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赤い絆 1977〜78年 メニューへ戻る
22話 23話 24話 25話
26話 27話 28話 先頭

 「赤い絆」は、1977〜78年放送の連続ドラマ。TBS「赤い」シリーズの第6弾。

 色々と複雑な出生の秘密を持つ不良少女・恵子(山口百恵)と、外交官として将来を嘱望された志摩信夫(国広富之)の純愛を描いている。

 斉藤さんは、恵子の妹・明子として登場。序盤は結構出番があったが、途中からほとんど顔を出さなくなり、後半になると「最初からいなかった」ことにされていた……。

 2013/12/04追記

 このレビュー、キャラクター名を役名と俳優名などをごちゃまぜにして表記しており、我ながら分かりにくいと思っていたので、改めて主要キャラクターについて自分なりの紹介をさせてもらう。

 志摩信夫(国広富之)…英語が喋れないのに外交官になろうとしている猛者。偽善者。表記は「トミー」
 小島恵子(山口百恵)…自分の忌まわしい出生の秘密を知ったことから、ぐれて、「不良少女とよばれて」いたが、偶然トミーに出会い、一目惚れされたことから全ての物語が動き出す。表記は「恵子」「百恵さん」など

 小島明子(斉藤とも子)…レビューの原動力となったキャラクター。恵子の義理の妹。表記は「明子」「斉藤さん」など
 吉川真砂子(岡まゆみ)…吉川家の長女。トミーにふられる。表記は「まゆみさん」など
 吉川志津子(左幸子)…ファッションリーダー。元赤線の女で恵子の生母。表記は「幸子」など
 吉川総一郎(井川比佐志)…吉川海運社長。表記は「井川比佐志」「吉川社長」など
 吉川洋一(長谷川諭)…吉川家の長男。学習能力ゼロ。表記は「洋一」

 志摩邦夫(鈴木瑞穂)…トミーの父親。表記は「志摩局長」など
 志摩登喜(真屋順子)…トミーの母親。トミーを溺愛している。恵子の天敵。表記は「順子」など
 志摩佐智子(夏純子)…トミーの姉。このドラマでは珍しく話の分かる人。表記は「純子」など
 若杉(石橋正次)…吉川海運の航海士。正義の味方。表記は「パンチ若杉」など

 清川健夫(高橋昌也)…新日本海運専務。冷血無比の悪役。表記は「昌也」など
 大竹(阿部徹)…吉川海運の甲板長。表記は「ボースン」など

 小島泰三(小林昭二)…恵子の養父で、洋品店を経営。途中から家族揃って蒸発する。表記は「昭二」など
 小島よね(園佳也子)…恵子の養母。表記は「佳也子」など

 萩野克巳(石立鉄男)…元戦場カメラマンにして、現・幼稚園の園長。そんな奴いるかぁーっ! 恵子の良き理解者。ワカメとチー坊が好き。表記は「萩野」など
 高梨三郎(夏夕介)…哀愁漂うチンピラ。恵子につきまとう。何をやらしてもダメ。表記は「三郎」など
 ナレーター(城達也)…良い声で恵子さんの気持ちを代弁し、たまに変なことを口走る。表記は「城達也さん」など

  第22話「消えた家系が今よみがえる」(1978年4月28日放送)

 前回から続きで、恵子はトミーの両親に真正面から謝罪して、もう一度嫁として待遇してくれと頼むが、天敵・真屋順子がそれを許す筈もなく、玄関から先、一歩も通そうとしない。
 もっとも男親の志摩局長は、それほど腹を立てているわけではなく、とりあえず中に入れと勧めるが、

 順子「どうしてもこの人をうちに入れると言うのなら、私は里へ帰らせて頂きます」
 誇らしげに宣言する。

 志摩局長「母さん!」

 順子は更に息子に対し、「私と恵子さんのどっちがいいの?」と究極の選択を迫る。

 それに対する局長の「大人気ないことを言うもんじゃない」と言う台詞、このドラマの全ての人に聞かせたい台詞である。
 賢い(狡いとも言う)トミーは直接それには答えず、
 トミー「恵子は僕の妻です」

