赤い絆 1977〜78年 メニューへ戻る
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 「赤い絆」は、1977〜78年放送の連続ドラマ。TBS「赤い」シリーズの第6弾。

 色々と複雑な出生の秘密を持つ不良少女・恵子(山口百恵)と、外交官として将来を嘱望された志摩信夫(国広富之)の純愛を描いている。

 斉藤さんは、恵子の妹・明子として登場。序盤は結構出番があったが、途中からほとんど顔を出さなくなり、後半になると「最初からいなかった」ことにされていた……。

 2013/12/04追記

 このレビュー、キャラクター名を役名と俳優名などをごちゃまぜにして表記しており、我ながら分かりにくいと思っていたので、改めて主要キャラクターについて自分なりの紹介をさせてもらう。

 志摩信夫(国広富之)…英語が喋れないのに外交官になろうとしている猛者。偽善者。表記は「トミー」
 小島恵子(山口百恵)…自分の忌まわしい出生の秘密を知ったことから、ぐれて、「不良少女とよばれて」いたが、偶然トミーに出会い、一目惚れされたことから全ての物語が動き出す。表記は「恵子」「百恵さん」など

 小島明子(斉藤とも子)…レビューの原動力となったキャラクター。恵子の義理の妹。表記は「明子」「斉藤さん」など
 吉川真砂子(岡まゆみ)…吉川家の長女。トミーにふられる。表記は「まゆみさん」など
 吉川志津子(左幸子)…ファッションリーダー。元赤線の女で恵子の生母。表記は「幸子」など
 吉川総一郎(井川比佐志)…吉川海運社長。表記は「井川比佐志」「吉川社長」など
 吉川洋一(長谷川諭)…吉川家の長男。学習能力ゼロ。表記は「洋一」

 志摩邦夫(鈴木瑞穂)…トミーの父親。表記は「志摩局長」など
 志摩登喜(真屋順子)…トミーの母親。トミーを溺愛している。恵子の天敵。表記は「順子」など
 志摩佐智子(夏純子)…トミーの姉。このドラマでは珍しく話の分かる人。表記は「純子」など
 若杉(石橋正次)…吉川海運の航海士。正義の味方。表記は「パンチ若杉」など

 清川健夫(高橋昌也)…新日本海運専務。冷血無比の悪役。表記は「昌也」など
 大竹(阿部徹)…吉川海運の甲板長。表記は「ボースン」など

 小島泰三(小林昭二)…恵子の養父で、洋品店を経営。途中から家族揃って蒸発する。表記は「昭二」など
 小島よね(園佳也子)…恵子の養母。表記は「佳也子」など

 萩野克巳(石立鉄男)…元戦場カメラマンにして、現・幼稚園の園長。そんな奴いるかぁーっ! 恵子の良き理解者。ワカメとチー坊が好き。表記は「萩野」など
 高梨三郎(夏夕介)…哀愁漂うチンピラ。恵子につきまとう。何をやらしてもダメ。表記は「三郎」など
 ナレーター(城達也)…良い声で恵子さんの気持ちを代弁し、たまに変なことを口走る。表記は「城達也さん」など

  第15話「二人で進もう茨の道を」(1978年3月10日放送)

 斉藤さんはもう出ないけど、こうなったら最後までやるのです。

 前回、洋一に誤って刺された恵子だが、命に別状はなく、昌也の手配した病院で目を覚ます。
 トミーは、昌也に恵子は自分で転んでガードレールで脇腹を傷付けたのだと言われ、
 トミー「嘘だ。そんなこと信じませんよ」
 昌也「でしょうな、ですが、信じた方が良い。万事丸く収まるんです」
 トミー「冗談じゃない、恵子はもう僕の妻なんだ……それなのにあなたは、夫である僕にも会わせないで……一体何を企んでるんですか?」

 二人がこうやってがっちり絡むのはこれが初めてだ。言うまでもなく、のちの「不良少女〜」では親子を演じた二人である。

 老獪な昌也は、頑なに離婚届に署名するのを拒むトミーを諄々と諭す。
 一方、番組開始から既に2回人を刺した凄い奴である洋一は、恵子の病院の前でうろうろしていたが、例によって例の如く、三郎たちに見付かってしまう。
 三郎は、愛する恵子を刺したことで個人的な恨みも込めて洋一をフクロ叩きにする。

 だが、洋一を探し出してキャプチャーする能力には長けた三郎たちだが、それ以外のことは苦手のようで、折角確保したボースンに逃げられてしまう。

 かつて井川比佐志の部下だった松崎が、昌也の使いとして彼の前に現れ、吉川海運の株を、新日本海運へ譲渡してくれませんかと持ちかける。当然、井川は相手にしない。

 トミーは、両親から恵子を昌也の養子として改めて結婚し、外務省に戻るよう説得されても「いやだい、いやだい」とあくまで駄々をこねて、自分のやり方を変えようとしない。だが、さすがにトミーも八方塞で、心が揺れているようだ。
  
 洋一が帰宅する。ソファにまゆみさんが座っている。
 洋一「どうしたの電気もつけないで……母さんから連絡あった?」
 淋しそうに振り向いて、黙って首を横に振る。立ち上がって、
 まゆみ「お父さん今晩も遅いんですって、ごめんなさいお腹空いたでしょう? 何か作るわ」

 嗚呼、ワシもこんな姉さんが欲しい!(でかい声出すなっ)
  
 洋一「恨んでるだろ、憎んでるだろ、母さんのこと?」
 まゆみ「……」
 洋一「無理もないよなぁ、信夫さんとの話ぶち壊したの母さんだから。憎むのが当然だよな」
 まゆみ「憎めたらいいのに。心の底から憎むことが出来たらかえってスッキリするのに」
  
 洋一のご飯はほっといて、再びソファに座って語り始めるまゆみさん。

 まゆみ「あたし覚えているの。小さい頃体が弱くてよく熱を出したわ。そのたんびにあの人、一晩中寝ないで看病してくれた……入試の時もそうだった。朝まで私に付き合ってくれて、合格発表の日には、良かった良かったって涙をポロポロこぼしてくれた」
 洋一「姉さん、その時不合格だったんじゃ……」
 まゆみ「私のために一生懸命だった人が……分からない、私には分からない」
 洋一「ご飯まだ?」

 ほどなく、恵子は退院して昌也の家に帰るが、玄関で待ち伏せていたトミーに捕捉される。
 しつこく恵子の真意を確かめるトミーだが、恵子は洋一に刺された時、昌也に洋一のことを見逃す代わりに彼の計画に従うと約束しているので、何も話せない。ただ、離婚届に判を押せの一点張り。

 恵子「あたしはこの家の娘として、みんなに祝福されながらあなたのところへお嫁に行きたいんです」
 その後、トミーは萩野から恵子の本心は別にあると聞かされるが、その具体的な内容については自分の目と耳で確かめろと言われる。

 バカ正直なトミーは、言われるままに、渋谷方面へ繰り出して三郎の手下や、恵子の友人達に会って話を聞こうとするが、進展はない。
 母・幸子が依然として行方知れずなので、まゆみさんは警察に届けようと提案するが、何故か洋一が強硬に反対する。

 三郎たちは逃げたボースンを見付けて集団で殴りかかるが、パトカーが来たので退散する。何をやらしてもダメな三郎であった。
  
 トミー、三郎から、恵子の変心について洋一が関わっているらしいと聞いて、元婚約者の家を訪れる。

 まゆみ「今日は何の御用?」
 内心はどうあれ、丁寧に応対するまゆみさん。
 トミー「洋一君に聞きたいことがある」
 洋一「あんたに話すことなんかなんにもないよ!」
 トミー「どうしても聞きたいことがあるんだ、恵子さんのことで」
 洋一「あんたぁ、よくも平気で姉さんの前であの人のことを!」

 洋一が激昂して、タートルネックの襟を掴む。さすがに思わず俯いてしまうまゆみ。

 実際、トミーの無神経ぶりは処置なしですね。洋一の部屋に行ってから話せばいいのに。
  
 トミー「悪いのは分かってる。しかし、どうしても聞きたいんだ」
 洋一「うるさい! あんたも刺されたいか、あの人みたいに!」

 コーフンのあまり、つい口を滑らせてしまう洋一。君はバカか?

 一は慌てて家を飛び出す。トミーも後を追う。
 公園で揉み合う二人。

 洋一「はなせよう! 乳首はやめろよう!」

 言わなくても分かると思いますが、後半は管理人の妄想です。
 トミー「洋一君、本当に君があの人を……」
 洋一「ああ、刺したよ!」
 トミー「君がそんな……彼女は君の恩人じゃないか」

 洋一は、本当は昌也を刺し殺そうとしたと話し、何故恵子が憎んでいる昌也を庇うのか分からないと嘆く。
 
 洋一「女ってそういうもんなのか? 好きな男と一緒になるためなら、平気で悪魔の娘になれるものなのか?」

 核心を衝く質問に、トミーは返答できず、しょうがないのでお姉ちゃんに聞いてみた。聞くなよ。
 夏純子「なれるわよ」

 即答するお姉ちゃん。
  
 「愛する人のためにだったら、鬼にだって悪魔にだって魂を売り渡せるものなのよ。でもねえ、それは愛する人の心の支えがあって初めて出来る事なのよ……(中略)信夫さん、女が、いいえ、一人の人間が、愛する人の母親を自殺に追いやってあなた幸せになれると思ってるの?」

 姉の言葉に、見え見えの狂言自殺を図る母・順子の姿が浮かぶ。

 純子「あの人が志摩の家に入ったらどんな苦労が待ち受けているか、目に見えているわ。それでもあの人は自分から進んで茨の道を歩こうとしてるのよ。愛しているならあの人の心を分かってあげなさい」
 姉の言葉に考え込むトミー。何を言ってるのか良く分からなかったわけではない。

 結局、トミーは恵子に請われるままに、離婚届に署名捺印し、封書で恵子のところへ送る。

 離婚届だけ送ればいいのに、長文のラブレターも添付する。
 トミーの手紙「(前略)もう一度だけ僕に言わせて欲しい。愛している。愛しているからこの離婚届を君に送る。そしてもう一度今度こそ固く結ばれることを信じて、君が茨の道を歩くのなら、僕も共に歩く。君が激流に身を投げるなら僕も共に流されよう。恵子、君は僕の妻だ

 (城達也)「そろそろ、信夫に飽きてきた恵子であった」(嘘です)


 とんとん拍子に話が進み、一旦二人は離婚し、トミーはまた役所に勤め出し、トミーと恵子の結婚の準備が着々と進行する。
 志摩家の、裏切りとも呼べる行為に、井川比佐志は志摩家に怒鳴り込んでくるが、ちょうどそこへまゆみから電話があり、しかもその内容は母・幸子が自殺したらしいと言う衝撃的なものだった。

 家から叩き出したものの、そこは長年連れ添った夫婦なので、井川は死体のある病院へすっ飛んで行く。
  
 不幸のスパイラルに陥りかけている吉川家と対照的に、純白のウェディングドレスを試着している恵子。

 女性にとって一番嬉しい時間なのではないだろうか。良く知らんけど。
 もっとも、自殺したと言う幸子は、彼女の実母なんだけどね。

 幸子の生死不明のまま、「つづく」のである。

 

  第16話「偽りの華燭」(1978年3月17日放送)
 
 前回から引き続き、花嫁衣裳の試着をしている恵子。お店の人が「フェアリーみたい」と賞賛するのも頷ける美しさである。
  
 ふっと振り向くと、愛しいトミーの、神のような慈悲深い笑顔が……。
 しかし、このトミーの現れ方はやや唐突で、管理人は最初、恵子の見ている幻影かと思った。

 色々と葛藤したが、とにかく恵子と改めて結婚しようと決意したトミーにもう迷いはなかった。
 恵子のウェディングドレス姿を上から下まで嘗め回すように見詰めた後、
 「綺麗だよ。ドレスを脱いだらもっと綺麗だろうな」

 いつものように、後半は管理人の妄想です。
 そう言われ、恵子も笑顔を見せる。

 ああ、やっぱり、百恵さん綺麗だわ。
 そんな彼らとはあまりに対照的な、次のシーン。病院に、母・幸子の死体を確認しに来た井川比佐志と岡まゆみ。

 しかし、さすがに剛毅な井川も、「俺にはあれの変わり果てた姿はとても見れない」と顔を背ける。
 が、二人が帰宅すると、死体が幸子ではなかったことが分かる。
 井川「あははははぁっ、安心しろ、赤の他人だ」

