんですよ」
 酒井の言葉に、奴隷のように頷く恭子。既に目が尋常でなくなっている。

 そして、薬の効果でエクスタシーを迎えたような表情になる。

 ここまではまりこんでいながら、彼女はまだ貞操は守っているらしい。実際はまずありえない話で、そもそも覚醒剤の効用のひとつは、セックスの喜びを高めることにあるのだから、彼女がひたすら注射打ってばかりと言うのは、いかにも嘘臭い。ま、大映ドラマ(と岡田奈々さん)は露骨なセックスシーンはご法度なので、しょうがないけど。

 ノックの音がしたので、恭子さんは慌てて注射器などを隠す。
 来客は男谷で、酒井を無視して恭子さんの前に立ち、ハンカチで首筋の汗を拭きながら、

 男谷「恭子さん、僕と……連れ添ってください」
 と、いきなりプロポーズの言葉を口にする。
 トミー「男谷……よくやったぞ」
 男谷の心の中のトミーが爽やかに頷く。
  
 一瞬何を言われたのか、把握できなかった恭子さん、思わず顔を起こす。

 その場にいた社員たちも無遠慮な笑い声を立てる。

 まあ、そんな大事なことを他に人のいるところでいきなり切り出した男谷が非常識なんだけどね。
 しかも言うに事欠いて「連れ添ってください」だと。まだストレートに「結婚してください」の方がいいだろう。
 と言うか、まだ付き合ってもいないのに、いきなり結婚してくれと言うのもムチャクチャな話だ。多分、男谷、プロポーズの言葉とか考えているうちに、妄想と現実の区別がつかなくなっていたのではないだろうか。

 酒井も「人前でプロポーズですか」と呆れる。
 しかし彼、周囲のことが一切意識から抜け落ちているようで、「僕はまだ駆け出しの弁護士です。幸せにして差し上げるとは言い切れません。しかしあなたのためならどんな苦労でもします!」と、熱く恭子さんへの思いを一方的にぶちまける。

 恭子「男谷さん」
 男谷「いいんです、返事は今日じゃなくても」
  
 だが、男谷、ここで汗を拭っていたハンカチを取り落としてしまう。拾い上げようとした際、あっさり注射器に気付いてしまう。
 男谷「これは……そうか、貴様ら恭子さんにまで覚醒剤を!」
 酒井「そんなものやっていません」
 男谷「じゃあこれはなんだ?」
 酒井「やっていません」

 まるで万引きの現場を押さえられた小学生のような幼稚な否定の仕方をする酒井。せめてここは「ただの栄養剤です」とか言いなさいよ。

 男谷「警察に訴えてやる!」
 そのまま部屋を出て行こうとするが、
 酒井「いいんですか、愛する恭子さんまでブタ箱に入ることになっても?」
 男谷「貴様っ」
 その言葉に動けなくなる男谷。

 ここでOP。

 葉山の仕事場にお茶を運びつつ、葉山のほかの楽人への厳しい指導を自分のことのように受け止めている笙子。と、家の前でバイクのけたたましい音が響く。「追い払って来い」と言われ、笙子が玄関先に出ると、
 意外にもそこにトミーが立っていた。
 玉子「ほうら出てきたでしょう、どうもありがとう」
 若者「いやぁ」

 笙子を呼び出すため、玉子の知り合いの若者たちに協力してもらったらしい。

 トミー「笙子さん、少し痩せましたね」
 二人は近くの公園で話す。玉子も背後の滑り台で子供たちと遊んでいる。笙子は埒が明かないので「笙の会」に戻ろうかと言うが、トミーは「自分の指導ではどうしても甘くなるから、葉山に指導して貰った方がいい」と、反対する。

 ……だったら、トミーが心を鬼にして厳しく指導すればいいだけの話なのでは?
 油断すると、何時でも何処でもラブシーンを始め出す二人。と、滑り台の上に立っていた玉子が「あれー、ね哲也さん、あれ男谷先生じゃない?」と注意する。
  
 男谷は、近くの歩道を遠目にも分かりやすくよたよたと酔っ払いのように歩いていた。
 アップになると、無精ヒゲまで生やしていた。
 トミーは笙子を打ち捨てて、彼の元へ走る。
 遂には、ふらふらと車道に出て、車に体当たりしそうになる。
  
 だが、愛しのトミーが飛びつき、
  
 間一髪で助ける。
 男谷「哲也?」
 トミー「男谷、どうしたんだ?」
 それを見ていた笙子、「ひょっとして哲也さんが本当に好きなのは男谷先生……」と、直感……しません。
  
 熱く見詰め合う二人……じゃなくて、
 男谷「恭子さんが、覚醒剤を……」
 トミー「覚醒剤?」
 少し遅れてやってきた笙子と玉子もそう聞いて驚く。
 男谷「信じられんかもしれんが、本当だ。恭子さんは酒井に無理矢理忌まわしいクスリの味を覚えさせられたに違いないんだ」
 いかにも、書きましたと言う無精ヒゲだなぁ。

 笙子は酒井と聞いて、その男が今日、葉山家に挨拶に来ると話す。男谷は恭子さんの両親に覚醒剤のことを知らせようとするが、トミーが「衝撃が大き過ぎる」と、止める。笙子に対しても口止めする。
 だが、そんな彼らの背後に、買い物籠をぶら下げた葉山家の女中が立っていた。別に笙子の肩に立っているわけではない。
 最初は覚醒剤のことを知ったのかと思ったが、距離があったので、単に笙子とトミーが「逢引き」しているのを目撃しただけだったが、忠義づらしてすぐに歌子に御注進に及ぶ。

 歌子は笙子に、またトミーと会っていたら出て行ってもらうと厳しく言い渡す。
  
 予定通り、酒井が恭子さんと一緒に葉山家を訪れる。久しぶりに娘に会えて嬉しそうな歌子。
 酒井は、葉山夫妻に対し、自分がかつて少年刑務所にいたと率直に話すと同時に、幼い頃からの不幸な生い立ちを語り、単純な夫妻の同情を買う。

 話しの途中で笙子がお茶を運んでくるが、彼女はすぐ「芸術家肌」=「世間知らず」の夫妻が酒井にコロッと騙されていることに気付く。しかし、彼女には何もできない。
 最後に酒井が更生して貿易会社を興したと聞き、
 葉山「いやぁ良く素直に打ち明けてくださいました。立派であるより正直であれ、あなたは私の信条にピッタリの方だ」

 と、実に簡単に信用してしまう。
 歌子「じゃあ恭子は毎日楽しく働いているんですね」
  
 能天気な歌子の言葉に、一瞬、異議を唱えそうな顔になる恭子さんだったが、酒井に露骨に「ギロリング」されて、
 恭子「ええ、社長さんはとっても優しくして下さいますし……」
 と、作り笑いを浮かべて応じる。

 この時の酒井の顔を、葉山たちが見ていれば一発なんだけどね。
  
 笙子はその後、恭子さんと二人きりになって覚醒剤をやめるよう訴える。

 恭子「あたしも何度もやめようと思いました、でも……」
 笙子「恭子さんは意志の強い方です。やめようと思えばやめられないわけが……このままでは一生酒井の飼い殺しに」

 そんな簡単にドラッグがやめられたら世話はない。
 喫煙と言うニコチン中毒が意志だけでは容易に治せないのと同じである。
  
 しかし、すぐに酒井が嗅ぎ付けて入ってくる。この時、最初に舞楽のお面をつけているのだが、何の意味があったんだろ?

 酒井「お節介はよしな」 
 笙子「酒井さん、さっきの身の上話はデタラメね」
 酒井「ああ、日本人は涙に弱いからなぁ。俺のオヤジはまだピンピンしてるよ。コツコツ働くだけが取柄の小役人さ。コツコツ働いたところで、どうせ人間60でポンコツ、70でボケてコーコツ、80でガイコツだ。それなら若いうちにパッと悪の華を咲かせた方がマシさ」

 酒井のことを憎みつつ、二人とも「うまいこと言うわねぇ」と感心していた。

 酒井は逆に、笙子に「俺の片腕にならないか」と誘うが、笙子は無言で酒井の顔を引っ叩く。
 酒井は恭子さんを連れて行く。去り際、恭子さんは笙子に「男谷さんに伝えてください。あたしのことは諦めてください、と」と、言い残す。「男谷さんはタイプじゃない」ってはっきり言えばいいのに。

 酒井は更に、恭子さんの大学時代の友人にまでその魔手を伸ばそうと企んでいた。

 一方、モナリザが出所する日。トミーは愛する男谷のそばから離れられないと言うので、トミーの両親が湘南少年刑務所へ迎えに行くが、モナリザは既に出所した後だった。彼女を迎えに来たのはどうやら、おアキらしい。

 モナリザが残したと言う封書をいそいそと開く多代だが、中から出てきたのは、
 であった。

 パターンA
 多代「タノしい?」
 昌也「いくらなんでも無理があるぞ……」



 パターンB
 多代「なんて読むのこれ?」
 昌也「えーっと…………」

 どっちがいいですかねえ? え……、どっちも要らん? 分かりました。

 昌也「葉子はまだ私たちを許しては……」
 それにしても、二十歳を過ぎて、「怨」の一字はないだろう。もっと大人になろうよ。
 そのモナリザ、おアキと二人でぶらぶら歩いていたが、モナリザは気が抜けたように芝生に横たわる。

 おアキ「どうしちゃったのぉマコ?」
 朝男「ただの刑務所ボケさぁ」
 と、いきなり朝男が登場。神出鬼没にも程があるだろ。赤の他人の朝男が、モナリザの出所など知ってるわけがないしね。……じゃあ、なんでおアキは知ったのだろう?
  
 朝男「笙子が少年院を出たときには、盛大な迎えがあったぜ。元白百合組組長さんの迎えがヘドロ臭い潮風と決して美貌とはいえない女一匹だけじゃあ侘しすぎらぁ」

 おアキ「なっ、あたしは美貌だよ!」

 ひねくれた物言いだが、朝男は朝男でモナリザを気遣っているようだ。……しかし、笙子が退院した時は誰も迎えに来ていないのだが。ま、他のメンバーが後で歓迎会を開いてくれたけどね。
 だけど、そもそも、朝男はモナリザとはほとんど面識はなく、彼女が白百合組組長だなんてことも知らない筈だが……?

 朝男「出所はいわば船出だ。昨日に別れを告げて明日にてめえを叩き出すには出船の儀式がいるぜ。だからこうするのよ」
 何をするかと思いきや、
 紙テープを取り出し、
 海に向かって放るのだった。

 モナリザ&おアキ(まずい、本物のバカだ)
 朝男は、テープの片方をモナリザに持たせ、
 朝男「仕事が欲しけりゃ俺の後についてきな」
 と、そのまま引っ張るようにして歩き出す。

 朝男、あんたやっぱりサイコーだぜ。バカだけど。

 さて、男谷はトミー相手に昼まっから酒くらって荒れていた。彼は警察にも行ったそうだが、あてにならず、自分で酒井の行状を調べてみたと、トミーに資料を見せる。
 男谷「奴は昔と違って知能犯罪ぱかり十数件も重ねている。結婚詐欺、手形のパクリなどで告訴されてはいるんだが、奴は法律の抜け穴を利用して、いずれも証拠不十分で不起訴に持ち込んでいるんだ。葉山夫妻はすっかり酒井を信用して、俺の話には耳も傾けて下さらん」

 酒井の一見セレブ的な生活の様子が映し出される。
 男谷「生き証人と話してみてくれ、あの人だ」
 男谷の言葉に、トミーが振り向くと、ひとりでガンガン酒飲んでいる女客がいた。

 トミー「あの、おばさん……」
 女「あたし、24よ」

 トミー、めちゃくちゃ失礼なことを言ってしまい、切腹したくなる。
 そもそも、こんなところで、初対面の女性に「おばさん」なんて話しかける奴がいるだろうか? ……いるかもしれないけど。
 もっとも、その女性、顔を向けると目にクマが出来、いかにも疲れた感じであった。

 女「覚醒剤にやられて老けちゃってね……これでも3年前までは医者のお嬢さんだったのよ……電車の中で酒井に声をかけられたのが運の尽きね……恭子さんて人もいずれはこの姿よ」

 ちなみにこんなメイクをしているので分かりにくいが、演じているのは黒田福美さん。撮影時は28くらいか。
 しかし、どこでこんな人見付けて来たのだろう、男谷は?