 順子「そう、じゃあ、お母さんはもう必要ないのね」
 トミーの返事に落胆する順子。だからそういうことじゃないってば。

 順子は遂にそのまま玄関から外へ飛び出してしまう。そして4トントラックに轢かれ……ない。

 温厚な局長もあまりに息子べったりの妻に嫌気が差したか、「ほっとけ、どいつもこいつも恥さらしな真似ばっかりしおって!」と突き放す。
 順子は通りに出てタクシーを拾おうとしていたが、恵子が追いかけて引き止める。
 順子「手をお放しなさい。手をお放しなさいって言ってるの」
 恵子「どうしてもお帰りにならないんですか」
 順子「あなたがこの家にいる限りはね」

 恵子はしかし、志摩家を出るつもりは無いと断言し、順子は結局タクシーで実家へ帰ってしまう。

 翌朝、出勤するトミーを送った後で、志摩家に戻ってくれるよう説きに順子の実家を訪れる恵子。彼女は華族の出身なので、実家も志摩家に負けないくらい広壮な屋敷だった。だが、恵子は順子に言い含められているお手伝いに門前払いを食らい、すごすごと引き下がる。
 恵子が帰った後、お手伝いに、
 「塩まいといてちょうだい」と命じる順子。ひでー。

 さて、ほとんどの視聴者にとって興味の無い吉川海運の海難審判の日が近付いていた。

 吉川社長はしつこく、恵子に志摩局長と清川(昌也)の癒着についてその場で証言させるよう幸子を掻き口説く。幸子はこれ以上恵子を巻き込みたくないと拒絶するが、会社がつぶれたら子供たち(岡まゆみと洋一)が不幸になるんだぞと搦め手から責められ、決心が鈍る。

 致し方なく、幸子は恵子の様子を見に行く。
 あんた一体何着服持ってんだ? と突っ込みたくなるファッションリーダー幸子。
 それらの服を売れば、一家揃って3年くらいは遊んで暮らせそうだ。そう言えば、宝石を売るとかいう話があったが、結局どうなったんだろう?

 順子の実家を訪れては門前払いを食らう恵子の姿を遠くから見て、結局何も言えない。幸子がふと視線を転じると、
 岡まゆみがこっちを睨んでいた。ギャーッ!

 ここだけの話、岡まゆみさん、(トミーにふられて自殺を図ったときに)とっくに死んでいて、それ以降見えていたのはその幽霊だったと言う衝撃のオチが最終回に待っているのだ(註・待ってない)。
 その後も、恵子の日参は続き、ある時は土砂降りの雨の中、門前で立ち尽くすのだった。

 傘差したら? 風邪引くで。

 誠意を示すためと言うより、あてつけがましいだけである。
 しかも、信じがたいことにそのまま夜までずーっと立っているのだ。ま、何も食べないのは良いとして、
 順子(おしっこはどうしてるのかしら?)

 当然の疑問を抱く順子だった。

 なんか、「不良少女とよばれて」で、ほとんど同じようなシーンがあって、同じようなツッコミ入れてたなぁ俺。
 そこへ電話があって、順子はトミーが倒れたと言う知らせを受け、すぐ車で門を出る。恵子は走って車を追い掛け、病院までついてくる。……ま、途中でタクシーを拾って追跡したのだろう。
 病院へ到着した恵子。トミーの病室から順子が出てくる。
 順子「何しに来たんです? 信夫の体をこれ以上悪くするつもりですか?」
 恵子「どういう意味でしょう?」
 順子「信夫は過労だそうですよ。大方、誰かさんの自殺騒ぎやなら何やらで体の休まる暇が無かったのね」
 ここぞとばかり、極上のイヤミを言う順子。反撃開始ぃ!