 心配する洋一の顔を叩いて安心させる。

 ただ、赤の他人だからって、人一人死んだのを見た後でその笑いはちょっとどうかと思うが。
 井川「間違ってもあの志津子が自殺なんかするもんか。あいつはなぁ、踏んづけたってぶっ叩いたってそう簡単にくたばるような女じゃないんだ」

 ホッとしたせいか、いつも以上に多弁な井川。
 ま、踏んづけたりぶっ叩いたりした張本人が言ってるんだから、間違いない。
 そんな父親の様子を見ていた岡まゆみさん、
 「お父さん、やっぱりお母さんのこと、ほんとは……ほんとはとっても愛して……」
 井川「バカ言え、今度戻ってきたらもうタダじゃ済まさんぞ……何してるメシだメシだ。安心したら急に腹が減ってきた」
 まゆみさんは、嬉しそうに台所へ向かう。

 彼らの家庭の再生は、このドラマ後半のテーマの一つとなる。
 洋一は、また家を抜け出し、清川邸の恵子の元を訪れ、母・幸子のことについて手掛かりを求める。
 恵子は、「あんたがいる限り、あの人は自殺なんかしない」と勇気付けて、帰す。

 彼女にとっては異父弟なので、ついつい親身になるのだ。

 清川邸にはトミーも来ていた。
 洋一と別れた恵子がトミーのところへ来る。

 トミー「君を誤解してすまなかった。君が清川さんの養女になってももう僕たちの気持ちは同じだ。そのことにやっと気がついたよ」
 恵子「ありがとう」
 トミーは彼女の手を握り、甘えるような眼差しで熱く囁きかける。

 トミー「恵子さん、15日だよ、君は僕の……全ての人が認めてくれる僕の妻に……その日、君はあのウェディングドレスを着るんだ……そして夜に脱ぐんだ

 このシーンのトミー、妙にエロい。
 まあ、最初に結婚した夜も生殺し状態だったから、コーフンするのも分かるんだけどね。
 さて、トミーの両親は息子が外務省に復帰したので一安心。
 しかし、トミーの海外赴任のための箱根での10日間の研修が20日からあると聞いて、またよからぬことを企む真屋順子だった。
 恵子は、幸子の行方が依然分からないため、萩野のところへ行き、相談するが、
 萩野「お前があの人にしてあげられることは、あの人を忘れること、お母さんじゃないと思うことなんだ。それがあの人のためであり、お前の幸せなんだよ」

 冷たいようだが、それが最善の道かもしれない。
 その萩野に結婚する前にデートでもしておけと言われ、従う恵子。
 だが、結婚式のすぐ後に箱根の研修旅行があると、トミーは残念そうだ。

 トミー「新婚旅行はヨーロッパ行こうって言ってたのにね」
 恵子「ヨーロッパなんかいつまでも行けるわ。あたしは外交官の奥さんになるんですもの」

 恵子は別に外交官夫人になりたいわけではないだろうが、考えたら、ちょっと前まで渋谷の不良娘だったのが、あっという間に上流階級(?)の仲間入りなわけで、玉の輿以外の何物でもないな。
 恵子が冗談っぽく慰めるが、
 トミー「でも式を挙げてから五日間しか一緒に暮らせないんだよ」

 よっぽど、たまっているらしいトミー。

 トミーは、ヨーロッパは無理でも、恵子の好きなところへ新婚旅行へ行こうと話すのだが……。
 結婚式は間近に迫り、新婚生活の為に大量の家具調度が運び込まれ、それを運送屋に指図する恵子。
 だが、義母になる予定の順子に、式を20日に延ばしたいと言われ、さすがに驚く。

 順子は会場が手狭だからなんとかもっともらしいことを言うが、無論、式の直後にトミーを研修へ行かせ、恵子とセックスさせないようにするための策謀であった。

 ただねえ、いずれは結ばれるんだから、そんな意地悪の為だけにわざわざ式を日延べするとか、途轍もなく面倒なことを実際にするだろうか? もっとも、日延べに伴う手続きやら事務処理やらは、別に彼女自身でやる訳じゃないから、元華族と言う彼女なら平気でやりかねない。
 順子は形式的には頼んでいるが、実際は強要に他ならない。
 渋々恵子が応ずるのを聞いて、頬をてらてらさせながら喜色を浮かべる順子。

 (城達也)思わずその顔面に右ストレートをめりこませたくなる恵子であった。(言ってません)
 それを聞いたトミーは当然、憤慨する。
 しかし、順子は研修のことなど聞いていないと嘘をついて、逆に怒って見せる。

 だが、こういう時には頭の鋭いトミー、母親のちょっとした言葉尻から彼女の魂胆を見抜く。
 あくまでシラを切る順子。
 「お母さんのことが信じられないんですか?」
 トミー「信じられませんね」(キッパリ)

 そりゃそうだよなぁ。

 トミーはそのことで恵子と話し、志摩家を出た方が良かったなどとまた極論に走る。
 だが、恵子は偶然かもしれないと腐れ義母を庇う。
 恵子「信じましょう。お母さんを」

 トミーは「君は、君って言う人は……」と、その優しさに感動していた。
 こういう場合、相手と一緒に義母の悪口を言うのが最もNGな行為だと言うことを、恵子は(女性セブンを読んで)知っていたのだ。
 トミーは思わず恵子を抱き締める。
 「愛してる、愛してる……」
  
 一方、昌也に抱き込まれたボースンは、記者会見に臨み、吉川海運に不利な証言をする。
 ますます窮地に立たされる吉川海運だが、この辺のエピソードには興味がないので省略します。
 その記事を読んでいたまゆみさんだが、父親の帰宅する気配を感じて慌てて隠す。
 食事の支度をすると言うまゆみさんに、食欲がないと言う井川比佐志。まゆみさんの美しい顔が曇る。

 それにしても、ドラマに出てくる人って、みんな衣装持ちやねえ。
 「なんだかこの部屋はだだっぴろいなぁ」と寂しそうにソファに座る父親を、まゆみさんは健気にも明るく励ます。

 まゆみ「お父さん、肩揉みましょうか? お願い、させて!」

 嗚呼、ワシもこんな娘が欲しい!(もう分かったから……)
 さらに、
 「ねえ、あたし何したらいい? お母さんの代わりにあたしに出来ることがあったらなんでもする!」

 と、成人男性視聴者の96パーセント(当社調べ)が下品なことを思い浮かべる台詞を口にする。
 しかも、それに対し父親が、「真砂子!」と、感極まったようにその手を握るものだから、ますます……あ、お客さん帰らないで。
 井川比佐志は、娘の真心に感動しているのだ。
 井川「俺は結局お前の為に何もしてやれなかったな」
 まゆみ「いいの、あたしのことなら」

 父親の言うのは勿論、トミーとの縁談のことである。
 まゆみ「それより、今はお父さんのこと!」
 いじらしい娘の言葉に、思わず「真砂子!」と抱き寄せる井川比佐志。

 嗚呼、ワシは井川比佐志になりたい!(なれや)
 恵子さん、花嫁修業の一環として生け花を習っていた。
 お花の師匠を玄関先まで見送っていた恵子、ふと振り返ると、岡まゆみさんの険しい顔が。

 岡まゆみさん、こういう登場の仕方が多い気がする。
 美人で好みのタイプなんだが、こういう時は、ちょっと怖いです。
  
 思い詰めたまゆみさんは、恵子→信夫の父(通産省の役人)経由で、苦境にある吉川海運を助けてくれと自分からトミーを奪った相手に恥を忍んで頼みに来たのだ。

 まゆみ「志摩家の人たちはあたしになんか会ってくれないだろうし……あたしはワガママな娘です。親孝行なんか何一つしたことのない娘。でもゆうべ、初めて父の肩を揉んだの。そして初めて知ったの! 父も普通の人間なんだって……お願い、父を、父の会社を助けて。信夫さんのことはもう諦めました、素直にあなたに譲ります。だからせめて父を……」
  
 だが、恵子は「ごめんなさい」と苦しそうに言って、家の中へ駆け込む。
 振り向いた時の岡まゆみさんの表情、良いですねえ。

 恵子としては義理の姉であるまゆみさんの力になってやりたいところだろうが、今は清川の言いなりになるしかない彼女に、それは出来ない相談なのだった。

 昌也は、吉川海運がピンチになったら、必ず自分に泣きついてくると自信たっぷり。彼が恵子を養女として志摩家と縁組させたのは、結局は、その為だったのだ。

 新聞に、吉川海運の株が暴落などと言う文字が躍っているのを見て、心を痛める恵子。
  
 さて、洋一は大学の合格発表の日を迎えるが、不合格だった。
 そして、その様子を見守る母の姿が……。
 その後、洋一は大学(?)の屋上に上がり、いかにも飛び降り自殺しそうな雰囲気。
 実際、発作的に身を乗り出すが、
 一瞬で背後に現れた母・幸子に止められる。

 エスパー魔美か、お前は?(例えが古い)
  
 やっと母親に会えて、感動する洋一。
 幸子も、「ごめんなさいね、母さんもうどこにも行かない」と、家に帰ることにする。
 夫の前に手を付いて詫びる幸子を、なさぬ仲のまゆみさんが「ありがとうお母さん、帰ってきてくれたのね」と温かく迎える。感動のシーンであります。

 井川比佐志は、子供たちを下がらせた後、
 井川「オイ志津子、一発殴らせてくれるか?」
 黙って頷く妻の顔面を、グーで殴ろうとする井川比佐志。

 このドラマの場合、ほんとに殴りかねないところが怖い。

 無論、井川比佐志は、上げた手をひっこめ、幸子と初めて会ったときからの苦労を語りつつ、和解する。

 感動のシーンですが、長いのでカット。
 そして久しぶりに一杯やろうと、洋一に酒を買ってくるよう命じる。
 その洋一が家から飛び出してくると、ちょうど歩いてきた恵子と出会う。冷静に考えたら凄い偶然だ。
 洋一「母さん帰ってきた、母さん帰ってきたんだよ!」
 恵子「ほんと?」

 洋一は飛び跳ねるようにしながら向こうへ走って行く。そして車に轢かれる(轢かれません)。

 肴の支度をしていたまゆみさんと幸子。まゆみさんが皿を落として指先を切ると、
 何故か、それをちゅうちゅう吸う幸子。

 まゆみ「お母さん……」

 別に毒蛇に噛まれた訳じゃないと思うんだが……。
 で、結婚式当日。
 ケーキ入刀。

 この後、キャンドルサービス、お色直し、ビンゴゲーム、カラオケ大会、ボーリング大会、リンボーダンス、綾小路きみまろショーなど、様々な催しが行われたが、嘘である。
  
 実母の幸子は、会場の外まで来て、密かに恵子を祝福するが、振り返ると奴がいた!