 そんな女性の姿を見て、トミーも本腰を入れて恭子さんを助けようと申し出る。
 さて笙子、仕事中、道場(?)から聞こえてくる雅楽にあわせ、ひとり踊りの訓練をしていた。
 それをたまたま葉山が見るが、
 (大して稽古も見ていないはずだが……)
 と、彼女を見直す。なんか、先の展開が読めるなぁ。

 そこへ歌子が来て、トミーの訪問を知らせる。
 しかし、葉山はまだトミーを許さず、女中に門前払いをさせてしまう。
 男谷「どうすりゃいいんだよーっ」
 悩む男谷。

 しかし、葉山夫妻も一時は恭子と男谷を結婚させようとしていたくらい彼のことを信用しているのだから、酒井に関する彼の言葉を全然聞こうとしないと言うのも、ちょっと変な気もする。

 二人は笙子から葉山夫妻に書類を渡して貰おうと彼女の名を呼ぶ。笙子はすぐ応じて走り出すが、この前の歌子の言いつけを思い出して立ち止まってしまう。仕方なく、二人は書類だけ家に置いて辞去する。

 ここでまたあの女中が書類を捨てちゃったりするのかなぁと思ったが、そんなこともなく、あっさり書類は夫妻の目に入った様子。
 歌子は二人を呼び出して書類を見せて糾す。しかし、酒井は一行に動じず、トミーの(舞楽界を追放されたことへの)逆恨みだろうと片付ける。歌子もあっさりそれを受け入れるが、その後、口実を設けて恭子さんと二人きりになるチャンスを得る。
 ……と思ったけど、普通に服の試着とかさせているので、口実と言うわけではなかったようだ。てっきり、母親の直感で、恭子さんが何か悩んでいることを知り、酒井を遠ざけて二人だけで話したかったのかと思ったが……。
 だが、あれこれ試着しているうちに袖の短い服を着た恭子さんの注射の跡が露出し、それを歌子が見てしまう。

 恭子さんは「夏風邪の注射」と苦しい言い訳をするが、
  
 歌子は素早く恭子さんのハンドバッグを開け、お泊りの時も安心の、注射器セットを見付ける。

 恭子さん、抑えていた激情が堰を切ったように溢れ出し、母親に縋り付いて嗚咽する。
 歌子「ねえ、どういうことなの! 訳を話して頂戴」
 こうして、やっと恭子さんの抱えていた問題を知るところとなる。
 こうなると母は強しで、毅然として酒井に告げる。
 歌子「連れて帰りますわ。訳はお話しするまでもないでしょう!」 
 だが、酒井の部下が荒っぽい言葉で二人を脅しつけ、その後、酒井は「週刊誌の編集長の知り合いがいる」と言い、恭子さんのことが明るみになればスキャンダル必至だと、葉山家の痛いところを突く。歌子「いてーっ」
 葉山「なにぃそれで逆に金を脅し取られて帰ってきたと言うのか」
 歌子「酒井さんはまるで見かけとは違う怖ぁい人で」

 不甲斐なくも、恭子さんを奪われるだけでなく、口止め料まで巻き上げられた模様。
 歌子は警察に電話しようとするが、彼女以上に世間体を気にする葉山は押しとどめる。
 葉山「公になれば、私は総務府に辞表を提出しなければならん。そうなれば葉山家が伝えてきた舞楽の伝統は終わりだ」

 さらに葉山は「あれのことは諦めなさい」と、親とは思えぬ台詞を吐く。
 さすがに母親の歌子は取り乱し、静夫パパにしばかれる。騒ぎを聞いて笙子が飛んでくる。
 溺れる者は……で、歌子は笙子に裏の世界の顔役に知り合いはいないか、などと突拍子もないことを訊ねる。
 しかし、モナリザと違い、覚醒剤方面には全く疎い笙子は彼女の力になってやることは出来なかった。

 酒井は恭子さんを伴ってある建物に入って行く。
 なんか自分まで覚醒剤中毒っぽい顔になってしまった男谷、茂みの中から現れて二人に近付こうとするが、見張っていた酒井の部下にボコボコにされてしまう。

 二人がやってきたのは、「橘女子大国文科」の同窓会会場であった。
 ……しかし、恭子さん、国文科卒業なのに、何で保母の資格を取っていたのだろう?
 二人が会場へ入るとすぐ、初対面なのにさも旧友のような顔で(当たり前だ)彼女の友人が群がってくる。
 いかにも、恭子さんの引き立て役と言う三人組。実際、彼女たちは恭子さんのことを「ヒロイン」と呼んでいるから、恭子さんは大学時代から女王的存在だったのだろう。

 彼女の浮かない顔を見て「気分でも悪いの?」と訊ねる。
 恭子「ううん、ヨッチンしばらくぅ」
 努めて明るい顔で応じる。右端の女性が、ヨッチンと言うらしい。

 酒井は早速、巧みな話術でその場にいる上流階級(と言うほどでもないが、一流企業の人たち)に取り入って行く。
  
 発足したばかりなのに、開店休業中の「笙の会」、玉子がちょっと男性の目に嬉しい格好で、床を掃除していると、男谷がふらふらと入ってきて、そのままぶっ倒れてしまう。

 玉子「きゃあっ」
 トミー「おい、男谷、どうしたんだ……」
 男谷、ピョコンと起き直り、尻を突き出してトミーに土下座して頼む。
 男谷「哲也、もう恭子さんを救えるのはお前しかいない! あの人を恐ろしいクスリの力から引き戻せるのはお前の愛情しかないんだ!」
 男谷「笙子さんと別れてくれ。そうすれば、恭子さんは酒井などから離れて戻ってくる……頼む、哲也、一生の頼みだ!」

 最早、そう言う問題じゃないと思うんだけどね……。
 トミーもさすがに「笙子さんだけは裏切れん」と、断る。
  
 男谷「出来ないと言うのか……もう頼まん」
 よろよろと出て行こうとするが、トミーは引き止め、その懐からナイフを見付け出す。

 トミー「これで酒井を殺す気なのか」
 男谷「はぁはぁ、酒井に対抗するにはこれしか手段がないんだ」
 トミー「バカなことをするな、何を考えているんだ」
 激しく揉み合う二人。
 「笙の会」にとっては、迷惑行為以外の何物でもなかったので、玉子がモップの柄で男谷の後頭部を連打する。
 寝不足と心痛ですっかりヘロヘロになっていた男谷は、あっさり気を失う。
 笙子は笙子で、葉山に対し、一緒に恭子さんを説得しに行って欲しいと懇願するが、
 葉山「言った筈だ。葉山家を守るためには覚醒剤の味など覚えた娘と関わる訳にはいかん。私は稽古がある、行きなさい」

 しかし、一人娘の恭子さんがいなくなったら、跡継ぎとかどうするのかね?
 葉山の態度にさすがに笙子が怒りの表情を見せる。そして、BGMの雅楽を再生していたラジカセを止めてしまう。

 葉山「何をするんだ!」
 笙子「あたし、父のことを思い出したんです。父はあたしがここに勤めに来ただけで心配しておろおろしています。でも子供のためならなりふりなど構っていられない。たとえだらしがないと言われても、どんなことでもする。それが親だって思うんです。先生も本当は恭子さんが可愛い筈です。なのに恭子さんを見捨てると……立派であるより正直であれ。そういつも仰っているお言葉を先生は自分で裏切っておられます」
 笙子の鋭いツッコミ。しかし、葉山も負けていない。

 葉山「君は舞楽の、芸の厳しさを知らんのだ。何かを犠牲にしないで芸の道を極めた芸術家はおらん」
 と、強弁する。
 笙子「こんなところ辞めさせて頂きます」
 葉山「なにぃ」
 笙子「実の娘さんさえ犠牲にする、舞楽ってそんなものなら、先生に習う気もなくなりました。恭子さんはあたしひとりでもきっと……」
 決意を秘めて立ち上がる笙子。
  
 トミー、同窓会の開かれているホテルの中を歩いている。少し遅れて、黒田福美さんが酒のボトルを持ってだらしない感じでついてくる。乱れた髪が色っぽい。
 ちなみに黒田さん、翌年の「電撃戦隊チェンジマン」では、女王アハメスと言う悪役を凛々しく演じられている。
 ロビーで座り込んでしまう黒田さん。トミーに勝手について回っているのだろう、見兼ねてトミーが助け起こす。
 フロント「あの、ちょっとそこのお客様」
 黒田「はーい、あー、こんにちはぁー」
 見知らぬ宿泊客に陽気に手を振る黒田さん。
 トミー「いいから……」
 トミーが会場へ来ると、恭子さんはすぐ気付いて驚く。
 酒井がすかさずトミーに近付き、
 酒井「あなたにはまだ御挨拶していませんでしたね。ロイヤル貿易の酒井です」
 と、丁寧な物腰で話しかけ、名刺を差し出す。

 トミー、受け取った名刺を破り捨てる。かっこいい。
 酒井「何をするんです」
 トミー「失礼、ほんの冗談です。代わりに僕の名刺も破いて下さい」
 と、自分の名刺を突き出す。

 どんな喧嘩の売り方やねん。

 しかし、無職のトミー、どんな名刺かと思ったら、
 いつの間にかこんなかっこいい名刺まで刷っていた。
 しかも、「笙の会」主宰だと。

 酒井はそれを見て「あなたが久樹さん」と、白けたような顔になっていたので、この時初めて相手が誰か気付いたようだ。

 トミー「酒井さんの会社はどんなものを扱ってらっしゃるんですか」
 酒井「主にアクセサリーです。ブローチとかスカーフとか帽子とか」
 黒田「覚醒剤も扱ってるよ!」
  
 背後から大きな声が飛ぶ。振り向くと、黒田さんが涼しげな目付きで立っていた。いやぁ、やっぱり綺麗だなっと。

 会場の視線が彼らに集まる。
 黒田「酒井さん、しばらくねえ」
 酒井「どなたでしたかなぁ」
 黒田「あんまり色んな女を愛し過ぎると誰が誰だか分からなくなるのは無理もないけど……あなたのハツヨよ」
 酒井「何のことだか」
 黒田「お惚け上手も昔のまんまねえ」

 「ハツヨ」と言うのは彼女の名前だと思うが……初代と書くのかなぁ。
 そう言われて酒井は初めて思い出したような顔だったから、昔と随分変わっていたのだろう。
  
 黒田「この男は女性には優しいし、ユーモアはあるし、会社の社長さんだし、どこからどう見たって立派な紳士です。だけど、それは見せ掛けだけー、皆さんはお金持ちだけど、それなりにイライラがおありでしょう。この男はそれにつけ込んで、さりげなく覚醒剤を勧めます。そりゃあ、気分がスッキリしますよぉ……一回だけなら大丈夫。試しにやってみませんか。ふふふふ。だけど一回やったら、もーおしまい。財産をみんな吸い上げられて、あたしのようになってしまいますよ!」
 黒田「だから、絶対信用してはダメ!」

 会場全体に語りかけるように話す黒田さん。この、場の空気を支配してしまうような演技はさすがである。

 酒井はここでやっと「デタラメもいい加減にしたまえ。何をしているんだ、この女は頭がどうかしているんだ。早くつまみ出したまえ」と、その場にいたホテルマンたちに命じる。
 しかし、彼女は彼らの手を振り解き、
 黒田「酒井さん、あんたへの恨みはね、○○○○したってまだ足りないよ! あんたのせいで父さんも母さんも首吊って死んだんだ。そのお金で会社なんか作りやがって! ちくしょう、殺してやるぅ」

 この、「〜したって」と言う台詞、早口でちょっと分からない。「三日三晩寝ないで喋ったって」と言うような意味じゃないかと思うが。
 なおも叫び抵抗しながら、彼女は部屋の外へ連れて行かれるが、
 トミー「皆さん、彼女の言ったことは本当です。この酒井と言う人は、今日も恭子さんを利用して、皆さんに近付くきっかけを掴むためにここに来たんです。だから僕は恭子さんを迎えに来ました」