 恵子にさっさと帰れと言い、トミーに会わせてもくれない。
  
 トミーは割と元気で、すぐベッドから起きようとするが、戻ってきた順子に止められる。

 順子「大人しく寝てなさい。ほんとにもう駄々っ子なんだから……やっぱりあたしがいないとダメなのねえあなたは」
 されるがまま、ベッドに横たわるトミー。口ではぶつぶつ言いながら、昔のように息子の世話を見れて嬉しくてしょうがない順子。それに、久しぶりに恵子から息子を取り戻せたんだからね。

 ただ、ここでトミーのことをマザコンだとか言うのは適切ではない。子供の世話以外にかまけるもののない半生を送ってきた順子を、優しいトミーが強く突き放せないだけなのだ。そうに違いないのだ。
 悄然と恵子が志摩家に戻ってくると、あの花売りの老婆が立っていた。
 恵子「おばあさん!」
 老婆「えっへへへへへ、あはは、今日は商売のはかが行かなくてねえ。こんなに遅くなっちまったよ。……どうしたい、その顔は?」
 老婆は恵子に花束を渡し、元気を出せと励まして去って行く。

 恵子は老婆に貰った、ちょっと萎びた感じの花束をそのままトミーの見舞いの花として再度病室へ行く。一緒に持って行ったトミーの着替えだけ渡し、今度も順子にシャットアウトされる。

 なんとしてもここでポイントを取っておきたい順子は、徹夜でトミーのそばで看病するつもりだったが、
  
 ハッと気が付くと、いつの間にか眠ってしまっていた。

 それだけならまだしも、誰かが……恵子以外に考えられないのだが、彼女に布団を被せ、トミーの枕元にはあの花束か生けてあった。そう、順子が眠っている隙に恵子が入ってきていたのだ。
 ポイントを取るつもりが、逆に敵に取られてしまって悔しい順子だったが、
 「あの子、いつの間に……」と、別に気を悪くした風もない。

 むしろ、恵子の気遣いに初めて温もりを感じたような様子であった。
 恵子はその頃、志摩局長の朝食の給仕をしていた。
 局長、若い嫁とふたりきりで、若干緊張していた。

 志摩「昨夜は少しは寝たのか」
 恵子「ええ」

 一方、幸子は思い余った挙句、夫にはっきりと恵子には証言させないと告げる。そこへ久しぶりにボースンがやってくる。吉川社長は、海難審判の際、会社に有利な証言をするよう要請するが、頑固なボースンは、事故が事件爆弾によるものなのか、そうでないのか、自分でもはっきり見ていない以上、応じられないと答える。

 吉川は激怒して、「帰れ、帰って何処へでも好きなところへ行け!」と、罵る。

 結局、吉川が頼りに出来るのは恵子の証言だけと言うことになる。彼らの会話をこっそり聞いていたまゆみさん、思い詰めた表情になる。

 ほどなく、トミーが病院から帰宅する。出迎えた恵子の前で、今度は順子が看病疲れでぶっ倒れる。
 恵子「申し訳ありません。全部あたしのせいです」
 順子「分かってるんなら、出てって頂戴」

 さっきは一瞬雪解けの予感を感じさせた順子だが、そう簡単に「良い姑」にはならない。
 どうでもいいが、こいつどさくさ紛れに志摩家に戻ってんじゃねえか。
  
 さて、吉川家の食卓。ひとりソファで酒を飲んでいた吉川社長が敗戦を覚悟したような沈んだ調子で「うみゆかば〜」と歌い出すと、思わず手を顔にやる幸子。
 その後も、疎まれながら献身的に義母を看護する恵子。
 順子「よく体が持つわね」
 恵子「丈夫なだけが取柄ですから……お背中拭きましょうか?」

 恵子の至誠に、遂に順子の目に熱い涙が浮かぶ。
 布団を被って涙を見せまいとする順子。真屋順子さんの名演であります。

 恵子も気を利かしてすぐ部屋を出て行く。
 まゆみさんは、普段は剛毅な父が弱音を吐露するのを見、思い切って恵子を訪ねる。

 まゆみ「今までさんざんひどいことを言っておきながら、今になってこんなことをとても頼みづらいんだけど、でも、頼りになるのはあなただけなんです」

 しつこく、証言してくれるよう頼むが、恵子はあくまで拒絶する。
 まゆみ「何故? あなたが志摩家の人だから?」
 恵子「それもあります」
 まゆみ「じゃあ何故あなたが知ってることをお母さんに話したの?」
 恵子「後悔しています。お互いのあらを探しあっても何一つ解決できないってことに気がつかなかったんですもの」
 まゆみ「あなた身勝手だわ。自分で火をつけておきながら、今度はひとりで良い子になって知らない顔するなんて!」