 さすがにちょっとこの登場の仕方はどうかと思う。
 それに今更こんなところまで来るかぁ? 彼女の感じでは、もうトミーにさほど執着してる様子はないんだけどね。
 幸子「真砂子さん……」
 崩れ落ちるようにその場に座り込むまゆみさんを、幸子は抱きかかえるようにして帰宅する。
  
 大勢の招待客で賑わう披露宴会場と比べ、訪れるものもいない吉川家。
 井川比佐志は一緒に歌でも歌わんかと、「我は海の子〜♪」と、涙を流しながら歌う。まゆみさんも号泣しながらそれに和す。

 うぇー、まだあるのかよ。
 披露宴の後、二人だけで向き合うトミーと恵子。
 トミー「今日から君は、志摩恵子だ」
 恵子「志摩、恵子……」
 いい雰囲気になってキスしようとしたが、ちょうどそこへお邪魔虫・順子が入ってくる。
 どう考えても、廊下で盗み聞きしてたよな、こいつ。

 そして、箱根へ研修へ行く時間ですよと、追い立てるように言う。しかも、妻である恵子の存在を無視するようになにくれとトミーの世話を焼く。これからのことが思いやられて、ゾッとする恵子であった。
 その夜、トミーの両親に改めて挨拶に来る恵子。
 順子に「お母様」と呼びかけるが、順子は「これからも奥様と呼んでもらいますよ」とあからさまな隔意を見せる。
 (城達也)「あのババア、いつかぶっ殺してやる、と誓う恵子であった」(嘘だが、多分、ほんとです)

 

  第17話「父と母のいまわしい過去」(1978年3月24日放送)

 順子の卑劣な策略で、新婚ほやほやのトミーと引き裂かれた恵子、トミーの蔵書を整理していると、
 順子が早速やってきて、「あらあらなにやってるんですか。すぐに取り出せるようにしておく本、時々参考までに見る本、信夫が趣味で楽しんで読む本、信夫が夜中にこっそり読む本、あなた、信夫を愛してるとかなんとかいっていながら、そんなこともわかってないんですか」と、イヤミたらたらでいじめる。

 今だったら、家庭内殺人事件に発展しそうだが、恵子はじっと耐える。
 そこへ、義理の父である高橋昌也がやってきて、順子に彼女の主人(鈴木瑞穂)の政界進出についてあれこれとまくしたてる。トミーの父は、通産省の局長か何かなのだが、政治家になろうという野心を抱いていたのだ。以前は、井川比佐志がその資金源だったが、昌也は彼の会社を陥れ、その座を奪い取ってしまったのだ。
 昌也の話から、吉川海運の窮状を知り、恵子はたまらず実母の家に行くが、沈没した船の船員の遺族が押し掛けて来ていた。対応に苦慮する実母の姿を見て、心を痛める恵子。
 洋一と話したりして、帰るのが遅くなった恵子を、順子が例によってねちねちと追及する。恵子が正直に吉川家に行ったと答えると、
 順子「吉川の家がああいう状態になったのは、誰のせいだと思ってるんですか? 本来なら、ここにいるのは真砂子さんのはずです。それをあなたが、横合いから無理に信夫と……」

 と、ムチャクチャな言いがかりをつける。しかし、吉川海運が傾いたのは船の沈没事故が主たる原因で、そのことで恵子、あるいはライバル社の昌也を責めるのは筋違いだろう。昌也の策略のことまで、彼女が知る筈もないし。

 恵子「お母様……」
 順子「我が家の家風にも馴染んでない人から、お母様と呼ばれたくありませんわ」

 恵子「そうかい、じゃあ、これからはクソババアと呼ばせて貰うよ!」
 順子「ヒーッ」
 などと妄想したくなるほど、むかつく(別に真屋順子さんにむかついているわけではない)。

 ま、岡まゆみさん、こんな家に嫁に来なくてむしろラッキーだったんじゃないかと思う。恵子さんほどじゃないにせよ、どうせ彼女から息子を奪った憎い女だといじめられていただろう。

 順子は更に吉川家の没落は全部恵子のせいだと決め付ける。うーん、だから、トミーとまゆみさんの婚約破棄の件と、現在の会社の苦境とはどう考えても結び付かないのだが……。
 順子「あなたのような人を恥知らずと言うんですよ」
 そこまで言うか、と言うような台詞を吐いて去る。

 (城達也)「登喜(順子)の言う通りかも知れなかった。信夫への愛と引き換えに、生みの母の家を危険に追い込んだのは恵子であった」
 と、補足するようなナレが入るのだが、これもなんか違わないか? まあ、まゆみさんとトミーがあのまま結婚していたら、志摩家と吉川家の関係も強固になって、今回の海難事故も、トミーの父親が吉川海運の為に何かしてやれたかもしれないのだが……、ここまで恵子が自分の責任だと思い込むと言うのは、ちょっと納得できない。ま、恵子さんがそう思ってるんだったら、しょうがないけどね。

 ちなみに彼女のことはずっと役者名で書いてきたが、このナレーターで初めてトキ(登喜)だと知った。
 しかし、「シマ・トキ」って、なんか凄い名前だな。
  
 その吉川家の食事。井川比佐志は相変わらず強がって見せるが、子供たちはどっぷりと落ち込んでいた。やがて、まゆみさんが、この屋敷を売ろうと提案する。それで少しでも遺族にお金を……と言うことだ。
 井川は、そんな必要はないと一笑に付すが、
 まゆみ「あたしはいいのよ、どんな小さなアパートだって、お父さんたちと一緒だったら、それで良いの……」
 洋一も、予備校を辞めて働いても言いと口添えする。

 井川は、大口の仕事がまとまりそうだから安心しろと家族を勇気付ける。が……。
 恵子は、多少は話の分かる義父に思い切って吉川海運を救ってくれないかとお願いしてみる。

 背後の少し開いた扉が怖いのですが……。

 義父は、自分とは管轄が違うからとやんわりと断るが、無論、既に吉川から昌也の会社へ乗り換えているからとは言えない。などとやっていると、
 ほら来た!

 恵子のすることなすこと、すべてに干渉したがる女。
 順子「何のお話ですか?」

 気の利かない義父はべらべらと恵子の訴えを説明すると、また順子が「真砂子さんの方が良かった」などとぶつぶつ不平を叩き付ける。いたたまれなくなった恵子は、無言で退室する。

 その直後、恵子は箱根に研修に行っているトミーに電話する。
  
 無論、それを見逃すような順子ではない。
 トミーを呼び出してくれるよう、ホテルの人に頼む恵子。
 そのトミー、(まずい、こいつら僕が英語喋れる前提で話しかけてくるぞ)と、かなりピンチだったが、ちょうど恵子からの呼び出し電話で、うまいことその場から逃れることが出来た。

 なお、トミー、ここでは英語らしいことを若干喋ってます。
 もっとも、席を離れるときに、「失礼!」と日本語で断ってるんだけどね。
 だが、トミーが電話にでる前に横から順子が現れて、受話器を奪い、あたりさわりのないこと(パンツは毎日履き替えろとか)を話し、恵子と接触させない。話の途中で、恵子は諦めてそこを離れる。してやったりという顔をする順子。



 視聴者も管理人もすっかり忘れていたパンチ若杉が登場。書かなかったが、この前に一度手術をしても視力が回復せず、もう一度手術をしたのだ。
 つきっきりで若杉の世話をしている夏純子のもとへ、恵子が来ていた。今や彼女たちは義理の姉妹なのだ。
 純子「家にいるよりこっちのほうがいいでしょ。あのお母さんと一日じゅう顔つきあわせてたら、誰だってノイローゼになっちゃうわ……そうでしょ?」
 実の娘だけに、ズケズケと指摘する純子。
  
 恵子「ええ」
 恭謹な恵子も、その言葉に思わず頷いてしまう。
 純子「えっふっ、正直でよろしい」

 だが、実は、
  
 べりべりべりべり……                        恵子「おっお母さん?」
                                     順子「この耳で聞いたわよぉ、恵子さん」

 などと言う展開に、なるわけねえだろ!
 純子は若杉の目が治ったかどうか心配していた。そこへ看護婦の肩に掴まって若杉が入ってくる。純子はまたダメだったのかと失望しかけるが、看護婦が「いい加減にしなさい!」と、ネタばらしする。そう、ちゃんと彼の目は治っていたのだ。若杉の芝居であった。

 喜ぶ純子。
 恵子は、その若杉に海難事故のキーパーソンであるボースンの居場所を突き止めて欲しいと頼み、若杉は応じる。

 純子は、若杉が事故に遭ったとき、恵子が誰か見なかったかと改めて質問するが、恵子は答えない。いや、実母の幸子を見たなどと答えられるわけがない。だが、若杉がとりなしてくれる。
 その若杉、純子にねだって港へ来て、懐かしい海の匂いを嗅ぐ。
 純子「なによ、こんなヘドロのニオイ」
 若杉「ばか、俺にとっちゃあ、お袋のニオイと、おんなじだな!」
 純子「あなたのお母さん、ヘドロみたいなニオイがしたの?」
 若杉「叩き落すぞ!」
 純子「気障な男!」

 二人のやりとりもいつの間にか、すっかり親しい、恋人同士のようなものになっている。
 若杉は、恵子は幸子を見たのではないかと薄々勘付いていた。
 一方、大口の契約が取れそうだと喜んでいた井川だが、その相手から新日本海運に乗り換えたと無情の通知を受ける。忠実な腹心である大沼も会社の経営を心配する。
  
 志摩家に、トミーから電話がある。電話に出た順子は、「恵子さん? どうも昔の癖が治らないみたいで昨日も今日も出掛けてばかり、きっと昔のお友達のところで遊んでるんじゃないかしら」と、あることないこと吹き込もうとする。
 ちょうどそこへ恵子が帰ってくるが、順子はさっさと電話を切る。

 トミーの方は、車で来ている友人に車を借りて、一度東京へ戻ることにする。
 恵子は、結婚式の記念写真に写る愛しのトミーを見詰めていた。

 トミーはその恵子のもとへ向かっていたが、彼に車を貸した友人が車に私物があるのでトミーが東京へ着いたらそれを届けて欲しいと志摩家に電話する。それによって、順子は事前に、トミーがこちらへ向かってくることを知るのだが、さすがにこの辺は、ちょっと苦しいかな。
 当然、順子は、何の迷いもなく恵子を呼びつけて昌也のところへ遣いに行ってくれと頼み、彼女を家から遠ざける。どうしても、息子と恵子を会わせたくないらしい。
 一方、幸子は昌也の元を訪れ、恥も外聞もなく彼に吉川海運を救ってくれと頭を下げる。
 どんな状況でもファッションには手を抜かない幸子さん。

 だが、昌也はにべもなくはねつける。そして、どうしてそこまで吉川海運を目の仇にするのか、やっと説明する。
 小さな会社を経営していた彼の父親が吉川に対する恨みを抱いて死んだこと、ちょうどその最中に、赤線にいた幸子が恵子を生んだが、昌也は忙しくて彼女に会うこともままならず(電話ぐらい入れられるだろ?)、半年後に赤線地帯へ行ってみたら、既に幸子は行方を消していた、などと話す。

 つまり、昌也の方でも、幸子に裏切られたと思い込んで、吉川家に対する二重の恨みが発酵してきた訳なのだった。
 可愛さ余って、憎さ百倍と言う奴ですね。まあ、憎んでいた相手と、かつての恋人が結婚していたと言うありえない偶然には目をつぶろう。
 幸子は、せめて恵子が自分と昌也の娘だと信じてくれと訴えるが、
 昌也「私があなたを吉川夫人として見付けた時、私は人間を信じまいと決心した。いや、人間に信頼の心があることすら、信じまいとした。以前、恵子がいいことをいってくれました。あなたは悪魔だと。私はそれを聞いたとき、嬉しかった。これが私の答えです」

 そう話す冷酷無比な昌也だが、その目に薄っすらと涙が滲んでいた。

 幸子は結局追い払われる。
 で、ちょうどそこへ遣いに来た恵子が、その様子を目撃すると言う、いつものパターンになります。
 閉ざされた門扉に縋り付いて嗚咽する左幸子。
 事情を知らない人が通り掛かって見たら、結構怖いかもしれない。

 たまらず、恵子は「お母さん」と肩に手をやる。
 恵子「邪魔だからどいて」
 幸子は、「あなたはあたしの娘じゃないのよ」と、恵子の手を振り払う。
 恵子「お母さん……」
 幸子「死んでしまいたい、生きていくのがイヤになった」(管理人の口癖じゃないか)

 さすがに打ち続く絶望的状況に、気丈な幸子もへろへろであった。
 恵子「何を言うんですか? 今お母さんがしっかりしなくちゃ!」
 思わず勢いで励ます恵子。
 幸子「人間には何故、人を愛したり憎んだり心があるんだろう? 心さえなかったらどんなに気楽に生きて来れたか」
 ドラマならではの台詞を吐く幸子。

 さらに「あたしが生きてきたのが間違いだったんだわ」とまで言う幸子。
 それでも最後には「今まで生きてきた以上、死ねない。だってあなたや洋一を生んでしまったんですものね」

 幸子「もう二度とあたしのことなんか思い出さないでね」
 ふらふらと夜道を歩いて帰っていく幸子。

 このドラマ、と言うか大映ドラマにおいて、「二度と〜しない」と言う約束、誓い、決意が守られることはまず、ない。
 その間に、トミーが志摩家へ帰ってくる。
 恵子はどこですかと母親に尋ねても、無論、彼女が教えるわけもない。
 逆に、一週間で研修を抜け出すなんて情けないと、我が子を叱る。トミーもさすがに反省したのか、むすっとした顔で箱根へ戻ると告げる。
 と、そのトミーを引き止めて、
 「信夫さん、母さんはね、あなたのことを大事に思ってるのよ。ね、どんなに母さんあなたのことを……」