 黒田さんの尻馬に乗って、酒井を糾弾するトミー。

 酒井「はっはっはっはっ」
 トミー「何がおかしい」
 酒井「皆さん、この久樹哲也と言う男は恭子さんと正式に婚約までしておきながら、恭子さんを捨てて他の女を愛した男だと聞いています。違うなら違うといってみたまえ」
 バカ正直なので、口ごもってしまうトミー。

 酒井「彼は未だに恭子さんに未練があるらしく、ここに嫌がらせに来たんです。皆さんどちらを信用しますか」
 酒井の言葉に、列席者達がぞろぞろと酒井の背後に移動する。小学生じゃないんだから、実際に動くなよ。

 トミーも、ホテルマンに連れて行かれる。
 トミーの薄っぺらな言葉はともかく、黒田さんの言葉には真剣味が感じられると思うのだが、その場にいるセレブたちはみんなバカなのか、それだけであっさり酒井を信用してしまう。

 酒井も恭子さんを連れて早々に退散する。
  
 車に乗ろうとしていた彼らの前にトミーが現れる。
 トミー「恭子さん、そんな奴と一緒にいたら破滅するだけです。さあ帰るんです」
 トミーのラブラブパワーはさすがに男谷とは違い、思わず恭子さんがトミーの元へ駆け寄ってしまうほどだったが、

 酒井「待ちなさい、クスリが切れたらまた死ぬほど苦しみますよ」

 何度か禁断症状を味わっているのだろう、その時のことを思い出して立ち竦むが、
 トミー「何をしてるんです。勇気を出しなさい」
 恭子「哲也さーん」
 トミーの胸に飛び込むのだった。

 トミーの愛の力、まさに無限大!

 しかし、男谷が見てたら、悔しさのあまり発狂しそうだな。
 代わりに、ちょうどそこへ笙子がやってきて、二人が抱き合っているのを見てしまう。

 ナレ「その時笙子の胸には嫉妬の感情はなかった。たとえ自分の恋が実らなくとも、恭子を助けたい。その真心だけがあった」
  
 勿論、酒井たちがそのまま二人を行かせるわけがない。部下(鬼父)がナイフを取り出し、二人の前に立ちはだかる。

 この辺から「NEVER」がスタート。
  
 ここはやはり、専門家の笙子の出番である。酒井がスパナのようなものでトミーを殴ろうとしたのを、横から押しのける。
 長いスカートを履いているので、ややはしたない格好になってしまうが、酒井を投げ飛ばす。
 トミー「笙子さん!」
 なんか面白い顔になって驚くトミー。

 恭子「笙子さん……」
 酒井「笙子、私を敵に回す気か、もう一度考え直せっ」
 笙子「考え過ぎると大抵は間違えるからね。敵とは戦う、ぶちのめす! あたしのやり方はそれだけさ!」
 ほんとに少年院から出して良かったんやろか、と悩む章。

 ま、ここでは敢えて乱暴な言い方で、酒井を威圧しようとしていたのだろうが。

 トミーは、笙子に、恭子さんを連れて逃げろと指示する。指示に従い、その場から逃げ出す二人。
 トミーは結構強く、酒井の部下と互角以上の戦いを演じる。
 酒井はしつこく、ひとり車を飛ばして二人を追跡する。
  
 と、向こう側に横一列に並ぶ人影が見えた。それぞれ武器を持っているようだ。

 ナレ「笙子と恭子の前に立ち塞がる男たちは敵、それとも味方、神ならぬ身の笙子は知る由もなかった」

 前後から挟まれた形の二人の顔を映しつつ、「つづく」のだが、これはなかなか興味をそそられる終わり方だ。

 ……ま、原作の原笙子さんは、例によって怒り狂っていたかもしれないが。



 

  第23話「ロンリー・カンバック」(1984年9月18日放送)

 前回のナレーションでは、「敵か味方か」などと思わせぶりの言い方だったが、待ち伏せていたのはやはり敵だった。
  
 引き返そうとする二人を問答無用で襲ってくる酒井の手下たち。

 恭子さんはきゃあきゃあ逃げ回るだけだが、さすが笙子は相手の武器を奪い、バシバシと叩きながら恭子さんに逃げるよう促す。ここはしかし、棒で叩く音がいかにも軽い……実際に撮影現場で鳴り響いているような軽さである。
  
 だが、恭子さんは後ろから来た酒井につかまり、車で連れ去られてしまう。そちらに気を取られている笙子を男たちがボコボコにする。なお、笙子が転んだ時、膝に白いサポーターのようなものが見える。ここは伊藤さん本人が演じているので、ケガ防止のために付けていたのだろう。不自然に長いスカートだったのも、これを隠すためだったのかもしれない。
 大人気ない男たち。そこへ「お待ち!」と声が飛び、二つの影がこちらへ走ってくる。
 シルエットのまま、二人は笙子を助けて男たちと激しく戦う。

 それでも、一人がモナリザで、一人がおアキだと言うことはすぐ分かる。
 モナリザは、かつての「カミソリマコ」を髣髴とさせる二枚刃で男たちの顔を切り裂き、
  
 赤い薔薇の花束を投げて、男の顔に直撃させると言う技を披露する。

 ひょっとしてこれが「セーラー服反逆同盟」のミホのバラ投げの元ネタだったらヤだなぁ。

 大人気ない上によわっちい方たち、女二人に翻弄されて早々に逃げ出す。
 彼らの姿が完全に消えてから、現れるトミー。
 まさか、危険が去るまで隠れてたんじゃあるまいな?
 ここで二人の顔がはっきり見えるが、トミーの出現に慌ててたように彼らも反対側へ走り去る。
 笙子「哲也さん、済みませんでした。恭子さん、酒井に奪われました」
 トミー「今の二人は?」
 笙子「葉子さんにおアキママです。あたしを助けてくれました」
 トミー「葉子におアキママが……」
 その二人は花屋のようなところへ駆け込み、急いでシャッターを下ろす。
 おアキ「あれは確かに笙子ちゃんだったよ。あたしたちが偶然通りかからなかったら……」

 恐ろしいことに、二人が現れたのは全くの偶然だった。
 (……と言うことは、モナリザはいつもカミソリを持ち歩いているのか?)
 多少、事情を知っていると思われる朝男が助けに来たのならまだ分かるんだけどね。

 モナリザ「笙子の奴、哲也兄さんと民間舞楽を始めたと聞いてたから今頃幸せにやってると思ったのに……」
 会話しながら奥に進むと、なんと、ちゃっかり朝男が座っているのではないか。マジでびびったわ。
 しかし、よくあることなのか、二人はちっとも驚かない。と言うより、そもそもここは朝男の所有している店舗のようだ。
 おアキ「朝男、来てたのかい」
 朝男「笙子は舞楽を学ぶために今、葉山家に住み込んでいる。恐らく恭子さんを酒井から救うために危ない橋を渡っていたんだろう」
 ……なんで、ここにいながらさっきのシーンを見てきたような台詞が吐けるのだろう?

 モナリザ「酒井?」
 朝男「少刑に8年いた根っからの性悪だ。今夜はそいつのことをあんた達に伝えようと思ってやってきた」
 おアキが朝男の飲み過ぎを注意するが、

 朝男「ビル経営も順調だ。高級麻雀荘経営も、進学塾も軌道に乗り、金はジャンジャン入ってくる。今の俺には何でも思いのままだ。最高に乗ってていい筈じゃねえか。それなのに心が虚しんだ

 やかましい、贅沢言うな!

 いくらドラマとは言え、つい最近まで警察相手に暴れていた若造が、こんなに簡単に成功しちゃっていいの?
 ま、朝男には、資金を出してくれる頼もしいパパがいるからね。

 朝男「哲也さんの本物の優しさに触れて、一度は笙子を諦めようと決意した俺だ……それなのに、笙子の名前を聞くだけで血が騒ぐ。笙子が危ない目に遭ってると聞くと居ても立ってもいられねえ。ちくしょう、俺って奴は根っからの不良だぜ」

 モナリザはだったらトミーから奪えばいいじゃないかと言うが、

 朝男「バカヤロウ、悲しいこと言うんじゃねえよ。自分の好きな人間の不幸を願うなんざ最低だぜ!」
 いちいちエッジの利いた台詞を放つ朝男。
 (だったら、最初から笙子がどうとか言うな)と思うモナリザであった。
 酒井たちの手に再び落ちた恭子さん、
 「あたしを殺して! もう生きていたってしょうがない」と、絶望する。
 だが、即座に酒井にぶん殴られ、さらに例の鬼母がしゃしゃり出てきて、

 「お前に死なれちゃあたしが困るんだよ。あたしの子供殺しといてなんだい。一生かかっても償いしろぉ!」
 と、恭子さんの髪の毛を掴んで突き飛ばす。

 それでも恭子さんは「殺してくれ」と叫ぶ。だが、酒井は「あんただけを殺しゃしない。あんたの親も皆殺しにしてやる」と究極の脅しを掛ける。
 さらに、トミーまで殺すと言い出し、その流れで結婚を申し込む酒井。恭子さんは仕方なく「はい」と答える。

 酒井「ありがとう恭子さん、私もあなたを大切にします」
 白々しい言葉を口にする酒井。しかし、こんな状況でもまだ恭子さんにエッチなことを一切していないと言うのは、やはり不自然だ。ま、お嬢様育ちの恭子さんを手篭めにしてしまったら、自殺されてしまうかもしれないと用心していたのかもしれない。
 一方、笙子とトミーは葉山家を訪れ、恭子のことを報告していた。そこへ男谷も顔を見せる。
 男谷「恭子さんを救えるのは哲也しかいません。明日にでも酒井の会社に哲也と一緒に行って下さい」
 葉山「何をバカな、恭子を捨てた男に今更そんなこと頼めるか!」
 男谷「酒井は恭子さんを殺すかもしれません。そうなってもいいんですか?」
 葉山「……」
 歌子「あなた!」

 男谷は視線を転じ、
 「哲也、笙子さんのいる前でこんなことを言うのはどんなにむごいことか承知で敢えて言う。恭子さんに会って、結婚すると言ってくれ。恭子さんを救えるのはお前だけだ!」

 トミー「男谷……!」
 さすがにトミーにも簡単に応じることの出来ない要求だった。
 男谷の言葉に、つらそうな顔になる笙子。

 同時に(あの女さえ地球上から消滅してくれれば!)と考えるのだった……と言うのは(たぶん)嘘である。

 歌子もトミーに頼むが、トミーは無言のまま。

 葉山「哲也君!」
 トミー「はい……なんでしょう?」
 葉山も、思わずトミーに恭子さんを救って欲しいと言いかけるが、結局、娘より舞楽が大事だと宣言し、ついでにここでやっと笙子の弟子入りを認め、稽古場へ連れて行く。戸惑いながら、とりあえず従う笙子。

 ここでOP。
 早速、稽古をしている笙子。
 ぞろぞろとトミーたちもやってきて、その様子を見物している。
 厳しい指導の後、「そんな舞では十年やっても一人前になるのは無理だ。やめてしまえ!」ときついことを言われ、思わず泣きそうになる笙子。可愛い。

 それでも指導してくれと嘆願する笙子は、
 笙子「でも先生、舞楽の心はたおやかな心と教わりました。たおやかな心とは、人、自然を愛する心で満ち溢れることではないでしょうか」
 葉山「君は私に舞楽の教えを垂れるつもりか」
 笙子「いいえ、そんなつもりは毛頭ございません」(←ほんとは毛頭ある)
 笙子「ただ私には先生が恭子さんをご自分の娘であるために、ことさら厳しくしているように思えるんです。恭子さんを見捨てることが、舞楽の心にかなうとは思えません!」
 葉山「なにっ」
 笙子「失礼ですが、先生の今の舞には、恭子さんに対する思いが溢れていたと思います。先生、恭子さんをお救い下さい。先生だってそう願ってるじゃありませんか!」
 笙子の言葉に、そばで聞いていた歌子も、期待するような眼差しを夫に注ぐ。
 歌子「あなた……」
 葉山「明日、酒井の会社へ行って、恭子を連れ戻す」