 ここは、まゆみさんの方に分があるようである。それでも、今の恵子には他の道は選べない。
  
 恵子「真砂子さん、あたし、これ以上憎しみ合う種を撒き散らしたくないんです。分かってください」
 まゆみ「いいえ、分からないわ! あなたはそれで済むかも知れないけど、うちはどうなるの? あたしたちが破滅するのがそんなに面白いの?」

 まゆみさん、もう恵子には頼らず自分の力で何とかすると走り出す。
 で、他のキャラのように、「昌也詣で」をする。しかし、エリ、尖ってますね。
 無論、そんなことで昌也の復讐心は矛を収めようとはしない。

 これが時代劇だったら、「ほう、ならばその方の体で償って貰おうか、ふひひひひ」と言う展開になるのだが、あいにく昌也は悪人だけど真面目なので、間違っても岡まゆみさんがエッチな目には遭うことはないのだった。

 昌也はかつて吉川社長が自分の父親にした仕打ちを具体的に話す。

 要約すると、

 ・吉川が昌也の父親の会社を乗っ取った。
 ・昌也の父親の会社の再建をかけた船の積荷を吉川がすりかえさせた。
 ・吉川は昌也の父親の窮状につけこみ、残った持ち船をタダ同然で買い叩いた。
 ・昌也の父親は自殺。母親もすぐ病死。
 ・吉川は昌也の父親の葬儀には顔も出さなかった。

 積荷のすりかえというのは、まさに昌也が吉川海運に対して仕掛けた罠で、それにはこういう意味があったのだ。
 また、昌也の父親が死んだ日と、まゆみさんの誕生日が同じであった。昌也は、まゆみさんの妊娠を知った吉川が、焦って強引な手を打ったのではないかと、あたかもまゆみさんにも原因があるようなことを言い添える。

 まゆみさんはショックを受け、涙ぐみながら昌也の前から飛び出す。そして4トントラックに轢かれ……ない。
 ふらふらと街中を歩いていると、
 忘れた頃に出てくるゴキブリのように彼女の前に立つ三郎たち。

 言葉たくみにまゆみさんを人気のない暗がりへ連れ込むが、
  
 三郎「またあんたかい、いいところになると邪魔しに来るんだから」
 昌也の懐刀にして、昌也に残った僅かな良心の象徴とも呼べる松崎が待ち構えていた。

 松崎「その人をどうするつもりだ」
 三郎「別に。気分が悪そうだったから、少し休ませてやろうと思っただけだ」
 今まで何度も失敗してきた三郎、今回は是非、「本懐」を遂げたいところだったが、松崎から金を渡され、あっさりと引き下がる。チンピラにしても、あまりに大人し過ぎるんだよなぁ。
 松崎は、彼らに金(月々の手当て)を渡すため、彼らの近くにいたのだろうか?

 ショックのあまり周囲のことに関心がなく、顔を伏せているまゆみさんが可愛いのじゃい。
 松崎「お嬢さん、私のこと覚えてますか」
 松崎の言葉に顔を上げるまゆみさん。
 松崎「松崎です。以前、吉川海運に……」

 だが、言葉の途中でいきなり立ち上がるまゆみさん。
 まゆみ「嫌! もう嫌! 何もかも、嫌ーっ!」

 パニくった様子で、再び表へ飛び出す。そして6トントラックに轢かれ……ない。

 と、しつこくボケていたら、
  
 キキキキキーッ!