 態度を一変させて息子の胸に顔を埋める順子。
 近親相姦と言う言葉がついつい思い起こされるシーンだ。

 まあ、結局、夫婦仲も冷めている順子にすれば、息子だけが生きる希望なわけで、それをふまえると嫁の恵子に対する刺々しい態度も多少は理解できるかもしれない。
 そのトミーと入れ替わりに、恵子が帰ってくる。トミーの姿を見かけて、「信夫さーん」と駆け出すが、
 順子「待ちなさい。あなたはあの子の気持ちを挫けさせようって言うんですか。あの子はあなたの為に研修を抜け出すような子になったんですよ。それをまた引き止めようって言うんですか」
 恵子(いつか殺す)(註・絶対に管理人の妄想です)
 などとやっていると、別の車が乗り付けてきて、井川比佐志が怒鳴り込んでくる。鈴木瑞穂が、吉川海運の契約相手に圧力をかけて、新日本海運に鞍替えさせたのだと激しく指弾するが、当然、鈴木瑞穂はのらりくらりと否定する。

 思い余った井川は、プライドをかなぐり捨て、土下座までして「吉川海運を助けてください」と哀願する。
 その姿を見兼ねた恵子は、自分も手を付いて義父に井川を救ってくれるよう頼む。
 その態度を見て、順子は恵子が幸子と何か関係があるのかと前から気になっていたことを問い質す。
 順子「さ、はっきり言ってください。あなたと吉川の奥様とは一体どういう関係なんですか」
 押し黙る恵子。

 (城達也)「ひとりであった、そこに恵子の味方は誰もいなかった。いるとすれば、それはひそやかに忍び寄る、春の気配だけであった」

 城さん、何言ってるんですか?

 と言ったところで「つづく」のだった。

 

  第18話「母よ! ただ一人の母よ」(1978年3月31日放送)

 前回から引き続き、順子に幸子との関係について詰問される恵子。だが、ここはだんまりを決め込むしかない。ちょうどそこへ井川比佐志へ電話がかかってきて、彼が中座したため、何となくその場はうやむやになる。

 鈴木瑞穂は「恵子さんは吉川家に同情しているだけだろう」ととりなすが、
 順子は、是が非でも、嫁の恵子に都合の悪い事情が隠されていると言う展開を望んでいた。

 しかし、吉川海運の経営状況はますます危なくなり、新聞でそれを見た恵子は、心を痛める。
 幸子は、自分の貴金属類を取り出していた。それを売って、いくらかでも足しにしようと言うつもりなのだろう。そこへ岡まゆみさんもマイ宝石箱を抱えて入ってくる。

 幸子「あなたそんなこと心配しなくてもいいのよ」
 まゆみ「あたしのも役に立てて。新しい着物も一杯あるわ……あたしにはもう必要ないものなんです」
 幸子「真砂子さん……」
 幸子が彼女に指輪(何か思い出の品だろう)をはめてやると、
 まゆみ「お母さん!」と、体を寄せる。まゆみさん、ほんと可愛いなぁ。ただし、今回は出番これだけ。

 恵子は思い余って、萩野の幼稚園へ出向き、相談するが、例によって萩野は「お母さんのことは忘れろ」「お前は信夫君のことだけ考えていればいいんだ」「少し痩せた?」と、クソの役にも立たない助言(失礼!)をするだけ。
 萩野「恵子、幸せなんだろうな?」

 恵子「はい……」(空気読めよジジイ)

 無駄な時間を過ごしてしまったと、悄然と自宅に向かっていた恵子だが、ちょうど箱根から帰ってきたトミーを見付け、思わず走り出す。
 恵子「信夫さーん」
 がっしりと、恵子の体を抱き止めるトミー。

 トミー「一日早く帰ってきたんだ。君のことが心配で。最後の懇親会も、サボって帰ってきた」

 ダメだこいつ。

 こんな奴が、日本の外交官でいいんだろうか。……ま、いいか別に。

 「もう君を独りぼっちにしない」と言うトミーの言葉に、やっと心の安らぎを覚える恵子だった。

 しかし、玄関をくぐるなり、主人を待っていた室内犬のように、ヤツが飛んでくる。
 順子「信夫さん、あたしずっと待ってたのよ、お風呂にする?

 新妻かお前は?

 それに対する、
 トミー「母さん、僕、温泉から帰ってきたんですよ」
 と言う返しは、このドラマにおける、トミーの最も的確なツッコミであった。

 その後も、マシンガンのように喋り倒し、トミーを恵子からひっぺがして連れて行く順子。要するに彼女、ひたすら子離れができないだけの、哀れな母親なのかもしれない。
 しかし、その夜、二人きりで向かい合うトミーと恵子。

 そう言えば、結婚からだいぶ経ったけど、今夜が実質的な初夜じゃないか。

 トミー「やっと二人きりになれたね……やり、いや、会いたかったよ」
 恵子「あたしも、さみしかったわ……」
 トミー「これからよろしく頼むよ、若奥さん!」
 照れ臭さを紛らすためか、おどけた口調のトミー。
 そして、額をくっつけあい、「うっふっふっふ」と笑う。

 何が「うっふっふっふ」じゃあ!(註・管理人は独身です)

 無論、その後のわくわくハッピータイムの模様について、詳細に描くような大映ドラマではない。
 代わりに、遂に息子のちんこをにっくき嫁に奪われて、歪んだ嫉妬の炎を燃やす順子のホラー顔をぶっこんでくる。

 順子の声「信夫、あなたは今でもあたしの子よ!」
 何か、だんだん順子がかわいそうになってきたよ。
 と、思ったら、がっつりキスシーンが用意されていた。

 そして一夜が明ける。
 残念なことに、この画像以降、恵子さんは非処女になります。
 ま、どうでもいいんだけどね。
 来客があり、恵子が出ると、意外にもそれは萩野だった。実質的な初夜の翌日の恵子の顔を見たかったのだろうか。
 萩野「今日は信夫君のお母さんに話があってきたんだ」

 話と言うのは、子供たちが慕って聞かないので、恵子にまた幼稚園に手伝いに来てくれないかと言うものだった。
 恵子の存在が目障りでしょうがない順子は、掌を返すように恵比須顔になる。
 順子「あたしはとってもいいお話だと思うのよ。あなただって一日中家にいても仕方ないでしょう」
 順子「お断りしちゃダメよ。子供たちのためにも、ね」
 恵子(分かりやすい人だ……)

 恵子にとっても、年中こんな姑と同じ屋根の下にいるのは大変なので、押し切られるように承諾する。細かいことは二人で話し合ってくれと、順子は部屋を出て行く。
 で、何故か、順子はトミーの勤める外務省を訪れていた。
 順子は、喫茶店に息子を呼び出し、さっきの話をすぐ伝える。ただし、自分は反対なのに、恵子が進んで勤めたいと言い出したと、歪曲して話す。

 しかも、
 順子「どうやらその萩野って先生、未だに独身なのは、恵子さんのせいだっていってる人もいるそうよ」
 と、とんでもないことを口走る。……ま、当たらずとも言えど遠からず、と言う感じだけどね。

 トミー「そんなバカな。僕だって先生と何度もお会いしてるんですよ」
 順子「猫被ってるのよ」
 トミー「猫を被る? どうやって?」

 順子「いざ恵子さんがあなたと結婚したら、やっぱり寂しくなって、子供たちがどーのこーのって、もったいぶって、恵子さんを連れ戻しに……」
 トミー「下品な想像はよしてください。仕事中ですから」

 トミーはきっぱり言い捨てて、席を立つ。
 その夜、トミーは恵子の勤めについて賛成する。
 トミー「それにあの母さんと一日中顔を合わせなくていいし、大きなメリットじゃないか」
 恵子「信夫さん……」

 こういう時、思わず「そうよね」などと本音を漏らしてはいけません。好感度が落ちます。

 ここでも、直後にトミーが「冗談だよ」と付け加えているので、迂闊に相槌は打てませんね。
 トミー「やるからにはしっかりやるんだ。途中でつらいからやめるなんていっても、ダメだよ」
 恵子「ええ、色恋の為に外交官になる夢をポイと捨てようとした誰かさんとは違うわ」
 トミー「はっ?」
 恵子「えっ?」

 二行目以下は、管理人の妄想だが、実際、トミーにだけはそういうことは言われたくないと恵子さんちょっと思わなかっただろうか? 昨日だって、「懇親会サボってやったぜ」とか自慢げに言ってたしね。

 正解は、「はい」と、素直に頷く恵子であった。

 一方、苦境に立たされた井川比佐志は、昌也(清川専務)への怒りを滾らせていた。志摩局長(鈴木瑞穂)との不適切なつながりの証拠さえあればと、妻に漏らす。
 恵子は早速幼稚園で子供たちの相手をしていたが、そこへ左幸子がひょいと現れる。

 「もう二度と会わない」って、三、四回言ってませんでしたか、幸子さん?

 とにかく、大映ドラマの登場人物の口約束ほどあてにならないものはない。

 もっとも、自分で「もう会わないって言ったのに」と不思議そうな顔をしているが。
 恐らく、夫の漏らした言葉から、志摩と昌也の関係について恵子に探ってもらおうと思ったのだろうが、結局「忘れて忘れて」と、何も言わずに立ち去ってしまう。

 しかし、

 今度は、昌也のところへ行き、昌也と志摩との間で密会が予定されていることを聞き知り、
 またすぐ恵子のところへ来るのである。さすがにこれは……。
 娘の恵子も呆れ顔(気のせいです)。

 城達也「一度去った母の、二度目の訪問が不気味だった」

 そりゃそうだ。
 結局、幸子は恵子に縋る。
 幸子「家の船は今、にっちもさっちも行かなくなって、のっぴきならないところまで来てしまった、恵子さん、お願い、一度だけ助けて!」
 恵子「一体何をすればいいんですか?」

 幸子は、志摩局長たちの話の内容を盗み聞きして欲しいと頼むのだった。

 ただ、今更、志摩と昌也のつながりを糾弾したところで、吉川海運の窮状が消えるわけではないと思うが……。

 予定通り、志摩家に昌也たちがやってきて客間にこもる。
 その扉に近付く恵子。胸の隆起がはっきりして、乳首が透視できる気がする(とりあえず死ね)。

 内容は、志摩局長が選挙に出る際に資金を提供する、云々のような感じで、まあ、癒着と言えば言えるだろう。
 同席していた順子が部屋から出てくる気配に、素早く身を隠す恵子。

 その夜、トミーの暢気な寝顔を見ながら、どうしたものかと葛藤する恵子だった。

 翌日、萩野に相談するつもりだったようだが、生憎萩野は休みだった。で、待ち受けていた幸子に、会話の内容を教えてしまう。
 スパイのような真似をさせてごめんなさいと謝り、思わず恵子を抱き締める幸子。

 しかし、そのことをネタに志摩家に揺さぶりを掛けると、結局恵子にスパイの疑いが掛かるんじゃないかと思うが……、嫌な予感がするなぁ。
 それはそれとして仕事しなくちゃいけない恵子さん。
 お遊戯している百恵さんは、なかなか可愛いのです。
 幸子から電話で聞いた井川比佐志は志摩局長に会って、それをネタに攻める。

 のらりくらりとかわす局長だが、井川はつい「会話を聞いた証人がいる」と言ってしまう。まあ、彼はニュースソースについては知らないので、そう言ってしまったのだろうが、迂闊過ぎる。
 ヘタレの局長は、すぐ昌也に電話する。昌也は幸子に会いに来て、吉川海運に手を引いてくれないかと申し出る。幸子が断ると、何とかのひとつ覚え、「幸子が以前、風俗嬢だったこと」をネタに脅しを掛ける。

 もう、このパターン、飽き飽き。

 二人の会話を立ち聞きした洋一、母親の過去について恵子に聞きに来るが、恵子には母親を信じろと励ますことしか出来なかった。
 志摩局長は恵子が立ち聞きしたのではないかと疑い、問い質すと、恵子はあっさり認めてしまう。君はバカか?