 遂に折れた葉山は、それだけ言ってさっさと稽古場を後にする。
 稽古場に残ったトミーと笙子。トミーは「笙子さん」と言いかけるが、辛そうな表情になり、そのまま出て行く。笙子はトミーが恭子さんのために自分から離れるのではないかと言う予感に涙ぐむ。

 しかし、最終回間際になって、漸く舞楽ドラマらしくなってきたなぁ。と言っても、あくまでメインは恭子さん奪還作戦なのであるが。
  
 朝男、高級クラブで酒井と話している。

 朝男「あんた、恭子さんをどうするつもりだ」
 酒井「恭子さんのような上流階級のお嬢様は私の憧れでしてね。結婚したいと思ってるんですよ」

 酒井ははべっていた女性を下がらせると、
 酒井「お互い過去のことを知ってる間柄だ。気取るのは止めて本音に話しませんか?」
 朝男「俺の方もそう願いたいと思っていたところだ」
 酒井「どうだい、手を組まないか? 元東京流星会会長西村くん、それに私が組めば何でもできる」
 朝男「手を組んでどうする?」
 酒井「一流の人間になるんだよ! 俺は少刑にいた8年間、ずっと考えていた。必ず一流の男にのし上がって、俺を馬鹿にした奴を見返してやるってな……金があれば、世間の奴らも俺達の前にひれ伏すさ。俺達のような人間が金を得るには多少の危険は覚悟しなきゃならない」
 朝男「酒井、お前さんには死の臭いがする」
 酒井「俺とは気が合わないって訳だな」
 朝男「ああ、合わないなぁ。酒井、これだけは言っとく。俺はお前がどんな男でも恐れやしない。いいか、曽我笙子にだけは手を出すな……お前が笙子に手を出したら、俺はカンバックすることになるぜ」
 それだけ言い捨てて、席を立つ朝男。

 こんな時でも、擦れ違ったバニーガールのおっぱいが気になるお年頃であった。
 店の前で、朝男を待っていたのは懐かしい、元幹部の山崎(久保寺健之)だった。
 朝男「山崎ぃ、鑑別所を出てすぐ悪いがな、早速仕事をしてもらうぜ。酒井のアジトを突き止めろ」

 山崎、曖昧に頷くが、何故か台詞がない。
 朝男はそのまま別の方へ歩き出すので、山崎の運転でここまで来た訳でもなさそうだ。
 どっちにしろ、山崎は鑑別所に入れられたが、少年院行きは免れ、割と早く出てこられたのだろう。で、朝男を頼って昔のようにその部下におさまったと言うところか。

 翌朝、約束どおり葉山は男谷の運転する車で酒井のところへ向かう。
 笙子は少し暇を貰い、トミーの母親に、モナリザと会った場所を案内する。
 三人は、モナリザの走っていった方へ彼女を探しに行く。

 葉山夫妻と男谷は、酒井のオフィスにズカズカ入っていくが、社員がいるだけで社長も恭子もいない。三人はとりあえず座って待つことにする。
 で、笙子たちは実にあっさりと二人を発見する。笙子が推測したように、二人で店を、生花店をやっていた。
 おアキはすぐ、笙子一人を店の奥に引っ張って行く。事情を説明すると同時に、モナリザたちに家族だけで話し合いをさせてやろうと言う配慮だろう。
 おアキ「何も知らせないでゴメンね……マコの心の傷が治るまでせめてあたしだけでもそばにいてあげようと思ってさ」

 おアキによれば、ここは元々朝男が雀荘を開く予定だったところを貸して貰っているのだと言う。
  
 おアキは花の配達があると言って出て行く。

 トミー「元気そうじゃないか」
 モナリザ「はい」
 多代「仮釈放の知らせが届いた時はどんなに嬉しかったか……毎日が待遠しくて……取るものも取りあえず駆けつけたのよ」
 モナリザ「分かっていました」
 多代「だったらぁ、どうして私たちを待っててくれなかったの? お父様はショックで寝込んでしまったのよ
 モナリザ「お会いしたくなかったからです。哲也兄さんにもお父様やお母様にもあたしはもう二度と会わないって決めたの」

 モナリザは今までとは違い、あくまで丁寧に応対するが、態度はよそよそしい。
 多代「葉子さん、あなたはまだ私たちを許してくれてはいないのね。私たちを憎んでいるのね?」
 モナリザ「私はもうあなたたちを憎んでも恨んでもいません」
 多代「だったらどうして?」
 モナリザ「いつか哲也兄さんが母の悲しみを自らの悲しみとして他人の悲しみの分かる女になってくれと言いました。笙子は、憎しみを光に溶かせと……
 笙子(あたしそんなこと言ったっけ?)
 物覚えが悪い笙子であった。
 モナリザ「でも、あたしはそんな立派な女にはなれない。だからせめてあたしが母の悲しみを秘めて、これからも長沢真琴として生きよう。母の生きられなかった分を、あたしが長沢真琴として生きようって決めたんです」

 多代(何が言いたいのか良く分からなかったが)「葉子さん、せめて一言私たちを許すと言って! あなたのその言葉を聞かない限り、私たちの心は晴れないの!」

 多代の懸命の訴えに、
 モナリザ「はいはい、じゃ、許しちゃいまぁ〜す! これでいい?」

 バカにした態度で答えるモナリザ。直後、三人から思いっきり後頭部をどつかれる。

 ……ことはなく、

 モナリザ「許すも許さないもないわ。あたしはあなたたちとは関係ない人間なんです。関係ない人間として生きようって決めたんです。ここにいるあたしはあなた方とは何の関係もない他人なんです」
 多代「葉子ぉ、そんなことどうでもいいから、早く許すって言いなさいよ!」

 何が何でも「許す」と言わせないと、昌也に家に入れてもらえない様子の多代。

 ほんとは「葉子ぉ、むごいこと言わないで! 関係ない人間なんていわれるくらいなら、まだ憎んでるって言われた方がマシだわ!」でした。

 いちいち茶化してしまったが、ここは多代さんの熱演もあって、全編通しても印象的なシーンとなっています。
 多代の涙を見ても、モナリザは心を動かさない。

 横にいた笙子も、他人の家庭内の問題なので、何も言えず黙っている。
 葉山たちはだいぶ待たされていたが、酒井が自動車電話をオフィスにかけてくる。助手席には無論、恭子さん。
 酒井「お父様ですか? 私のほうでも是非お会いしたいと思っていたんですよ。これから三丁目のマコトと言う花の店に立ち寄ってすぐそちらに伺いますので……恭子さんに花をプレゼントしようと思いましてね」

 マコト……って、まさか?
 さて、多代が注文したのか、モナリザ、花束を「ありがとうございました」と、にこやかな笑顔を浮かべて多代に渡す。その他人行儀の態度に、また胸が塞がる多代。
 トミー「葉子、君は僕の妹だ。関係ない人間なんかじゃない。僕は君の心がかぐわしい花の香りで一杯になるまで毎日ここに花を買いに来るよ」
 モナリザ「哲也さん、あたしのことより、恭子さんから手を引くことを考えな」
 トミー「どういうことだい?」
 モナリザ「酒井はあんたなんかの手に負える男じゃないってことさ……」
 などと話していると、
 彼らの背後にその酒井と恭子さんの乗った車が止まると言う奇跡が起こる。

 これまで数々の「偶然」には目をつぶってきたが、さすがにこれは……。もっとも、酒井はモナリザがそこにいることを知って、わざわざ立ち寄ったらしいのだが。

 モナリザ「あんたは舞楽にだけ専念してればいいんだ。噂をすれば影だよ」
 酒井ひとり車から降りて、店に入って行く。恭子さんの姿を見たトミーは、ドアを開けてくれるよう呼びかけるが、恭子さんは閉じこもったまま出ようとしない。
 酒井は意味ありげに白い百合を指差し、
 酒井「これを貰いますよ」
 モナリザ「はい」
 酒井「これを機会にお付き合い願いたいですね」
 モナリザ「あの方はどうなさるの?」
 モナリザは、恭子さんとトミーの方を見ながら訊ねる。
 酒井「結婚するんですが、あまり長くは持たんでしょう。なんせ覚醒剤中毒ですから」
 モナリザ「悪党なのね」
 酒井「ふふふふ、あんただからこんなことが言えるんだよ」
 モナリザ「ふふ」
 酒井「ところでいくら?」

 モナリザ「はい、18万円になりまーす!」
 酒井「じゅ、じゅうはちまん?」

 そう、ここは世にも恐ろしいぼったくり花屋だったのだ!!

 ま、実際は、お金のやりとりは描かれていない。モナリザのことだから、金は要らないよとか言ってそう。

 酒井は恭子さんに呼びかけるトミーを無視して車に戻り、さっさと走り去って行く。
 オフィスに戻ってきた二人、葉山はすぐに恭子さんを連れて帰ろうとするが、
 恭子「お父様、手をお放しください。あたしは家には戻りません」

 娘の言い草に、葉山、思わず一子相伝の葉山家流の奥義を炸裂させる。
 葉山「ほあたーっ!」

 ほんとは、「ばかーっ」と言って平手打ちするだけです。

 酒井はあくまで冷静に葉山に話しかける。彼は、恭子さんが覚醒剤に手を染めたのは、子供を死なせた痛手から、彼女自身が始めたことだと言い、自分はむしろ彼女を中毒から救おうとしているのだと、ぬけぬけと主張する。

 酒井「私がどうして妻にする女に覚醒剤を打ったりするんですか」
 葉山「妻にする女? どういうことだ」
 酒井「私は恭子さんと結婚します」
 葉山「ばかなっ」

 さすがに血相を変える葉山。
 そんなことは認めないと怒号するが、
 恭子「お父様のお許しなど必要ありません!」
 葉山「なんだと」
 恭子「二言目には葉山家の家門、格式、そんなもの今のあたしにはどうでもいいのよ! そんなもののために、今まであたしがどんな辛い思いをしたと思っているの? 家門なんて泥にまみれればいいのよ! 勘当すると言うのなら、いつでもあたしを勘当しなさいよ。娘などいなくても、あなた方には家門があるからいいでしょう? 私はもうあなた方とは関係ない人間なの」

 いつになく両親を激しく罵倒する恭子さん。無論これは、両親に諦めさせて彼らに害が及ぶのを防ごうと言う芝居なのだが、その言葉に幾分かの本音が混じっていたのではないだろうか。

 考えたら、恭子さんも一応舞楽のたしなみがあるんだよね。1話で舞っていたのを除けば、稽古などのシーンは一切なかったが。
  
 娘に罵られ、ショックを受けるふたり。酒井にあんな風に脅されているとは知らないので、芝居だとは気付かない。

 葉山「恭子……」
 恭子「あたしを勘当しないと、舞楽を捨てることになるのよ、それでもよろしいの?」
 歌子「恭子!」
 葉山「ようし、よく分かった。お前は今日限り勘当だ! お前が死のうが生きようが一切関知しない!」

 葉山たちが出て行った後、泣き崩れる恭子さん。

 で、一気にドラマの中で一ヶ月が経ってしまう。はやっ。
 葉山はああ言ったものの、さすがに恭子さんのことを忘れかねていた。

 笙子はあれからずっと葉山に指導してもらっていた。
 舞いながら、涙を流す葉山。
  
 この時、葉山は、かつて恭子さんと一緒に舞っていたことを思い出していたのだ。

 1話以来の恭子さんの舞姿。やっぱり岡田奈々さんがやると絵になります。……別に伊藤さんでは絵にならないと言うことではありません。

 なんかようやく舞楽ドラマっぽくなってきたなぁ。次で終わりだけど。
  
 舞の最中、思わず崩れ落ちてしまう葉山。

 笙子「先生は恭子さんを愛していらっしゃるのに」
 葉山「娘を愛さぬ親などあるものか。娘の不幸を願う親などあるものか」
 笙子「だったらどうして……」
 葉山「私は舞楽を守らなくてはならんのだ……」
 稽古場を見ていた歌子も、夫の言葉に涙ぐみながらしゃがみこむ。

 葉山は居住まいを正し、
 葉山「見苦しいところを見せて済まなかった。笙子君、君は今すぐ『笙の会』に戻りなさい」
 笙子「先生、あたしはまだ……今月分のお給料貰ってません!
 葉山「これから先、哲也君と稽古に励めば、君は一人前の舞人になれる! 私が君を葉山家に入れたのは、舞楽を愛する君の情熱と、その多いなる素質に感ずるものがあったからだ。君はよく精進した、進境も著しい……」

 急に笙子のことを誉め出す葉山。
 さっきは「十年やっても一人前になれない」とか言っていたくせに……。

 葉山「正直言って、これ以上君の顔を見るのはつらいのだ。行きたまえ」
 葉山は率直に述べる。笙子にも、葉山が自分を見て恭子さんのことを思い出していることは分かっていたので、それ以上は何も言わず、「ありがとうございました」と深々と一礼して、稽古場を後にする。嗚咽する歌子を痛ましげに見ながら。
 私服になって笙子が門から出てくると、すぐに車が横付けになり、朝男が出てくる。
 朝男「笙子、乗れ!」

 お前は予知能力があるんか?
 なんでこのタイミングで笙子が出てくるって分かるんだよ。

 ずーっと門の前で張り込みをしていたと言うのも無理があるし。

 朝男「恭子さんの隠れ家に案内するぜ」
 笙子「朝男がどうして?」
 朝男「俺はずーっと笙子を見守っていたよ」
 と言ってはいるんだけどね。

 考えたら、二人が会うのは久しぶりだったな。
 笙子「朝男、葉子さんの花の店も朝男が力になってくれたんですってね。進学塾も麻雀荘もみんなうまくいってるんですってね」
 穏やかな表情で眩しそうに朝男を見る笙子。
 ひょっとして、「やっぱ朝男にしとけば良かったかな」などとさもしいことを考えてたりして。

 朝男に引き換え、トミーは……だもんね。
 朝男はとにかく笙子を車に乗せ、山崎の運転で出発する。
 その恭子さん、酒井にあてがわれたマンションに軟禁状態にあったが、見張りの鬼母が外出した後、ふとガスコンロを見て、ふらふらとそれに近付き、スイッチをひねってガスを放出させる。ガス自殺をしようとしているのだ。
  
 程なく鬼母が戻ってくるが、ちょうど駆けつけた朝男たちとバッタリ顔を合わせる。
 鬼母は、朝男の顔を知っていたようで、すぐに逃げようとするが、朝男はすかさず持っていた凶器で殴り殺す。
 ……実際は殴って気絶させるだけだが、ひとおもいにあの世へ送ってやればいいのだ。

 朝男は鬼母が持っていた鍵を奪う。
 ガスが充満してきて恭子さんは苦しそうに喉に手をやっていたが、ちょうどそこへ朝男たちが部屋に入ってくる。
 ガスの臭いに手で顔を覆う。
 朝男「何をしてるんだーっ」
 朝男はすぐガスを切るが、恭子さんはすぐ手を伸ばしてガスを開く。

 この、朝男が切る→恭子さんが開く→朝男が切る→恭子さんが開くと言うエンドレスの攻防はちょっと笑ってしまう。
  
 きりがないので、笙子が恭子さんの横っ面をはたく。
 笙子「恭子さん、いつまで甘えているの? 死ぬほど哲也さんが好きだったら、あたしから奪ったらどうなの?」

 わざと彼女を焚き付けるような言葉を浴びせる笙子。
 だが恭子は、「哲也さんを殺さないで、あたしは哲也さんなんか好きじゃない」と錯乱気味に叫ぶ。

 しかし、現実にこんな場面に直面したら、10分くらいはまともな会話にはならないと思うけどね。ひーはー言うだけで。

 朝男「笙子、恭子さんは哲也さんを殺すと脅かされていたんだ」
 笙子「ひどい!」
  
 そこへ、鬼父を先頭にして酒井の部下たちが乱入してくる。
 朝男は彼らを一手に引き受け、笙子に恭子さんを連れて逃げるよう指示する。

 朝男が持っていた凶器は、毎度お馴染みアルミパイプを布で巻いたもののようだ。振り回しているうちに旗みたいになる。
 ちなみにこのシーンで掛かるBGMは、今まであまり聞いたことのない曲だ。
 笙子はエレベーターの前まで来るが、
 背後からいきなり酒井がスパナのようなものを後頭部に叩きつける。
 この酒井の「あちょー!」と言う感じのポーズも、笑いを誘う。
 酒井はさらに笙子の腹を蹴り上げ、恭子さんと一緒にエレベーターに乗る。
 雑魚を振り切ってやってきた朝男、倒れている笙子を抱き起こす。
 笙子「もう許さない!」
 一方、トミーは「笙の会」で優雅に笙を吹いていた。

 よく考えたら、恭子さんの問題、そもそも全部こいつの心変わりが原因なんだよね。

 あと、根本的な疑問だが、「民間舞楽」って、それだけで食っていけるのだろうか?
 まあ、お弟子さんがたくさんいれば、月謝でなんとかなるかもしれないが。
 そこへ笙子が朝男と一緒に戻ってくる。
 笙子(暢気でいいわねえ、哲也さんは)
 もっとも、一応これでも苦悩しているらしい。

 ふっと、笙から口を離してしまう。

 芥川ナレが雄弁に笙子の心情を語る。
 「笙子にとって哲也の苦しむ姿を見ることが、何よりも耐え難い悲しみであった。哲也さんを苦しみから解き放ってあげたい。そのためなら、私はどんなことでもする。私は哲也さんのためなら死ねる!
 笙子「いや……死ぬのはちょっと……」
 勝手にエスカレートしていくナレーションに困惑する笙子。
 笙子は決意を秘めた眼差しで、踵を返してそのまま行こうとする。
 朝男「会わなくていいのか」
 笙子「朝男、あたしはもう一度カンバックするよ」
 朝男「バカヤロウ、俺が望んでいるのはお前のカンバックじゃない。お前と哲也さんの幸せだぁ」
 笙子「その哲也さんが苦しんでるの……」
 朝男「笙子ぉ、酒井のことなら俺に任せろ、お前は手を出すな!」
 朝男「命がないぞぉ」
 笙子「もう止まらない。止まらないよ!」

 魂の底から叫ぶ笙子。葉山家で抑えていた破壊衝動がそのはけ口を求めているようにも見える。
 朝男もそれ以上は何も言わず、笙子の後に続く。
 ビルから出たところで、玉子たちと会う。
 雅子「笙子おネエ、来てたの?」
 笙子「うん、ちょっと時間があったんでね」
 雅子「哲也さん稽古場にいるよ。会って来たの?」
 笙子「ええ……、玉子、雅子、『笙の会』のことよろしく頼むわね。哲也さんを助けて会を大きくしてね」
 玉子「そりゃあ勿論……」

 ここへ戻ることを考えていない笙子、遺言めいた言葉を残して行く。
 絵になる後ろ姿。

 玉子「変ねえ、永のお別れみたいなこと言っちゃって……」
 玉子はトミーにそのことを話す。トミーは不審に思って表へ出て見るが、既に二人の姿はなかった。
 ここで、急に笙子の実家の様子。
 ラジオ体操をしている笙子の妹、ではなく、山本学に舞楽を仕込まれているのだ。

 どう見ても、嫌々やってるが。
  
 そんな彼らを庭から見ている笙子。家族にお別れをしにきたのだ。
 笙子(お父さん、お母さん、ケンジ、鈴子、舞ちゃん)←おっ、そう言う名前だったのか(さようなら元気でね)

 笙子は黙って庭を出て行くが、ケンジがその後ろ姿に気付く。
  
 ケンジ「あれ」
 山本学「どうした」
 ケンジ「今、姉ちゃんがいたような気がしたんだ」
 山本学「なにぃ」
 みんなで縁側に出るが、誰もいない。
 山本学「気のせいだよ。第一笙子は今葉山家で舞楽の稽古に励んでる。さあ、こっちも負けずに稽古だ稽古だ」

 折角稽古がサボれると喜んでいた二人を部屋に押し戻す山本学。
 好きでもないのに無理矢理やらせてると、将来笙子みたいにグレるぞ。
 神社の石段の上に出てくる笙子。ここから「NEVER」がスタート。
  
 気の早い笙子は、早くも滂沱と涙を流しながら、社殿に深々と一礼する。
  
 ついで、ジョーズにも足を伸ばす。
 おアキに逃げられた、ヨシ坊が健気に店を続けている。カウンターには景子が。

 笙子「ちょっと時間が出来たので寄ってみたの。元気そうねえ」
 景子「うん、元気、あと一週間で予定日なんだ」
 笙子「一週間? あ、そう、そんなになるのね」

 しかし、そんな妊婦をカウンターに一日中立たせて良いのだろうか? よく分からんけど。

 景子「男のだったら哲也さん、女だったら笙子って付けようと思ってるんだ」

 笙子は分かるんだけど、トミーってそんなに景子の印象に残ってるかなぁ? 名前を貰うなら、むしろ、学園長の方じゃないの?
 笙子「バカ言ってるよ、私の名前なんて付けちゃダメよ。……はい」
 抱えていた風呂敷包みを渡す。
 景子「なにこれ」
 笙子「おしめ! たくさん作っといてあげたわ」
 景子「うわーありがとう」

 「おしめ」か……、時代を感じさせる。
 ヨシ坊「ママから何か連絡ありませんか」
 笙子「良夫さん、あなたはおアキママのことを信じて待ってれば良いの……必ず戻ってくるわ」
 ヨシ坊「ええ、それは僕も信じてます」
 笙子「じゃあ、また、景子、幸せになるのよ」
 改めて強くそう言い、笙子は店を出て行く。
 ほぼ同時に電話が鳴り、ヨシ坊が出ると、トミーからだった。
 ヨシ坊は、景子に笙子を呼んでくるよう頼む。
 景子は笙子を追って外へ出るのだが……、出産間近の妊婦には到底見えないお腹。

 そして朝男の車はロイヤル貿易のあるビルの前に到着。
 どこで化粧してきたのか気になるが、身も心も悪竜会時代の笙子になって降りる笙子。

 しかし、野暮を承知で言わせて貰うと、格好より心意気が大事なんじゃないかと……。カンバックと言っても、別に不良に戻るわけじゃなく、恭子さんを助けるために戦闘モードに切り替わるだけだしね。
 朝男も出てくるが、こっちはさっきとほとんど変わらない姿。服を着替えただけである。
 手には、さっきと同じ武器が握られている。

 笙子「朝男、ここから先はあたしひとりでいいよ」
 朝男「笙子、地獄の底まで付き合うぜ」
 笙子「勝手にしな」
  
 チェーンを振り回しながら階段を登る笙子にナレーターが被る。
 芥川ナレ「悪竜会会長の曽我笙子が復活した。不良少女の血が燃えたわけではない、決してない。愛する人を救おうとする乙女の悲しい一途な想いが悲しいカンバックを決意させたのである」

 (原作の原笙子さんへの)言い訳にしか聞こえないナレーション。

 やっと本格的な舞楽ドラマになったと思ったのも束の間、結局はこうなるのだった。
 もっとも、原さん、とっくに見るのやめてたと思うが。
 で、正面の自動ドアを通ると、次の瞬間、ロイヤル貿易のオフィスに到着している二人。

 途中で、関係のない人に見られるととても恥ずかしいからである。

 社員の皆さんは笑うこともせず、「なんだ君たちは」と、聞いてくれるので安心。
 笙子「相模悪竜会会長、曽我笙子!」
 朝男「東京流星会会長、西村朝男!」
 二人の名乗りで、「つづく」のであった。



 

  第24話「ラブ・フォーエバー」(1984年9月25日放送)

 軽い気持ちで始めたこのレビュー、いつの間にか段々1話あたりの文章が長くなって、後半は正直かなりしんどかった。
 だが、それも遂に最終回である。我ながら良くやったと誉めてあげたい。パチパチパチ。

 ネタバレあり!(今更だけど)