 当然、激怒する局長。順子はむしろ、恵子がそこまで尽くす幸子との関係について知りたがるが、恵子はひたすら謝るのみ。そこへ帰ってきたトミー、両親から事情を聞かされ、恵子と話し合う。
 トミー「君の気持ちは分からないでもない。僕も真砂子さんのことを考えると、吉川家の現状には胸が痛い」

 真砂子さんについて言及していると言うことは、一応、トミー、自分が彼女との婚約解消をしたことが吉川の衰運のきっかけのひとつだという、自覚はあるようだ。
 恵子が吉川に肩入れする本当の理由について打ち明けてくれるよう諄々と掻き口説くトミーに、恵子も思わず「信夫さん、あたしは本当は……」と、打ち明けてしまいそうになるが、幸子や洋一の顔がフラッシュバックし、結局告白できない。
 「堪忍して」と叫びつつ、表へ飛び出し、街路樹に体を預け、春の雨に打たれる恵子であった。

 しかし、みんな忘れてるかもしれないが、8話の時点で、恵子が売春婦の娘だということはトミーも知ってる筈なんだけどね。トミーが幸子がその売春婦だったと知っても、特に問題はないと思うが……? うー、まあ、恵子としては幸子の為を思って、それだけは決して口外しまいと考えているのだろう、か?

 

  第19話「憎むべき男 その人は父!」(1978年4月7日放送)

 ひつこく、トミーは恵子と吉川夫人との関係を知ろうとする。
 自分にアホのように惚れ抜いているこの男になら話しても構わないだろうと考えた恵子は「信夫さん、あたし、本当は……あたしは……」と、つい全てを告白してしまいそうになるが、結局寸前で踏み止まり、「許して」とだけつぶやいて、彼の前から離れるのであった。

 通りの壁に体を預け、運命の残酷さに涙を流す恵子。
 そこへ何の脈絡もなく白い野良犬がよってきて、「くぅーんくぅーん」と甘えた鳴き声を出す。恵子は思わずワンコを抱き上げ、頭を撫でるのだった。

 と、トミーが彼女の前に現れる。うちに戻ろうと優しく話す夫に、不意に恵子は決心したように、「お話します、何もかも……」と切り出す。

 恵子「あたしが間違ってたんです」
 画面はここで少しロングになり、恵子が幸子との関係を洗いざらい喋っている様子が無音で描かれる。

 トミー「そうだったのか、君は吉川の小母様の子供だったのか。昔、赤線(発音がおかしい)に……」
 恵子「ゴメンなさい隠してて」

 彼女は自分と同じようにそのことを弟の洋一が知ったら傷付くだろうと危惧するが、トミーは無論、誰にも話さないよと誓うのだった。

 トミー「ありがとう、よく話してくれた。恵子、これから僕が君の味方だ……どんな時でも二人一緒なんだ」
 恵子「ありがとう」

 こうして二人の夫婦として絆は一層強まるのだった。
 二人がこっそり玄関から家に入ると、優秀な嫁レーダーを持つ順子が飛んでくる。

 順子「恵子さん、あなた清川さんに謝らなければいけない筈よ」
 トミー「お断りしますよ。恵子は僕の妻です。僕から言って聞かせます」
 そこへ、志摩局長と話していた昌也も現れて、
 昌也「恵子、困ったことをしてくれたね。もう一度そんなことがあると、お前を連れて帰らなきゃならなくなるよ」

 トミー「清川さん、お言葉ですが、僕はそんなことはさせません。さあ行こう恵子」

 このドラマが始まって以来、初めてトミーが凛々しく頼もしく見えた瞬間である。もう19話だけど。
 恵子、今度は小姑から小言を言われる。
 純子「随分思い切ったことやってくれたじゃなぁい? 父と業者との関係を、ライバルの吉川家に告げ口するなんて」

 もっとも彼女の場合、芯から怒っているわけではない。

 そこへ昌也がやってきて、恵子を呼び出す。改めてこれ以上バカな真似はよすんだと釘を刺し、

 昌也「母を選ぶか、信夫君との生活を選ぶか、それはお前自身が決めることだ」

 悩みの絶えない恵子だが、ちゃんと保母の仕事をこなしていた。
 そこへ、「赤い絆」のファッションリーダー、幸子がのっそりと顔を出す。

 スパイさせたことについて感謝するとともに詫びた後で、

 幸子「もう一度あたしに力を貸して頂戴。吉川がね、あなたに直接会って詳しく聞きたいって言ってるんだけど……」
 恵子「お断りします」

 いつになくきっぱりと拒絶する恵子。
 彼女にしてもつらい板ばさみの立場なので、この対応は理解できる。

 ついでに前回の彼女の嘆願について思い返してみましょう。恵子さんがうんざりするのも頷ける。
 幸子も、さすがに身勝手なお願いだと反省したのか、何度も謝りながら立ち去る。

 その代わり、吉川海運の命運を握るボースンの大竹を昌也の手から取り戻そうと、恵子はパンチ若杉に会って、彼を奪還するのに協力させてくれと頼む。
 若杉「そういやあんた、渋谷のオケイって言われてたんだもんな」

 で、ボースンとその妻が軟禁されているマンションに行き、恵子が三郎の手下に話しかけている隙に、若杉があっさり二人を助け出す。

 このボースン絡みのエピソード、ちっとも面白くないのでもっと早く切り上げて欲しかった。

 恵子はボースン夫妻をとりあえず幼稚園にかくまう。すぐ三郎たちが追いかけてくるが、ちょうど居合わせた萩野によって追い払われる。
 萩野は、恵子に対しても幼稚園をごたごたに巻き込むなと怒る。
 恵子「でも、ここしか……」
 萩野「言い訳はよせ! 俺はものすごく今、いきりたってるんだ! なぁ、恵子、いいだろう?」

 ……

 すいません、もうしません。

 正解は、
 「俺はものすごく今怒ってるんだ。なあ恵子、どうしてもっと切り捨てるべき感情を切り捨てようとしないんだ?」 でした。

 ボースンは久しぶりに吉川と会い、謝罪する。吉川は海難審判まで、会社の寮へ彼らをかくまうことにする。

 ボースンを取り戻したので、幸子は夫に、証人(恵子)と直接会うのはやめて欲しいと頼み、吉川も受け入れる。彼は別の件でさらに昌也や局長を攻めてやると、依然闘志満々であった。

 恵子はその後、義父や順子からまたあれこれと詮索され、ここでもバカ正直に幸子と会っていたなどと言わなくてもいいことまで喋ってしまう。順子は、昌也経由でボースンの件も知ってるようで、萩野と恵子が男女の関係にあるのではないかと露骨ににおわせる言い方で、チクチク彼女にイヤミを言う。

 そこへトミーが帰宅する。素早く玄関へダッシュしようとする順子に、初めて恵子が「私が行きます」と毅然と言う。
 順子「私が出ちゃいけないんですか。信夫は私の子ですよ」
 恵子「お母様、あたしは信夫さんの妻です」

 恵子の初の反撃であった。索敵能力と攻撃力は高くても、防御に回ると意外と弱い順子、言い返すことも出来ず立ち尽くすのだった。


 恵子の幼稚園に、今度は若杉が会いに来て、昌也の陰謀を突き止めるのに彼女の手を借りたいと言い出す。だが、すぐに萩野が彼女を呼びつける。
 萩野「俺は今、お前を力一杯抱き締めたいと思ってるんだ!」

 あ、間違えた。

 萩野「俺は今、お前を力一杯殴ってやりたいと思ってるんだ!」

 萩野はこれ以上、恵子にそういうことをさせたくないと諄々と説く。
 萩野「恵子、こんなこと言いたくないが、どうして今までお前を庇って来たのかわかるか?」
 恵子「下心……」
 萩野「何か言ったか?」
 恵子「いえ」
 萩野「それはお前に新しい生活をして欲しい。少しでも楽しい生活をして欲しいと思ったからこそ……」
 恵子「そうしたいと思います。でも出来ないんです。あたしには生まれた時から自分の生活なんてなかったのかもしれません
 萩野から逃げるように、子供たちのところへ戻る恵子。

 恵子はそう言ってるが、良く思い出して欲しい。彼女が出生の秘密を知ったのは、2話で描かれているように、去年の夏である。それまでは彼女、自分が養女とも知らず、明るく元気に生きていた筈なのだが……。
 養父母の小島家の存在が無かったことにされている感じがするなぁ。

 妹の斉藤さんがバタッと見えなくなるのは、どう考えても不自然である。

 さて、井川比佐志は、志摩局長を騙してバーに呼び出し、業者と彼らの癒着について話し、彼を揺さぶる。
 局長はその言葉に怖気づき、各業者との接触はおろか、昌也とも当分会いたくないと全面撤退を匂わせる。

 しかし昌也は、赤線の女の娘である恵子を嫁にしたなどと世間に知れたら志摩家に傷がつくのなんのと、逆に局長を恫喝する。彼がわざわざ恵子を養女にして嫁入りさせたのは、こういう時のための深謀だった。
 昌也と井川比佐志、両方から攻められてすっかり弱気になってしまった局長。こんな場合でも、順子の怒りの矛先は嫁である恵子にロックオンして揺るがない。

 順子「あなたがこの人を好きになったりするから!」
 トミー「僕にも恵子にも関係ないでしょう」
 局長「信夫、じゃあお前には何の責任もないと言うのか」
 トミー「父さん、大体父さんが自分の地位を利用して権力を振るおうとするからこういうことになるんじゃありませんか」
 正論をぶつけるトミー。さらに、

 トミー「役人は国民の公僕であるべきだ。それなのに日本は役人天国などと言われている。父さんのような人がいるからだ」
 さすがの温厚なパパも怒る。
 局長「プーッ、怒ったぞ」(註・言ってません)
 局長「一体どの口でそんなことが言えるんだ。お前の数々の不始末を誰が尻拭いしてきたと思っている?」
 トミー「僕は頼んだ覚えはありませんよ!」

 威張ってやがる。

 温室育ちの順子は、夫の政界進出も何もかもダメだと、簡単に絶望して涙にくれる。
 そんな姑の姿を見て、恵子は、
 (ざまあみろとか言ったらまずいだろうなぁ)と、思ってません。


 昌也は再び幸子を呼び出し、夫に手を引かせるよう頼む。昌也が洗面所に立つと、ある決意を秘めた恵子が現れる。彼女は二度と志摩家には近寄るなと迫り、用意していたナイフで彼を刺し殺そうとまでする。
 が、ちょうど居合わせた幸子が止めに入り、遂に、昌也が彼女の実父だと教えるのだった。

 

  第20話「春の朝、海へ消えた」(1978年4月14日放送)

 昌也が実の父親だと知らされ、衝撃を受ける恵子、母に「嘘でしょ! 嘘だと言って!」と縋り付くが、幸子には否定することが出来なかった。
 そんな二人を見て、昌也、「ははっははっははははははっ」と心地よげに笑い出す。

 さすがに頭がおかしいのでは?