 前回の続き、二人がロイヤル貿易に殴りこんで名乗るところから入るのだが、社員の皆さんはぐだぐだ余計なことは言わず、特撮ヒーローののりで即座に二人に襲い掛かる。

 ただし、その部分は台詞も格闘の音もなく、芥川ナレの言葉だけが聞こえる。

 ナレ「曽我笙子はカンバックを決意した。たとえ娘を犠牲にしても舞楽の伝統を守り通そうとする葉山の壮烈な覚悟に打たれたこともあった。それに恭子のために苦悩する哲也をもうこれ以上見るに忍びなかった。哲也さんを苦しみから解き放ってやりたい。私は哲也さんのためなら死ねる。それが笙子の悲しい決意であった」
  
 悲愴なナレーションだが、映像だけ見ると、なんとなくドリフ的であった。
 あと、苦悩する哲也、と言っているが、トミー、そんなに苦悩してないと思うんだけどね。恭子さんのためと言うことなら、むしろ男谷の方が何倍も苦しんでいただろう。
  
 また、朝男がパイプで思いっきり包装された箱を壊すシーンがあって、
 蓋を開けると、宝石類が出てくるので、なんか強盗に入ったようにしか見えないのだった。
 実際は、その底に隠されていた覚醒剤を取り出すためだったと分かるのだが。
  
 ナレーションが途切れた後、音入りで少しアクションがあり、社員から明日、酒井と恭子さんが結婚式を挙げると聞き出す。だが、その場所については本当に知らないようで、どれだけ脅しても口を割らない。
 一方、葉山家には男谷が訪れ、酒井と恭子さんの姿が消えてしまったと報告する。
 しかし、舞楽の伝統を何より優先する葉山は、「勘当した娘が何処で何をしようと知ったことではない」と突っぱねる。
 歌子は警察へ知らせようと言うが、葉山は必要ないと断じる。
 葉山「恭子が自ら選んだことだ。死のうが生きようが私の知ったことではない」
 歌子「あなた……」
 葉山「第一、警察へ知らせたら、葉山家の家門はどうなる? 娘が覚醒剤中毒であると言うことがたちまち世間に知れ渡ってしまうだろう。そうなれば十何代続いた、葉山家を私の代で滅ぼすことになる。私のことは構わん、だが、伝統ある舞楽を滅ぼす訳にはいかんのだ」
 夫の言葉を黙って聞いていた歌子、今まで抑えてきた感情を一気に爆発させる。

 「家門が何ですか? 葉山家の名誉が何ですか。あなた、あたしは今まで、あなたのお言葉ならなどんなことでも従って参りました。あなたのお言葉なら間違いないと信じていたからです。でも、今はっきりと分かりました。あなたのそう言う考えが、恭子を不幸に追いやったのです!家門のために娘を見捨てるようなあなたにあたしはもうついていけません。今日限りお暇を頂きます。あたしは恭子の母親なんです。娘を見殺しには出来ません! 家門も格式も葉山家の妻であると言う名誉もあたしはもう何にも要りません。恭子の母親として、あの子の側にいてやりたい。……男谷先生、警察に参りましょう」

 夫の言葉も待たず、さっさと部屋を出て行く歌子。男谷が葉山も誘うが、葉山は動かない。男谷は仕方なく歌子の後を追う。
 残った葉山、「私は、私は葉山家を守らねばならんのだ」と、念仏のように唱えるのだった。

 「私は、私は今、足がシビレていて動けないのだ。許せ」と言うようなギャグを考えたが、つまんないので却下。
  
 その恭子さん、ビルの機械室のようなところで、酒井の部下たちに厳重に監視されていた。
  
 気がついたら、結局最後まで出てしまった鬼夫婦。いつの間にか、酒井の腹心みたいな地位にまで上り詰めた様子。

 「火気厳禁」なのに、ガンガン煙草吸うんじゃねえ!

 まだ意識はある恭子さん、電話を見ると考えなしに立ち上がり、ふらふらと近付こうとするが、鬼母に遮られ、ソファに押し戻される。
 さらに、恭子さんの顔に煙草の煙をゴジラのように吹きかける鬼母。悪役が決まり過ぎですね。
  
 電話が鳴ると、思わず飛び付く葉山。
 葉山「恭子か? ……あ、曽我さんですか」
 なんだかんだいって、娘のことが気掛かりなのだ。
 山本学「曽我でございます。あの、笙子は元気にやっておりますでしょうか」
 葉山「笙子君は当家を出ました。笙子君の舞楽の素質には恐るべきものがあります。この後、哲也君と共に精進を重ねれば、舞楽人として必ず名を成す人物となれるでしょう。笙子君なら大丈夫です」

 こんな折りながら、笙子のことを絶賛する葉山。原作者の原さん(激怒中)へのおべっかのようにも聞こえる……。
 笙子の家族は、前回、笙子の姿を見掛けたので気になって電話したのだろう。

 トミー、ジョーズで玉子たちから笙子のことを聞かされていると、笙子の両親も顔を見せ、共に笙子のことを心配する。
 と、このタイミングで懐かしい顔がおずおずと店に入ってくるので、管理人、びっくりしてしまった。
 すっかり完全に忘れていたが、トキ子はこんな形で再登場するのだった。
 遺骨(麻里のだろう)の入った箱を胸に下げている。
 トキ子「ごめんください」
 景子「トキ子ーっ、トキ子じゃないかーっ」
 振り向く一同、真っ先に景子が駆け寄る。
 トキ子「景子、あっ、久樹先生! 私、今日仮退院が許されました。笙子と真っ先に会おうかと思って……笙子に何かあったんですか」
 一同「……」
 間の悪い時に来たので、居心地の悪いトキ子、ちょっと不憫である。
 玉子たちだって、不良時代の喧嘩仲間として顔見知りの筈なんだけどね。
 玉子「笙子おネエはカンバックしたんだ!」
 このタイミングで、トキ子の出現とは何の関係もなく、玉子が叫ぶ。

 勝手に決め付けると、「みんなに知らせな、笙子おネエはカンバックしたんだ」と、仲間に指示し、自分も店を走って出て行く。「みんな」と言うのは、無論、悪竜会の元メンバーたちだろう。
  
 笙子、朝男の運転する車で、海沿いの道をどこかへ向かっていた。涙を一筋流しながら。
 ちゃんと目的があって走っていると言うことは、結局部下から結婚式の場所を聞き出したのだろうか?

 ここでOP。
 そして、いきなりこんな凄いゲーム画面から再開する。なんてゲームか知らんけど。
 無論、悪竜会の元メンバーたちがたむろしているゲーセンである。
 笙子の友人の檄を受けて、即座に「笙子カンバック」情報を拡散しに飛び出す仲間たち。
 その知らせは堂本剛(笑)のところにも届く。
 ここで初めて、剛の働いているところが映し出される。

 そう、剛は一日中タイヤを転がす仕事をしていたのだ。(そんな仕事あるかっ)
 そしてこの方にも。
 どっかのバーで、しょうもない歌を気持ち良さそうに歌っている晴子。
 客席から、雅子がブロックサインで知らせる。
  
 晴子はすぐ歌うのを止めて、客に直接訴える。
 「私の親友に今、大変なことが起こっているんです。私は親友に会って話をしなきゃならない。どうか皆さん私に1時間だけ時間を下さい。私はどうしても親友に会わなきゃならないんだ」
 客は、晴子の言葉に拍手で応じる。

 さて、朝男の部下、山崎はあるホテルで酒井の姿を見かけ、朝男に電話する。
 やはり二人は、結婚式場の場所は聞き出せなかったようで、朝男の経営する雀荘で待機していた。
 その店の電話が鳴り、直ちに受話器をやたらかっこいい持ち方で取る朝男。
 「山崎か、なに、酒井がぁ? ……分かった。そのまま尾行を続けろ。酒井が何処で式を挙げるのか突き止めるんだ」
 横で聞いていた笙子はすぐ酒井のところへ行って、直接彼を締め上げようとするが、朝男が冷静に止める。
 朝男「恭子さんの居場所を話す訳がねえ」
 笙子「式を挙げられちまったら、もう誰にも手を出せないよ。そうなったら哲也さんは一生苦しむことになるんだ」
 結局、笙子の価値基準は、全て「哲也さん」ありきなんだよね。この場合、一番大事なのは恭子さんの身の安全であって、トミーの内心の健康問題ではない筈なんだけどね。

 二人が押し問答していると、当のトミーが店に入ってくる。何でこの場所が分かったのだろう?
 トミー「笙子さん! 君は僕のために恭子さんを酒井から取り戻そうとしているんだね」
 トミーも、笙子の気持ちはお見通しであった。ある意味、お似合いのカップルだね。
 トミー「その気持ちだけで十分だ。君は自分の幸せを考えて生きてくれればいいんだ」
 トミーの思い上がり、いや思いやりにうるっとなる笙子。それにしても、なんちゅうカツラだ。
 晴子、トキ子がかわるがわる説得する。
 トキ子「笙子、私だよ、トキ子だよ、私は今日出たんだ。真っ先に笙子に喜んでくれる顔見たいと思った。それなのになんだよ、こんなのってあるかい、ネバー・ギブアップ、園長先生の言葉を忘れちまったのかい?」
 どうやら笙子さん、ほんとに忘れていたようです。
 トキ子「麻里の遺骨だよ、笙子と一緒に海に流してやろうと貰って来たんだ。麻里はバカやった私たちの罪を背負って死んじまったようなもんじゃないか」
 遺骨と言っても、遺骨全部ではなかったようだ。考えたら、麻里にはちゃんと実母がいるんだからね。
 しかし、トキ子の台詞、まるで笙子を遺骨と一緒に海に突き落とすような光景が目に浮かぶ。

 トキ子「笙子、麻里の為にもバカはやめて」
 トキ子の必死の訴えに、笙子は麻里のことを思い出していた。
 だが、笙子の決意はあくまで固く、麻里の遺骨をトキ子に預けるように押し返す。
 トキ子「笙子ーっ」

 と、そこでまた電話が鳴る。今度は普通の持ち方で取った朝男、「なにっ、酒井が真琴と会ってると言うのか」と、意外な言葉を口にする。
 その言葉どおり、電話している山崎の背後で、酒井とモナリザが楽しそうに話している。ここはホテル内のラウンジであろうか。
 引き続き見張るよう指示してから、二人はトミーを振り切って外へ出る。
  
 と、彼らの前に悪竜会の仲間がずらーっと並ぶ。
 剛「笙子、カンバックするんだってなぁ」
 雅子「おネエ、あたしたちも一緒にやるよ」
 笙子「ヒヨッコがナマ言ってんじゃないよ。どきなっ、邪魔なんだよ」
 笙子は凄みを利かせて荒々しく言い放つと、人垣をかき分けて朝男の車に乗り込む。彼らを巻き込みたくないのだ。

 ちなみにヒヨッコと一人前の違いは、やっぱり髪の分量だろうなぁ。
 トミー「笙子さん、君が昔の君に戻るくらいなら、僕は死んだ方がましだ!」
 笙子「朝男、行くよ」
 愛するトミーの必死の呼びかけにも、笙子は覚悟を変えない。
 酒井「これが私の君に対する気持ちだよ」
 酒井は、モナリザに封筒を差し出す。中にはチケットが。
 モナリザ「成田からパリまでの飛行機の切符じゃないか。あんたと恭子さんの新婚旅行に付き合えと言うの?」
 酒井「あんたはパリで待っててくれれば良い」
 モナリザ「花嫁さんはどうするつもり」
 酒井「恭子さんは病弱なんでね、旅の途中でどうなるか」
 モナリザ「保険金はたっぷり掛けてあるみたいね」
 酒井「当然でしょ、そんなことは」
 モナリザ「こんな大切な話をあたしみたいな女に話していいの?」
 酒井「あんただから話せるんだよ。私は一目見てあんたに惚れた。あんたとなら手が組める」
 どうやら、酒井はモナリザを悪事のパートナーとして目を付けているらしい。

 結婚式に出てみないかと言う酒井の言葉に、モナリザは「面白そうね」と応じ、さりげなぐ「場所は何処?」と訊ねる。近くにいた山崎が思わず聞き耳を立てるが、酒井は口頭では答えず、メモに書いて見せる。
 それには教会の名前だけ。教会の名前だけ教えられてもなぁ。当時は検索なんてないんだし。
 その後、モナリザは花屋に帰ると、おアキに、酒井が保険金目当てに恭子さんを殺すつもりだと自分の推測を話す。

 その上で、モナリザは酒井の誘いに乗ってみると、何を考えているのか分からない、まさにモナリザの微笑を浮かべる。おアキは本心を打ち明けてくれと訴えるが、モナリザはそのまま結婚式場へ行こうとする。
 と、そこへどやどやと元「家族」が現れる。
 何故酒井のような男と関わりあっているのかなど、あれこれ追及されるが、モナリザは無言。
  
 嘲るような笑いを浮かべるが、その途端、昌也に「バカッ、まだ分からないのかっ!」としばかれる。

 笑っただけでしばかれる人と言うのもなかなか珍しい。
  
 一瞬幼い、悲しそうな目になるモナリザだったが、「初めて殴ってくれたね、父さん、この痛み、忘れないよ」と、かえって晴れ晴れした笑顔を見せる。
 それだけ言って、モナリザは店を飛び出す。トミーは、おアキからモナリザが酒井と恭子さんの結婚式に出ようとしていることを聞き、また、その場所が「聖チャペル教会」と言うことも知る。
 次のシーンでは、早くもその教会で結婚式が執り行われていた。最終回なのでぼやぼやしていられないのだ。
 外国人牧師(神父?)が、定番の台詞(〜誓いますか)を喋っている。
 序盤で、トミーにふられて自殺しようとした時以来の恭子さんのウェディング姿。
 酒井はすぐ「誓います」と答えるが、恭子さんは黙ったまま。
 酒井が「恭子」と、促すと、「待ちな!」と言う笙子の声が響く。一斉に振り向く人々。
 無論、相模悪竜会会長・曽我笙子と、東京流星会会長・西村朝男と言う最強コンビの登場である。
 笙子「この結婚式はあたしたちが認めないよ。恭子さん、あなたが結婚するのは酒井なんて言うドブネズミじゃない、哲也さんなのよ」
 恭子「笙子さん、誤解しないで下さい。私は私の意思で酒井と結婚するんです」
 笙子「恭子さん、哲也さんや家族を殺すと脅されているんだろうけど、もうそんな心配は要らない。酒井とはあたしがきっちりカタをつけるからね」
 「きっちり」の部分を特に力を込めて言い放つ笙子、
  
 酒井をこの場で殺す覚悟があることを示す。立ち上がる酒井の部下たち。関係のない人はすぐにこの場から逃げ出す。
 だが、意外にも二人の前に列席していたモナリザが立ちはだかる。
 モナリザ「笙子、ここから先は、あたしが通さないよ」
 笙子「モナリザ!」
 モナリザ「あたしは酒井さんとパリ旅行としゃれ込むつもりなんだよ、たっぷり保険金を掛けた恭子さんには、旅の途中で事故に遭って死んで貰う段取りになってるんだ」
 だが、ここで酒井の計画を恭子さんに聞こえるようにべらべら喋る。無論、モナリザが本気で酒井のような男の味方になるわけがないのだ。
  
 さすがに、それを聞いて恭子さんもギョッとする。
 酒井「バカな、何を言ってるんだ君は」
 モナリザ「今更とぼけるんじゃないよ、恭子さんを殺して、あたしとパリで結婚式を挙げようと言ったのは何処のどいつだい?」
 どうやら、酒井、本気でモナリザに惚れていたらしい。
 しかし、まだ恭子さんを殺して保険金も受け取っていない段階から、そこまで話を進めると言うのは如何にも不自然だ。これはまあ、ラストにモナリザを無理矢理ストーリーに絡めようという制作サイドの思惑があるのだけどね。
 モナリザ「お前とパリ旅行に行く気なぞ、あたしにははじめっからないんだよ」
 かっこよくチケットを破り捨てるモナリザ。しかも平服である。恥ずかしい格好で乗り込んできた二人の立場がない。
 さらに、
  
 モナリザ「笙子、酒井とカタをつけるのはお前じゃない、あたしだ!」
 笙子「えっ、なんでそうなるの?」
 モナリザ「あたしは哲也兄さんのために、酒井を殺す!」
 自慢の、カミソリを指の間に挟んで宣言するモナリザ。

 一応、トミーの為と言う大義名分を掲げているが、前回初めて会ったばかりの酒井を殺そうとするのは、いくらなんでも無茶である。それに、トミーの為と言うのもなんか頷けないしなぁ。トミーは既に恭子さんなど愛していないのだし。
 かつて不良時代、モナリザと酒井の間に何か因縁があったとかならまだ分かるのだが。
 そこへトミーが登場。
 「やめてくれ、やめるんだ! 笙子さんも葉子も、みんなやめてくれ」
 その叫びにみんな振り返る。
 トミー「君たちは愛育学園で何を学んできたんだ。怒りや悲しみを暴力でカタをつけて何が変わる? 君たちが不幸になることで、本当に誰かが救われると思っているのか?」
  
 相変わらず言うことだけは立派なトミー。二人も思わず黙り込む。

 トミーの言うことは正論かも知れない。
 ただ……、

 恭子さんが不幸になった、そもそもの元凶であるお前にだけは言われたくねえよ!

 それに、別に彼らは酒井が憎いから殺そうとしている訳じゃないんだけどね。

 朝男「哲也さんよ、俺たちにどうしろと言うんだ」
 トミーの説教で、なんか変な空気になったが、朝男が開き直って質問する。

 トミー「君たちは君たちの世界へ戻ってくれ。つらい思いの中で本当に生きたいと祈り続けた世界を見付け出してくれ
 トミーの台詞、矛盾している気もするが、前半は笙子と朝男、後半はモナリザに対して言ってるのだろうか。

 トミーはさらに、「酒井さん、僕に恭子さんを返してください。恭子さん、僕はあなたと結婚します!」と、爆弾宣言。あくまで、恭子さんを取り戻す為の方便かと思ったが、
 トミー「笙子さん、君はもう僕がいなくても大丈夫だ」
 とも言っているので、どうやら本気らしい。24話かけて、最初に戻ってしまったではないか。

 しかし、恭子さんを捨て、笙子さんと一生一緒だとかなんとか言っておきながら、ここに来ての再度の変心はさすがにどうかと思う。そもそも別に恭子さんと結婚しなくたって、彼女を酒井の手から取り戻すことは可能だろう。恭子さんが、トミーと結婚できなきゃ酒井から逃げられないと甘えているようにも見えてしまう。

 トミー「恭子さん、僕と一緒に帰りましょう」
 トミー、恭子さんに近付く。酒井はナイフを取り出し、恭子さんの首にあてがいながら、部下に「やれ」と命じる。
 いつになく自信ありげで強そうなトミー。遂に真の力を見せてくれそうな気がしたのだが、
 トミーはやっぱりトミーであった。
 これで何度目だろう、フク叩きにされるの。

 敵味方入り乱れる乱闘になり、気がついたら全員でトミーを殴る蹴るしていたと言うベタなギャグになったら面白いのだが。
  
 イスを踏み台にしてジャンプして、パイプで敵を殴る朝男。
 その後、トミーを助ける為、トミーを殴っている男の後頭部を思いっきり殴る。
 トミーは戦うと言うより、ガムシャラに前に進むと言う感じなのだが、その最中、敵の一人を見事に投げ飛ばしている。やっぱり、本気を出せばかなり強いのではないだろうか。

 朝男、笙子、モナリザの活躍で、手下はどんどん倒される。不利を悟った酒井は、恭子さんを無理矢理引っ張って教会の外へ出る。トミーもすぐその後を追う。
  
 酒井は自分の車に恭子さんと一緒に乗り、さっさと逃げ出そうとするが、追いかけてきたトミーがフロントウィンドウを覆うように車の上に乗る。酒井はボンネットにトミーを乗せたまま、構わず走り出す。無論、右側はスタントである。
  
 トミー「酒井、やめるんだーっ」
 車を止めさせようとする恭子さんが酒井にチョップを食らって気を失う。
 トミー「恭子さーん!」

 正義の味方のトミーなのだが、何かこのカット、新婚カップルにつきまとう変態ストーカー殺人鬼のように見えなくもない。
 車はやがてトミーをぶら下げたまま未舗装の山道に入る。しかし、このスタントはなかなか迫力がある。
 笙子たち横浜最強トリオは手下を片付けた後、走って彼らの後を追う。……考えたら、笙子と朝男はここに車で来てる筈なのだが……?
  
 トミー「酒井、止めろーっ」
 トミーがそう言うので、酒井は親切にブレーキをかけてやる。反動でトミーはルーフの上を転がって、そのまま車体の右後ろに落下する。
 酒井は二人とも気絶しているのを見て、
 酒井「昔の婚約者が花嫁を奪って無理心中ってのも悪くねえなぁ」
 と、トミーの体を運転席に運び、
 ズボンの裾をまくって、ダイナマイトを……って、おい、あんたそんなもん装着して結婚式を挙げてたの?

 バカじゃないの?
 あと、シルクのスケスケ靴下から見える、酒井の足がなんかヤだ。
 酒井はダイナマイトを外し、後部座席に放り込んで、ライターで導火線に火をつける。
 しかし、心中に見せかけて殺すのなら、そのまま谷底に車を落とした方がいいんじゃないの?
 ま、近くに手頃な崖がなかったので、その手段が取れなかったのだろうが、さすがにダイナマイトで心中しようとする奴なんかいないだろう。
 そのまま酒井はすたこらさっさと逃げ出す。やがてトミーが気付いて、ダイナマイトをどうにかしようとするが、酒井がきっちりシートベルトをつけてくれていたので、手が届かない。仕方なく、恭子さんの体だけ外に押し出し、そのまま車を発進させる。
 ある程度恭子さんから離れた所で止めて、落ち着いてシートベルトを外そうとする。
 恭子「哲也さん!」
 絶妙のタイミングで恭子さんが目を覚ます。もう少し早く目覚めていれば、すぐダイナマイトを捨てられたのにね。
 同じく、絶妙のタイミングで笙子たちが到着する。
 笙子「恭子さん!」
 恭子「哲也さんが……」
  
 一瞬の間を置いて、車が大爆発を起こす。
  
 それぞれ悲痛な表情を浮かべる笙子たち。
 トミー、どう考えても即死の筈なのだが……。
 しっかり生き残っていた。これじゃドリフだよ。
 笙子「哲也さん、死なないで……」
 すぐにトミーに駆け寄る笙子たち。メインの5人がひとつの画面に収まるのは、これが初めてだっけ。
 トミー「死なない、死んでたまるか。僕はまだやらなきゃならないことが、民間舞楽を、『笙の会』を……うっ」
 話しているうちに意識を失う。
 しかし、あれだけの爆発に包まれて、五体満足で意識もあると言うのは、いくらなんでも鉄人過ぎであろう。
 ぎりぎりで車から脱出するが、爆発に巻き込まれたと言うシーンが欲しかった。
  
 救急車で運ばれるのだが、笙子たちが見守るだけで、救急隊員は応急処置すら取らない。せめて酸素吸入マスクくらいあてがっとけ。
 同じ頃、絶妙のタイミングで景子が陣痛になる。彼女もトミー同様、救急車で搬送される。
 病院の廊下で、不安そうに待っている笙子たち。この衣装、並び、いかにもドラマと言う感じだ。
 笙子さん、そろそろそのカツラ取りませんか?