 ま、彼は恵子が自分の娘だと完全に信じていないところもあるのだろう。
 幸子「これ以上この子を苦しめないで」
 昌也「親らしく振る舞えと言うのかね。生憎私はそんな感傷は持ち合わせていないんでね」

 冷血大王昌也は、恵子が自分の娘だと認めた上で、なおかつ恵子を吉川海運を潰す為の道具としか見ない。恵子は耐え切れず、その場を出て行く。店を出て、涙にくれる恵子だった。
 雨の降る中、萩野が幼稚園に戻ってくると、恵子がひとりで待っていた。志摩家を苦しめている昌也が自分の実父だと知ってしまった恵子は家には戻れず、結局ここを頼るしかなかったのだ。

 萩野「どうしたんだこんな時間に?」
 恵子「かぐや姫って幸せだったのかもしれませんね……竹から生まれたんでしょ」
 萩野「恵子……」
 いい加減衝撃の事実に慣れろと思うが、それでもやはり、昌也が父親だと聞かされた彼女のショックは大きく、
 「せんせい!」と叫んで、萩野の胸に飛び込む。

 これは、彼女の妹の明子の、と言うか、斉藤とも子さんの得意とする「せんせいと叫んで抱きつき」攻撃を借用したものである。

 恵子は泣きじゃくるだけで、ろくに説明もできないほど取り乱していた。
 志摩家の電話が鳴る。トミーは急いで階段を降りてくるが、タッチの差で順子に取られる。
 だが相手は恵子ではなく萩野だったので、順子は渋々トミーに取り次ぐ。
 萩野は恵子のことを簡単に話し、今夜は幼稚園に泊まらせると知らせてきたのだ。

 ピッタリ後ろについて彼らのやりとりを聞いていた順子、即座に、
 「まあなんて子でしょう。夫を放り出しておいて、別の男のところに泊まるんですか?」
 と、悪意のカタマリのような台詞を飛ばす。

 恵子がトミーと寝れば怒るし、外泊しても怒るのだった。要するに恵子が何をしようが気に食わないのね。
 恵子はとりあえず医務室で寝るらしく、そこにひとりで佇んでいた。電話をかけた萩野が戻ってくると、
 恵子「先生みたいな人が、あたしの父親だったら良かったのに」

 喜んでいいのか悲しんでいいのか咄嗟に判断できず、固まる萩野。

 恵子「分かったんです。あたしの父親が……清川健夫!」
 今度は驚きで固まる萩野。

 やっぱり石立鉄男って、良い役者だったよね。

 萩野は声を荒げて、
 「だから志摩家には帰れんと言うのか。下らん、実に下らん、どうしてお前はいつもそうなんだ。父親が誰であろうと、恵子、お前はお前じゃないか!」

 そんなこと言ったら「大映ドラマ」が成立しません。

 恵子「それは分かってます、でも」
 萩野「でも、でも、なんなんだ? 自分の血が汚れているとでも言うのか? そんなつまらんことが気になるならこっち来い、抱いてやる!」

 一応、最後の台詞は管理人の妄想です。
 萩野は洗面器のところへ彼女を引っ張っていき、右手を水(消毒液?)に漬ける。
 萩野「こいつで洗え! お前の言う汚れって奴をこいつでとことん消毒しちまえ!」
 恵子「いえ、汚れてるのは手じゃなくて血なんですけど」
 萩野「屁理屈を言うな屁理屈を!」

 じっと萩野の顔を見詰める恵子、(こういう面倒臭いところがいつまで経っても結婚できない原因なのよねえ)と思っていたが、口には出せないのだった。

 萩野(若干滑ったかなと言うような顔で)「なあ恵子、あの男が何をしようとお前には関係ないじゃないか。お前は信夫君にだけしがみついていればいいんだ。しがみついて幸せを勝ち取るんだ!」

 男にしがみついて幸せを掴めって、リブの人が聞いたら激怒しそうな台詞ですね。
 萩野「分かったら、先にシャワー浴びて来い」

 あ、(わざと)間違えた。

 萩野「分かったら、今日はゆっくり休め。明日俺が送ってってやる」
 優しく彼女の手をタオルで拭きながら言い、部屋を出て行く。

 その後、外務省周辺をうろつく昌也の腹心・松崎の姿を映す。これは後の伏線になっているのだ。
 トミー、恵子、それぞれひとりきりの夜を過ごす。トミーはオナニーしようかどうか迷っていた。
 翌朝、約束どおり萩野が恵子を連れてくる。萩野は恵子がホームシックになったと当たり障りのない言い訳をする。
 順子「ホームシックねえ」
 萩野「これで意外と甘えんぼでしてね。おセンチになったんでしょう」
 順子「でもそれならば、何もあなたのところへ行かなくても」

 そう、ほんとなら、小島家に行くべきなのだが、小島家はもうこの世界には存在していないから、行きたくても行けないのだった。

 萩野「この子も私のことを実ののように思ってくれますし……」
 さりげなく仮定の上でのサバを読む萩野だった。
 順子「兄と妹ね、ただそれだけなの恵子さん?」
 恵子「……」
 萩野「どういう意味ですか、それは」
 順子「いえね、世間じゃつまらない噂を言う人がいますのよ。萩野先生が未だに独身なのは、この子のせいじゃないかって」
 恵子「お母様!」
 萩野「これは聞き捨てなりませんな。僕の独身とこの子とどういう関係があるんですか?」
 順子「単なる噂ですわ。それともそんなに目くじらを立てなくてはならない理由でも?」
 萩野「奥さん、何が言いたいんですか?」
 さすがの萩野もムッとする。

 恵子「お母様、もしそんな噂があるんでしたらみんな私がいけないんです!」
 とりあえず、我が身を犠牲にしてこの場を収めようとする恵子だったが、

 順子「当たり前です。新婚早々、男のところに外泊するなんて、まさか赤線で生まれた血が騒ぐんじゃないでしょうね?」
 と、暴言を吐く。
 萩野「なんと言うことを仰るんですか? 恵子、いつもこんなことを言われて黙っているのか?」
 恵子「ええ、こういうのは相手にしないことにしてるんです」
 順子「えっ?」
 恵子「えっ?」

 二行目以下は例によって出鱈目だが、こうやって反撃したらさぞ気持ち良かっただろうな。

 萩野は怒ると言うより呆れて、さっさと辞去する。
 さて、こちらは吉川家。いつになく元気に井川比佐志が飛び込んできて、ゴルフに行くから用意をしろと幸子に言い付ける。彼は取引相手になりそうな会社の社長がゴルフをすると言う情報を聞きつけ、そこに割り込んで商談をまとめようと言う腹らしい。

 それにしても、シーンのたびに衣装が変わってるような気がする幸子、海難事故の前に、彼女の衣装道楽のせいで吉川海運が倒産しそうだ。
 昌也は、志摩局長の前に現れ、また彼を癒着の話に引っ張り込もうとするが、井川に脅されてすっかり去勢されてしまったのか、もうこういうことには関わりたくない、選挙にも出ないでこのまま定年まで大人しく過ごしたいと弱音を吐く。

 昌也は一応引き下がるが、去り際に「信夫君によろしく」と意味ありげな言葉を残す。

 しかし、鈴木瑞穂って、よく見ると「鬼太郎」に出てくるもんもんじい(百々爺)みたいだなぁ。
 役所の屋上で、トミーが珍しく声を荒げて、同僚らしい男をビンタしている。
 トミー「ふざけるなっ! 許せる冗談と許せない冗談があるんだ、よく覚えとけ!」

 だが、その男は「俺に当たるのはお門違いだぞ。文句があるならこれを出した奴に言え」と、
 こんな手紙を出して見せる。

 ……しかし、こんな曖昧な表現じゃ、あまり意味がなさそうだが。
 もっとどぎつく、「志摩恵子の母親は売春婦!」みたいな表現にしないと。

 そう、これは昌也の指示でさっきの松崎によってばらまかれたものなのだ。同僚がそれを見て、トミーに話したので、トミーが激怒した、と言うシーンだったのだろう。
 トミーの両親も、すぐにそのことで二人を呼び出す。
 怪文書は色んなところにばらまかれているらしい。

 順子「恵子さん、あなたどうしてくれるの? こうなったのもみんなあなたの責任ですよ」
 恵子を苛める時の順子の嬉しそうな顔といったら!

 トミー「恵子を責めるのは止めて下さい。大体こんな下らない投書をした奴が悪いんですよ!」
 当然、妻を庇うトミーだが、志摩局長は投書をしたのは昌也だろうと告げる。つまり、そのことで彼を揺さぶって、是が非でも昌也たちの吉川海運潰しに協力させようと言う作戦である。
 順子「恵子さん、あなたこの志摩家をどこまで不幸にすれば気が済むんですか?」
 恵子「……」
 順子「何とか言ったらどうなんですぅ?」

 恵子「少し黙っててくれません? 考え事してるんで」
 などと言えたらスッキリするだろうが、実際には「申し訳ありません」ととりあえず謝っておく恵子だった。
 恵子はその後、思い切って昌也に会いに行き、志摩家に関わるのはやめてくれと直訴する。

 どうでもいいが、昌也の後ろに飾ってある変な絵が気になる。

 昌也「そんな泣き落としに私が引っ掛かるとでも思うのかね」
 恵子「お父さん……」
 昌也「お父さん? よしてくれ! 確かに自分の子供が出来たと知ったとき、まだ純情だった私は飛び上がらんばかりに喜んだ。だがそれも大昔の話だよ。20年も経てば人間は変わる。今更娘だと言われても愛情なんて湧かんね!」
 恵子「でも私の中には……」
 昌也「私の血が流れているとでも言うのかね。だからといってどうと言うことはあるまい。私は私でお前はお前だ。私は私のやりたいことをやる。お前だって私が刺したければ刺せばいいんだ」
 うなだれて恵子が新日本海運の外へ出ると、また衣装チェンジした幸子が立っていた。

 幸子が恵子の動きをマークしている訳じゃないので、これは偶然としか言えない再会なのだが、「大映ドラマ」を見続けていると、この程度の偶然など、偶然のうちには入らない気がしてくる。
 で、ふきっさらしのベンチで話す二人。喫茶店行けよ。

 恵子「ほんの僅かでも私を実の娘だと思ってくれる瞬間があったなら、それに縋ってみようと」
 幸子「分かるわ、あなたの気持ち」

 幸子は昔の昌也はあんな風じゃなく、かつては人間らしい優しさを持っていたと語る。

 放送は4月だが、撮影は3月前半くらいか? しかも風が強いので見てる方が震えてくる。
 港では、吉川海運の船員達が、会社の将来や待遇などについて不平を漏らし、暴動を起こしかけていた。井川は彼らの前で座り込み、「殴って気が済むなら殴ってくれ!」と、体を張って鎮めようとする。この後、望みどおりボコボコに殴られて入院する……わけねえだろ。
 尚も若い船員が煽動するように非難の声を上げるが、井川の良き腹心・大沼が気付いて「おい、お前たち見掛けない顔だな、どこのもんだ?」と尋ねると、彼らは急に押し黙ってしまう。
 その様子を遠くから窺っていたのは三郎。そう、彼らは三郎の指示で船員たちを焚き付けていたのだ。例によって昌也〜松崎経由でその仕事を命じられていたのであろう。だが、不調に終わりそうなのを見て、舌打ちしてその場から離れようとするが、
 すぐ後ろにパンチ若杉が立っていたので、心臓が止まるほど驚くのだった。

 三郎「うわーっ、びっくりした! 脅かさないでよ、もう!」
 パンチ若杉「あ、わりぃわりぃ」

 たとえ敵同士であっても、こういう礼儀は必要だと思うんだ。

 実際は淡々と、
 パンチ若杉「てめえの子分を見殺しにするのかい?」
 三郎「うるせえ、どけ」
 パンチ若杉「イヤだといったら?」
 三郎「このヤロー!」

 取っ組み合いの喧嘩を始める二人。その隙に、三郎の手下は脱兎の如く逃げ出す。
 若杉に気付いて、井川が駆け寄る。三郎はトンズラし、若杉は尚も追いかけようとするが、
 井川「構うな、そんなザコに!」
 と、止められる。

 三郎、遂にザコに降格。まあ、これだけ失敗が続くとそれも止むを得ない。

 若杉は吉川海運を辞めた今でも、会社や社長への忠誠心を覗かせて、井川を喜ばせる。


 いつものバーで、志摩局長は昌也に会い、「信夫から手を引いてくれ」と嘆願する。当然昌也は、局長の協力を要請するが、それは自分たち新日本海運の利益の為と言うより、ひたすら吉川海運潰しが目的なのだと、その真意を吐露する。

 昌也「新日本海運がどうなろうと、私の知ったことじゃない。私の目的は吉川を再起不能なまでに叩き潰すことにあるんですよ。つまり、復讐ですよ」

 復讐さえ果たせれば、死んでも構わないとまで断じる昌也に、小心者の局長はたじろぐ。
 そこへ当の井川がやってきて、そのテーブルに盗聴マイクを仕掛けておいたと嘘を言って、局長を益々怯えさせる。

 昌也は、その後、恵子たちを別居させたらどうかと提案する。一瞬、恵子と信夫を別れさせるのかと聞こえてしまうが、これは二人が実家から出ると言う意味である。
 帰宅した局長、順子にそのことを話すが、息子を手放したくない彼女は当然反対する。
 順子「清川との縁はどうしても切れないんですか。信夫の役所にああいう手紙がばら撒かれてしまった以上、恵子を清川の養女にしておく意味などありませんわ。縁を切りましょう」

 だが、すっかり昌也に呑まれてしまった局長はひたすら弱気であった。
 局長「あの冷たい陰気な目を私は生涯忘れることできんだろう」

 順子は、「じゃ、恵子に出て行ってもらいましょう。あの人一人だけ出て行ってもらいましょう」と、鬼のような台詞を放つ。まあ、結局これが彼女の本心なのだ。昌也との関係はどうでも良くて、とにかく愛する息子から、あのぽってりした下唇の嫁を取り戻しさえすればそれで彼女の望みは達せられるのだ。
 井川は、昌也が邪魔をしようが、いざとなったら志摩局長と昌也の癒着を知る証人、つまり恵子のことだが、彼女に出てきてもらえば良いじゃないかと幸子に話し、一気にまくし立てて明日にも証人と会う段取りまで勝手に決めてしまう。幸子はただ戸惑うばかり。

 局長たちは、信夫と恵子に別居を勧めるが、トミーは頑強に反発する。しかし、恵子と二人きりで過ごせるようになるのだから、喜んで承諾しそうなものだけどね。
 トミー「父さんたちは僕たちを追っ払いたいんだ。これから清川さんとの関係を深めていくために、僕たちの存在が煙たくなったんだ」
 局長「バカな、考えすぎだ」
 トミー「そんなに僕たちが煙たいなら、父さん、あなたたちが出て行ってください」

 ムチャクチャなことを言い出すトミー。ここはパパの家だろうが。
 さすが温厚なパパも怒る。トミーはあくまで強気で、
 トミー「局長と言う地位を利用して私欲に目が眩んだお父さんに、僕が殴れますか?」
 局長「えいっ」

 あっさり殴られるトミー。おかしい、こんな筈じゃなかったのに。

 親子相克の原因は自分だと、恵子は自分を責めるが、トミーはあくまで悪いのは昌也だと、彼の自宅へ向かう。その頃、幸子も昌也の元を訪れ、恵子をこれ以上巻き込まないでくれと頼んでいた。
 トミーは、昌也に恵子との養子関係を解消してくれとストレートに要求するが、
 昌也「法務省のエリートを総動員したって、実の親子の縁を断ち切るのはできんだろうな。それとも六法全書をひっくり返せば、どこかに実の親子を親子でなくす方法でも書いてあると言うのかね?」
 トミー「……仰ってる意味が、良く分かりませんが」

 昌也「私と恵子は血の繋がる父と子だと言ったんだよ……恵子はね、私がこの吉川夫人に産ませた子供なんだ、この人が赤線にいる頃にね」

 遂に恵子の秘密をトミーにぶちまける昌也。幸子もそれを認める。

 昌也はまた、吉川社長が彼の父親の会社を裏切って乗っ取ったこと、さらに、かつて愛していた女性が、その社長夫人になっていることを知り、復讐の鬼と化したことを話す。

 タクシーで少し遅れて恵子もその場へ来合わせる。トミーはそれでも「一緒に何もかも背負って生きて行こう」と言ってくれたのだが……。

 夜の街を一人さまよう恵子。
 萩野の幼稚園のデスクには、既に10通の遺書が置いてあった。

 ……さすがに書き過ぎでは?

 4通目あたりから、「以下同文」で済ませたくなる。

 内訳は、志摩家(4)、昌也(1)、吉川家(4)、萩野(1)であった。

 こんな場合でも、小島家(3)は排除されているのが悲しい。

 恵子の声「私は皆さんの前から消えて行きます。もし、あたしの死を少しでも悲しんでくださるのなら、もう二度と、争うことはやめてください」
 遂に死を選ぶ決心をした恵子、荒々しい春の海を前にして、ひとり佇んでいた。
 そしてそのまま海の中へ進んでいく恵子。これは百恵さん本人が演じてるんだろうが、撮影は3月くらいだろうから、結構冷たかったのではないだろうか?
 凄いのは、そのまま進んで、水没してしまうこと。サブタイトル通りなのだが、女優さん本人が演じているとしたら、ちょっとやり過ぎだ。

 もっとも、大映ドラマでは入水自殺は百パーセント失敗することになっているので安心。

 この後、ますますめちゃくちゃな展開になっていくのである。

 

  第21話「巡りあった老婆の秘密」(1978年4月21日放送)

 水没した恵子のことが気にかかるが、まずは、幼稚園にいる萩野とトミーの様子から。
 大量に残された主要人物への遺書をえり分け、萩野は志摩家あての四通の手紙をトミーに手渡す。
 見詰めあう二人。

 萩野「どう思う?」

 トミー「すごく……多いです……」

 ……こういうネタだけは書きたくなかった<だったら書くな
 実際は、無言で、それぞれ自分あての遺書を開封して読むのだが、これもまたある意味凄い状況である。

 恵子の声「信夫さんごめんなさいね、でも、これしか他に方法がないの……私が死ぬことで争いをやめてくれたら、あなただけは誉めてくださいね」

 魂が抜けたような顔になるトミー。萩野への手紙にはどんなことが書いてあったのかは分からない。たぶん、末尾に「ひとり遊びはそろそろ卒業して、結婚してください」と、余計なお世話が書かれてあったと思われる。
 トミーはすぐに両親に知らせる。
 局長「自殺? ほんとか」
 順子「恵子がですか」
 局長「幼稚園に遺書があったらしい。一緒に探してくれと言ってる」(←シャレ)

 警察に行くと言うトミーに、相変わらず世間体のことばかり気にする母親にウンザリして、トミーは受話器を置く。
 トミーはひとりで探そうとするが、何しろ手掛かりがないので、どうしようもない。

 大量の遺書は萩野によって各人に抜かりなく配布される。
 実の娘の遺書を読む幸子。
 どれどれと言う感じで、吉川社長も自分宛の遺書を開く。
 どちらにも、何と書かれてあったか不明である。

 吉川「バカな娘だ」
 萩野「バカぁ?」
 吉川「そうでしょう。恵子が死んだところで事態がどう変わるものでもない」
 冷淡な吉川の言葉に、思わず立ち上がる萩野。
 萩野「恵子はですねえ、自分の命と引き換えに、あなたと清川さんの争いをやめさせようと……」
 吉川「あなた何か誤解をしてるんじゃないのか? 今度のことは清川が一方的に仕掛けてきたことなんだぞ。責任があるとすれば、清川の方だ」

 幸子が「悪いのはあたしなんです」とつぶやくと、倉皇として部屋を出て行く。
  
 幸子は直後、発作的に台所の包丁を自分の喉に突いて死のうとするが、吉川に止められる。
 ここは、珍しくところどころストップモーションになる。

 幸子「死なせて、死なせてください」
 吉川「バカなことを言うんじゃない……どうかしてるぞお前は」
 幸子「恵子、恵子……」

 しかし、赤の他人の筈の恵子の遺書を読んでこんなことをする幸子を見て、何で吉川は幸子と恵子との関係に気付かないのだろう?
 もっとも、すぐ、幸子自身がそれに言及するんだけどね。
 で、その会話を台所の近くを通りかかったまゆみさんが聞いてしまう。……まゆみさん、いつも家で何してるの?

 幸子「恵子を殺したのは私なんです。あの子は、私が殺したのも同じです」
 吉川「なにぃそりゃどういうことだ?」
 幸子「恵子は、私が生んだ子です」

 遂に決して明かしてはならない秘密を口にした幸子。この時点では、恵子が既に死んだものと思っているから、打ち明ける気になったのだろう。
 吉川「今、何と言った?」
 幸子はもう一度はっきり「恵子は私の娘です」と答える。
 さらに「何もかもお話します」と、夫に対して全てを告白する覚悟を決める。
 しかし、視聴者が知り抜いている過去の経緯についてそのまま幸子の語る様子を映しても芸がないので、ここで場面は恵子の沈んだ海へ切り替わる。
 岩場で、おばあさんが海草か何かを集めている。
 と、大写しになる恵子さんのムチムチした両脚。
  
 その姿に気付いて驚くおばあさん。案の定、恵子はしぶとくも生きていたのだ。
  
 その短いシーンを挟んで、吉川家に戻ってくるカメラ。既に、幸子はあらかたのことを話し終え、最後に志摩家をスパイしてくれたのも恵子だったと教える。

 豪気な吉川も、さすがにすぐには言葉が出ないほどショックを受けていた。

 吉川「志津子、言うことはそれだけか」
 吉川は、そう言うと、いきなり幸子の顔をひっぱたく。例によって凄惨なDVが始まるのかと思いきや、吉川は幸子を立たせ、
 吉川「俺はお前が赤線にいたことを怒ってるんじゃないんだ。清川のことだって恵子のことだって……そりゃあ、そりゃ決して許したくはないが、今はそんなことで怒ってるんじゃない!」
  
 吉川「これまで何にも話してくれなかったお前に怒ってるんだ!」

 意外にも、吉川の言葉は強い夫婦の絆を思わせる懐の深いものだった。
 その言葉に幸子も目を上げる。

 吉川「何十年一緒にやってきたと思ってるんだ俺たちは? バカヤロウ……もう、いい……忘れろと言ってるんだ。お前が恵子に済まないと言う気持ちも、お前の過去のことも全部忘れて子供たちのために働けと言ってるんだ……こんなことが子供たちに知れたらお前……」

 まゆみ「もう知ってるわ」
 このドラマにおける岡まゆみさんの登場の仕方は、心臓に悪い。
 まゆみさんは、さすがに吉川ほど冷静でいられず、
 まゆみ「ひどい人ねお母さんて! やっと分かったわ、お母さんが何故、あたしと信夫さんを結婚させまいとしたか……言い訳なんか聞きたくないの……お母さんはあたしより恵子が可愛かった。当たり前よね。あたし、ほんとのお母さんに生きてて欲しかった

 幸子にとっては身を切られるように厳しい言葉を吐いて出て行こうとするが、
 吉川「待ちなさい真砂子!」

 父親として何か、心温まる説教でもするのかと思いきや、
 「洋一には話すんじゃないぞ、あいつはまだ子供だ」
 と言う、事務的な注意をするだけだった。

 まゆみ「洋一にもこの人と同じ血が流れているのね。恵子と同じ血が……」
 と、母親への憎しみが弟にまで波及しそうな感じのまゆみさんであった。
 場面はウミネコの鳴き声が聞こえる漁村の家に移る。
 ばっちりメイクをした恵子が、布団で眠っている。
 ほどなく目が覚めて、半身を起こす。
 老婆「おや、気がついたのかい? どうだい、按配は」
 恵子「ここは、何処なんですか」
 老婆「地獄や極楽じゃないことくらいは分かるだろう」
 恵子「それじゃお婆さんが私を……」
 老婆「助けたのは私じゃないよ。海が返してくれたんだよ。まだ死ぬなってことだろうね」

 恵子はすぐにも出て行こうとするが、老婆はわざとがめつく「洗濯代」や「布団使用料」だけは払って死んでおくれよと言って、恵子にしばらく家で休むよう勧める。

 ちなみに「赤いシリーズ」いや「大映ドラマ」において、「ヒロインが自殺」→「未遂に終わる」と言うのはパターンのひとつであり、この作品の中でも既に何度か恵子は似たような目に合っている。自分は全ての作品は見ていないのだが、「赤い衝撃」にも、ほぼ同じようなシーンがあったなぁ。

 なお、前回、入水自殺は100パーセント失敗すると書いたが、「不良少女とよばれて」では、ヒロインではないが、モナリザの生母が海に身を投げて死んでるんだっけ? 他にも自殺に成功したキャラがいたかもしれない。
 恵子がぼんやりと老婆が彼女の濡れた衣服を室内に干しているのを見ていると、雑誌から切り抜いた母親の写真もまじっていた。あれから後生大事に持っていたのだろう。服以外に残っていたのはそれだけだったらしい。

 幸子を見る老婆の目に、なんとなく異様なかげろいが浮かんでいた。……嫌な予感がするなぁ。

 その頃、トミーと萩野は警察に恵子の捜索届けを出していた。
 警察署から出て、萩野はトミーに「やるべきことがあるんじゃないのか」と助言する。
 やるべきこととは、恵子の遺書に書いてあったことを現実にするため、昌也に会って復讐事業をやめてくれと頼むことだった。トミーは昌也宛の遺書を持参して昌也を訪れる。

 平然と実の娘の遺書を読み終えた昌也に、トミーは「恵子のために争いをやめてくれ」とダメモトで嘆願する。

 昌也「何度も言うようですが、私は父とか子とか、そんな感情は持ち合わせていません」
 トミー「しかしあなたは、自分の父親のことで吉川さんに復讐しようとしてるじゃありませんか」

 おっ、トミーにしては鋭いツッコミ。さすがの昌也も一瞬固まる。結局、論理的な反論が出来ないまま「復讐はやり遂げる」と強弁するしかなかったのだから、この勝負はトミーの勝ちである。

 トミーはもう一度頭を下げてまで頼むが、昌也の態度は変わらなかった。トミーは「あなたって人は人間じゃない!」と捨て台詞を残して荒々しく部屋を出て行く。

 その夜、老婆と枕を並べて寝に就こうとしていた恵子、ふと、仏壇に立ててある写真に気付く。
 恵子「この方は?」
 老婆「亭主さ、軍艦に乗ってたんだけど、戦争に持ってかれちまったよ」
 恵子「このお子さんは?」
 老婆「私の娘、この子も持ってかれちまったよ……戦争さ、戦争が全部悪いんだよ……あれは人を殺すだけじゃなく、生き残った人間まで、変えちまう」

 なんか話が妙な方へ飛んで行くなぁ。そう言うドラマじゃなかった筈だが。
 恵子、まさかその女の子が、自分の○○だとは夢にも思わないのだった。ま、大映ドラマならではの、ありえない偶然が発生中なのだから、気付かなくて当然であるが。

 翌日、老婆は洗濯代(おそらく食事代も)の分だけ働いてもらうといい、恵子を花の行商につき合わす。
 老婆「今日はね、あんたをいいとこへ連れてって上げようかね、ふぇへへへへっ」
 恵子(秘宝館かしら?)