 あ、これは地毛と言うことになってるのか。

 そこへ、トミーの両親、恭子さんの両親、笙子さんの両親、男谷がどやどやと集まってくる。みんな暇だなぁ。
 山本学「笙子……、お前なんちゅう格好しとんだ。ぷぷっ」

 じゃなくて、
 山本学「笙子、哲也さんは……?」
 笙子「……」
  
 笙子の険しい視線の先には「手術中」のランプが。
 と、絶妙のタイミングでランプが消え、医者が顔を出す。
 医者「近親者の方はお入り下さい」
  
 その言葉に、トミーの両親、モナリザ、続けて、恭子さん、その両親、男谷が入る。
 ま、医者は「ご家族の方」とは言ってないからね。

 笙子はその場に立っていたが、両親が引っ張るようにして入って行く。
 んで、一人残った朝男の前を、出産間近の景子を乗せたベッドが通り過ぎて行く。

 絶妙のタイミングにも程があるだろ。

 ラストに、景子の出産を絡めるのはいくらドラマとは言え、あざとい気がする。
 さて、トミー、包帯で顔をぐるぐる巻きにされていた。どう見てもあと50年は生きそうな肌のツヤである。
 トミー「しょっ、あっ……」
  
 昌也「哲也、何が言いたんだ?」
 少年院関係を除く、ほぼオールスターキャストの壮観。

 トミーの死を描くこの最後のクライマックス。これが最初だったら素直に感動できるかもしれないが、中盤の麻里の死がほぼ同じような演出で描かれているので、今ひとつのれないんだよね。後の「スクールウォーズ」の、「三人殺し」よりはマシだけど。
 それに、肝心のトミーを死なすと言うのはあまりに救いがない。

 トミー「笙子さん」
 笙子「はい」
 トミー「僕を許して下さい。僕は君を幸せに出来なかった……」
 笙子「哲也さん!」
  
 ついで、トミーは両親、モナリザの方へ訴えかけるような目を向ける。

 何がなんだか分からないうちに息子が死にそうなってウルウルしている多代さんが可愛い

 トミー「葉子、葉子……」
 モナリザ「兄さん!」
 トミー「葉子、お父さんとお母さんを許してくれ」
 モナリザ「兄さん、哲也兄さん!」
 トミー、モナリザに力強く頷いてから、きょろきょろと誰かを捜す。
 トミー「恭子さんは何処ですか?」
 両親の背後に立っていた恭子さん、歌子に押し出されるようにして前に立つ。
 恭子「あたしならここにいます」
 トミー「恭子さん、あなたを一番愛している男は、男谷です!
 トミーの言葉にハッとなる二人のアップ。

 しかし、恭子さんの方はどうやっても男谷とは結婚したくないらしい。「生理的に無理」なのかな。
 ここで、トミーがいかにも死が近付いているような感じになる。しかし、相変わらず血色が良いので説得力がゼロである。

 トミー「葉山先生、恭子さんを許してあげてください」
 葉山「いや、許しを請うのは私のほうだ。私に君の優しさのカケラでもあれば、君の勇気のカケラでもあれば、恭子や君たちをこんな辛い目にあわせずに済んだんだ。哲也君許してくれ。人間の愛が家を作り、家族を守ると言うことを忘れていた私を許してくれ!」
 トミー「ありがとうございます。みんな、ありがとう……」
 もう一度、祥子に何か言うのかと思ったら「くたっ」と言う感じであっさり死亡するトミー。
  
 自分を愛していた三人の美女に見守られながら……。

 ……何かだんだん腹が立ってきた。
 トミーに取り縋って号泣するのは家族の多代とモナリザ。
 笙子は涙を流しながら、ふらふらと魂が抜けたような足取りで廊下へ出る。朝男もトミーの死を知り、瞑目していた。
 と、同時に、景子が赤ん坊を出産する。
 そのまま病院の外へ出た笙子。
 (嘘だ、哲也さんが死ぬ筈がない。あたしは泣かない。嘘に決まっているもの)

 存分に悲劇のヒロインとしての醍醐味を味わっていると、
  
 玄関から景子の夫、ヒロシが飛び出てきて、
 「うははーははー、生まれた、生まれたぞーっ!」
 と、手放しの大喜び。

 ヒロシ君、ヒロシ君、空気読もうか?
 ヒロシ「男の子だ、男の子が生まれたぞーっ」
 ヒロシの叫びに弾かれたように振り向く笙子。
 (男の子? 景子が男の子を生んだんだわ。景子の所へ行って、祝福してあげなくちゃ。祝福してあげなければ、哲也さんに叱られて(発音がちょっと変)しまうもの)
 ここで、何話だったか忘れたが、少年院での回想シーン。
 トミー「僕たちはどんな惨めな時でも友達の幸せを祝福する気持ちだけはなくさないようにしよう」

 と言うことなのだが、しかしなぁ、この場合、笙子がひたすら泣き暮れている方がよっぽど感動的だと思うけどね。
 笙子は涙を隠し、ズカズカ病室に突入し、景子を祝福する。
 景子は笙子の姿を見ても特に驚かず、「哲也さんの名前貰っても良いかな」と聞く。

 その言葉に、笙子はまた涙を流す。さすがにその場で景子にトミーが死んだとは言えず、「おめでとう」とだけ言って部屋を出る。
   
 で、また元のところへ戻ってくる笙子。忙しいね。
 海を臨む松の木を、悔しさと悲しさをこめて拳で打ちながら、号泣する。
 その笙子の肩を背後から伸びた手が掴むので、トミーの幽霊が笙子を道連れにしに来たのかと思ったが、
 無論それは、同じくトミーを愛した二人の女性であった。
 モナリザ&恭子さん「あたしを許して」

 トミーの死に責任があり過ぎる恭子さんが謝罪するのはともかく、モナリザもついでに謝っているのがちょっと分からない。今までさんざんトミーに手を焼かせてきたことへの謝罪を、笙子にすると言うのは変だしね。
 笙子、言葉にならず、恭子さんに抱き付いて思う存分泣く。
  
 その後、きっちり葬儀の様子まで描くのが大映ドラマの凄いところ。そう言えば、麻里の葬式もあったなぁ。
 ただ、笙子の家が神社だからって、神式で葬式挙げなくてもいいんじゃないかと。久樹家にはちゃんとかかりつけ(?)のお寺があると思うんだけどね。
 山本学「〜久樹哲也のみことのみなきがらのおおまえに〜」
 なんだかよく分からないが、神式の作法でトミーの遺影に別れを告げる人々。
 折角最後に出てきたのに、トキ子の見せ場がなかったのがちょっとかわいそうだった。ま、出られただけ、八千代よりマシか。
 おアキとヨシ坊の夫婦も、なし崩し的に元の鞘に納まっていた。
 朝男「哲也さん、安らかに眠ってくれ。今度こそ約束するぜ、俺たちの祈りの世界をどんなに辛くとも見つけ出してやるぜ」
 ただ、肝心のトミーの遺影が、若干悪人面なのが……。
 その後、余興として、ゆかりのある三美人がそれぞれ舞楽の舞を披露する。
 笙子が正装して踊るのは、いつ以来だっけ?
 恭子さんにいたっては第1話以来か?
 ただ、モナリザまでついでに舞っているのは、ちょっと変じゃないか?

 でも、みんな綺麗だからよしとしよう。
 笙やひちりき(だっけ?)を吹くのは、葉山と笙子の父。
 下の客席には、当然、家族や友人がトミーの遺影を抱えて見守っている。

 荘厳な音楽の中、笙子は自然とトミーとの思い出を回想していた。
 トミーが、フクロ叩きにされているところを。

 トミーといえばフクロ叩き、フクロ叩きといえばトミーなので、しょうがない。
 また、見事に踊る笙子の姿を見て、多代がかつて彼女に厳しい言葉を浴びせた時を思い出し、涙を新たにする。
 恭子さんも、トミーとの様々な思い出を甦らせ、涙をこぼしていた。
 なお、名古屋章の名前がクレジットされていたので、葬式に顔を出すのかと思っていたが、モナリザの回想の中にちょこっと出るだけだった。スケジュールなどの都合だろうが、トミーの葬儀に彼が現れないと言うのはちょっと不自然だ。

 この章の説教は、物語を締め括るのにふさわしいと考えられたのか、長々と引用されている。それと一緒に、色んな過去のハイライトシーンが映し出される。

 章「諸君の両親を許せと言っているのではない。憎んでよろしい。ただ憎んではダメだ。ワシは諸君に親の過ちを決して繰り返さない女になってもらいたいのだ。自らを卑しめず、自分のことを卑しめない。そう言う母親になってもらいたい。諸君が、そのような女性になったとき、初めて自分の親を許すことが出来るようになるだろう。最後にワシは言う。呪われてこの世に生まれてくる子供は一人もいない」

 同様に、比企理恵の名前もあったが、彼女もここでちょろっとハイライトシーンが流れるだけ。ま、彼女の場合、死んでるのだからしょうがないけどね。
 また、笙子とモナリザが心の中で麻里に呼びかける。
 笙子「麻里、麻里!」
 モナリザ「麻里、許して……」
 ここで、いよいよ終わりの近いことを示す「NEVER」が流れ出す。最後の「NEVER」だ。さすがにちょっと感無量である。
  
 しかし、まだ回想シーンは続き、今度は朝男が笙子やトミーとのこと、モナリザがトミーとのことなどを思い返していた。
 ついで、恭子さん、笙子が回想。

 笙子は、少年院を出た直後、トミーと交わした唯一(だっけ?)のキスを……。
 やっと舞が終わり、ぺこりとお辞儀をする三人娘。
  
 立ち上がって拍手をする人々。
 ところで、ヨシ坊と男谷の間、一番後ろにダメケイこと圭太郎が混じっていたのである。
 遺影に挨拶するところでも、顔が映っていないので気付かなかった。
 こっちの画像はもっと大きく映っている。
 ま、彼が、少年院を代表して来ていると言うところか。台詞のひとつもないのが悲しいけど。
 遺影を先頭に、石段を下りる遺族と、参列者たち。トミーの遺骨は一旦自宅に帰るのだろう。
 笙子の家族は上から見送る。
  
 葉山家の人々、モナリザ、振り返って一礼し、笙子もお辞儀を返す。
 結局、恭子さんは男谷と結婚したのだろうか?
  
 トキ子は、少年院仲間と言うことでダメケイと並び。
 朝男は、当然、最後尾をひとりで歩く。でも、笙子を振り返らないところがかっこいい。

 ちなみに最終回と言うこともあり、「NEVER」はフルコーラスなのだ。
 笙子「哲也さん、あたしはあなたの夢を育てて生きていきます。舞楽の道がどんなに辛くても、この道一筋に生きていきます。哲也さんが広めることを願った、舞楽のたおやかな心がいつか争いのない世界に通じる、新しい道を切り開いてくれるでしょう。そのことを信じて、あたしは生きていきます。哲也さん、あたしはもう決して後戻りはしません」
 笙子が空を見上げると、トミーの爽やかな笑顔があった。
 最後の笙子の台詞はなかなか泣かせる。
 笙子「あなた、愛をありがとう」

 結局、婚姻届は出されずじまいか……。

 最後、回想シーンばっかりでつなぐのはまあいいんだけど、その後のそれぞれの進む道とか、もうちょっと具体的に説明が欲しかった。恭子さんの覚醒剤中毒は治ったのか、モナリザはあのまま花屋をやっていたのか、とかね。それに、トミーと言う死人まで出ているのだから、これが警察沙汰にならない訳がなく、恭子さんの覚醒剤の件とか、大騒ぎになってもおかしくないのだが、ドラマでは敢えてその辺については一切触れず、誤魔化しきることに成功した。

 ただ、最初見たときも感じたが、やっぱり人を殺して無理矢理感動させたり、全ての問題を片付けてしまおうと言うのは安易な発想である。あれだけ大恋愛を繰り広げて、結局笙子とトミーが結ばれないと言うのは、あまりに救いがない。

 ところで……、
 酒井さんどうなっちゃったの?

 全く、これっちぽっちも言及されていないんだけどね。ま、警察に捕まって断罪されたのだろう。恭子さんの覚醒剤も、酒井に無理強いされたと言うことで罪にはならなかった?

 とにかく、これで終わりです。ああー、長かった。
 なお、DVD8には、いとうまい子さん、伊藤かずえさん、松村雄基さんの三人による特別座談会が収録されていて、昔話に花を咲かせている。司会がアドリブの利かないアナウンサーなのであまり面白くないが、いつまで経っても若々しいお三人の姿が見られるのは嬉しいことである。