 期待にドキがムネムネする恵子だったが、結局「いいとこ」って、どこだったんだろう?
 二人はやがて住宅街へ続く、跨線橋を越える。
 ここは、吉川家と目と鼻の先にあって、恵子は恐れるようにその場に立ち止まる。老婆もなんとなく気になる風だったが、ひとりで家々を巡って花を売って歩く。
 老婆「お花いかがですかぁ?」

 別名、押し売りとも言うが。
 ひとりその場に残り、無心に電車が通るのを見下ろしていた恵子、ふと、横を見ると、
 岡まゆみがこちらを睨んでいた。ヒーッ!

 ほんと、まゆみさんの登場の仕方って、こういうのばっかりである。
 普通だったら驚きのあまり、線路に落っこちても不思議ではないのだが、恵子はほとんど何の動揺も見せない。
 まゆみ「お芝居だったのね何もかも。残酷な人ね」
 恵子「残酷?」
 まゆみ「そうでしょう? 信夫さんがあなたを選んだ時、私負けたと思ったわ。死ぬほど悔しかったけど、諦めるしかないと思ったの……でも、あなたって人は、実の母親とぐるになって……」
 恵子「真砂子さん……!」
 まゆみ「そうよ、あたし知ってるのよ、あの人とあなたのことを何もかも知ってしまったのよ……あなたたち親子がどんなに苦労してきたか、それくらいは私にも分かるわ。でも、私はあなたを許さない。信夫さん一人を残して死のうとするなんて……いいえ、それもお芝居のひとつだったのね。だってあなたはこうして生きてるんですものね」

 しかし、幸子はともかく、恵子はつい最近まで自分が養女であることすら知らず、つつましいながらも幸せに暮らしてきたんじゃないの? まゆみさんの言い方では、ずっと前から恵子が赤線の女の娘と言う宿命を背負って苦労してきたように聞こえてしまう。もっとも、まゆみさんは、恵子がぐれる前の生活については知らないんだろうけど。
 10通もの遺書を頑張って書いたと言うのに、のうのうと生きている恵子、さすがに返す言葉もなかったが、去ろうとするまゆみさんに「待って、洋一も全てを知ってしまったんでしょうか?」とだけ訊く。

 まゆみ「洋一をこんな醜いことに巻き込むことは出来ないわ。洋一はあたしにとっても弟よ」
 洋一に関しては、僅かに優しい顔になるまゆみさんだった。

 嗚呼、ワシもこんなお姉さんが欲しい!(やかましいっ)
 さて、吉川家。幸子が恵子の遺書を読んでいると、洋一が予備校から帰ってくる。慌てて手紙を隠す母親を見て、洋一は冗談っぽく「見せてよ」と迫り、手紙を取り上げてしまう。

 洋一「あれー、これ、俺宛じゃない?」
 そう気付いた洋一、母親の制止も無視して手紙を読んでしまう。

 もっとも、その内容自体は問題ではない。恵子も、洋一を動揺させるようなことは書いていなかったのだろう。だが、恵子が何故他人の洋一に遺書を残したのか、それが問題なのだ。
  
 ちょうどそこへ帰ってきたまゆみさん、さらっと「恵子とさっき会った」と告げる。

 当然、生みの親の幸子は驚喜する。
 幸子「真砂子さん、それほんと?」
 まゆみ「どこかの花売りのおばあさんと一緒にいたわ」

 そのおばあさんこそ、○○だとは、幸子は露とも思わない。そりゃそうだ。

 蚊帳の外に置かれた洋一は苛立って、「教えてくれよ」と姉に頼むが、まゆみさんはにっこり笑って「知らないわ」と応じる。洋一は「俺だけ爪弾きってわけだな」と怒って部屋を出て行く。

 しかし、「爪弾き」って、辞書には「ある人を忌み嫌って排斥すること」とあるので、微妙にこの状況には合ってない使い方のような気がする。ま、だから浪人してるのか。
 さて、押し売り行商がうまくいったのかどうか、二人は村へ戻っていた。

 岩場にいる恵子を見て、老婆は「あんたまた飛び込むのかい?」に始まる、めちゃくちゃ長い台詞で諭す。

 要約すると、
 ・信夫さんと言う愛する人を残して死ぬのは良くない(まゆみさんとの会話を聞いていた)。
 ・恵子が死んだところで、問題が他の人に移るだけだ。

 であった。

 次のシーンでは早くも、恵子は貨物トラックの助手席に座っていた。街へ行くトラックに乗せてもらったのだろう。
 老婆、恵子が行ったあと、急に何か思い出したようにタンスの中を引っ掻き回して、ある雑誌を取り出していた。
 意外にも、それは恵子が持っていた切抜きと同じ雑誌であった。

 幸子の写真を屈託ありげに見詰める老婆……一体彼女は何者なのか?

 ま、今まで敢えて書かなかったが、老婆を演じているのは元タカラジェンヌの小夜福子さんであり、ドラマや映画にも数々の出演歴がある名優なのだから、単なる行きずりの老婆である筈がないのだけどね。

 さて、どうやって知ったのか不明だが、昌也も恵子が生きていることを知り、志摩家に教えに来る。トミーの両親は当然、安堵するより「人騒がせな」と憤る。順子がとても残念そうなのは言うまでもない。

 ただ、昌也も恵子の所在までは掴んでいなかった。トミーの両親には「手は打ってある」と明言する。
 「手」と言うのは、三郎たちチンピラを動員して、洋一をキャプチャーすることだった。

 久しぶりに追いかけられて、活き活きしている洋一。
 いい加減、反撃しろと思うのだが、結局今回も捕まる。

 三郎「あまり世話を焼かせんじゃねえよボウヤ、ええっ? おケイは何処にいる?」
 洋一「しらねえよ」

 あくまでシラを切る洋一をドツキ回す三郎。
 そこへ、「よしなさいよ!」と、凛呼とした声が飛んでくる。他でもない、恵子本人だった。
  
 恵子「あんたたち何処探してるのよ? あたしならここにいるじゃない……その子の手放してよ」
 恵子が、洋一を掴んでいるチンピラ(戦闘力5のゴミ)に命じるが、
 チンピラ「うるせんだ……」
 恵子(バシッ!)

 身の程を知らないチンピラ、恵子にビンタされて画面外へ吹っ飛ぶ。
 恵子「あんたたち相も変わらず弱い者イジメが好きなんだね」
 三郎「利いた風な口を叩くな、探す手間が省けたぜ」
  
 恵子「放してよ」(バシ!)
 三郎(戦闘力50)にも、ビンタを食らわす恵子。ちなみに恵子の戦闘力は53万です。ただし、常に手加減しているようですが。
  
 衝撃のあまり、一瞬前屈みになる三郎、数を頼んでなおも恵子を拉致しようとするが、そこへパトカーがサイレン鳴らして近付いてくる。ギョッとするチンピラたち。ちなみに最後に恵子、別のチンピラに鋭いエルボースマッシュを叩き込んでいる。
 三郎たちはさっさと逃げ出し、恵子も騒ぎになるのを恐れて洋一を連れて走り出す。
 向こうの橋の上に、やたらギャラリーが集まっている。
 で、恵子にエルボーを喰らって倒れていたチンピラだけ、警官に確保される。
 何とか逃れた二人。

 洋一「ねえ、どうして死のうとしたんだよ」
 恵子「あんたには関係ないわ」
 洋一「だったらなんで俺にまで遺書を残したんだよ」

 洋一は、自分にだけ恵子に関する秘密が隠されていると不満を漏らし、恵子に全部話してくれと頼むが、依然、恵子の返事はノーだった。

 一方、志摩家。順子はこんな不始末をしでかした嫁はもう家に入れてやらない! と鼻息を荒くする。その上、トミーには恵子が生きていることは知らさないようにしよう、などと夫まで呆れるような提案をする始末。

 が、振り向くと、
 順子「あ゛っ……」

 悪巧みをトミーにバッチリ聞かれ、恵子が生きていることがあっさりばれる。
 策士のようでありながら間が抜けていたり、こういう子供じみたことをしようとしたり、順子はやはり元華族のお嬢様育ちで、この辺は海千山千の昌也とは比べ物にならない。

 トミーは恵子の所在を尋ねるが、両親はほんとに知らないので答えようがない。トミーはわざと隠しているんだと取って、「自分で探してきます。そして二度とこのうちには戻りませんから」とまで言い捨てて飛び出して行く。
 と言っても、特にあてがあるわけもなく、困ったときの萩野だよりで、幼稚園に駆け込むトミー。
 だが、既にそこには恵子の姿があった。凝然と見詰めあう二人。
 ここは、トミーの反応として、怒るか喜ぶか二通りプランがあったと思うが、
 トミー「恵子、生きてたんだね。生きててくれたんだね」

 ここでは、後者が選ばれる。
 愛する夫に抱き付いて涙を流す恵子であった。
 萩野は、気を利かして席を外して、幼稚園の前でタバコを吸っていたが、これほどハードボイルドが似合わない俳優もいないだろう。
  
 ふと、幸子の姿を見かけ、追いかける。
 一体何パターン持ってるんだよというファッションリーダー幸子に、「奥さん、生きてましたよ、いや、生まれ変わって帰ってきたんです」と、安心させるように話しかける。
 幸子「生まれ変わって?」
 萩野「恵子は一回り大きく、強くなって帰ってきたんです」

 幸子が家に帰ると、吉川はまだ恵子を志摩局長の弱味を握る証人として利用しようとしていた。幸子はそっとしてやっておいて欲しいと頼むが、一心に会社の建て直しのことを考えている吉川は聞く耳を持たない。

 ……しかし、恵子が義父の不利になる証言をするとも思えないし、恵子の証言だけではあまり意味がないような気もするのだが。

 さて、トミー、恵子に一緒に家を出ようと自信満々で提案するが、恵子は首を横に振る。恵子は「憎しみをひとつひとつ消していくことが自分の役目だ」と言い、困難に敢えてぶつかっていく意志を示す。

 一方の志摩家では、今度は順子が家を出ると駄々をこねていた。とにかく、なにがなんでも恵子を家に入れたくはない。しかし、そうすると、愛する息子が恵子とどこかへ行ってしまう。ならば、自分さえ出ていればトミーは帰るだろうと、そう言う考えである。

 みんな、もっと大人になろうよ。
 で、順子が玄関を開けると、ちょうどそこへトミーと恵子の姿があった。

 世界一気まずい瞬間……。

 城達也「甘く花の香る夜であった」