 運転手「バカヤロウ、気を付けろ!」
 と、ほんとに轢かれそうになる奇跡が起こる。

 ちなみにそこは萩野の幼稚園の近くであった。騒ぎに気付いて窓を開ける萩野。
 恵子「真砂子さん……」
 しかも、そこには偶然、恵子もいたのだった。まだ保母さんをやっているのだろうか?
 路上にへたりこんでいたまゆみさんを、二人は事務室へ連れてくる。

 萩野「そうか、そんなひどい話を」
 まゆみ「死にたい、あたし死んでしまいたい……」
 かつてないほどのダメージを受け、そんな言葉まで口にするまゆみさん。

 萩野「バカなことを考えるんじゃない」
 まゆみ(ドンと机を叩き)「だって生きてたって何があるっていうのよ! 父までが……汚い、みんな汚いわ」
 恵子「真砂子さん……」
 まゆみ「そうよ、あなたがお母さんのことで苦しんでいたように、これからはあたし、父のことで苦しまなきゃならないのよ。……嫌よ、あたし、そんな毎日に耐えられない……」
 嗚咽混じりに叫ぶまゆみさん。
 まゆみ「お互いに、ひどい親を持ったものね。人殺しと同じような真似をしてのし上がってきた父親と、今度はその父親を苦しめ陥れようとしているあなたの父親……あなたの本当のお母さんも」
  
 見兼ねた萩野が「やめろ! 今更そんなこと言って何になるんだ」と諭すが、

 まゆみ「そうよ! 何にもなりゃしないわ! だからあたし死ぬの。生きてたってしょうがないわ!」
 そのまま、また飛び出そうとするが、恵子が腕を取って引き止める。
 まゆみ「放して、あなたには信夫さんがいるわ。……私には誰もいない」

 まゆみさんの痛切な言葉に、恵子は言葉を失う。

 城達也「何よりもつらい言葉であった。一瞬、あの朝の記憶が恵子の脳裏に鮮やかに浮かび上がった」
 ナレーターと共に、遙か昔の、1話の序盤のシーンが回想される。ズタボロになった恵子を、トミーが見掛けて介抱するシーンである。懐かしい。

 結果的に、まゆみさんからトミーを奪ったのは事実なのだから、恵子としてはかなり気まずいのであった。
 無論、今更「返品します」とも言えず、かわりに「本当に父親を憎むことが出来るの?」と、まゆみさんの気持ちを見詰め直させる。
 まゆみさんは、父親との温かい思い出を少しだけ反芻する。
 恵子は自分たちに出来るのはそれぞれの父親の憎しみを消していくことじゃないかと言い、差し当たり、まゆみさんは自殺を思い止まる。

 もっとも、つい最近自殺未遂をした恵子に言われても、今ひとつ説得力に欠けるのだが……。

 まゆみさんが帰宅すると、ちょうど幸子が志摩家に電話をして恵子と話そうとしていた。そこでは久保と言う偽名を名乗っていたが、それは彼女の旧姓らしい。
 何故かカッとなったまゆみさん、恵子とのやりとりなどすっかり忘れて、「そんなに血を分けた実の娘に会いたいのなら、会いに行けば?」と、大声で罵る。ところが、ちょうどそれを洋一が聞いてしまい、血相変えて追及する。

 洋一「血を分けた実の娘って誰なんだよっ?」
 まゆみ(いい加減面倒臭いわねえ……)←管理人の創作です。が……

 まゆみさん、ほんとに面倒になったのか、恵子が幸子の娘だとばらしてしまう。
 必要以上に愕然とする洋一。

 その後、志摩家に戻った恵子に、トミーが「吉川の奥さんらしい声で久保と名乗って電話があったよ」と話していると、再び幸子から電話があり、切れ切れの声で「お願い、洋一を探して」と恵子に訴える。
 何だかよく分からないまま、洋一を探しに久しぶりに勇気ある街頭ロケを敢行する百恵さん。通行人の視線を独り占め。

 ただ、何の手掛かりも無く、洋一の姿は杳として知れない。……まあ、見付かる時は実に簡単に見付かるんだけどね。
 恵子が無力感に苛まれ、あるお寺の前で休んでいると、偶然、例の押し売り、いや行商の老婆に出会う。

 偶然にも程があるだろ。一応、突っ込んでおく。

 老婆は連れ合いの墓参りに来ていたらしいが、娘の方は生きていたと謎めいた言葉を口にする。恵子に「死ぬんじゃないよ」と繰り返し、帰っていく。
 恐ろしいことに、山門の横に洋一がいて、二人の会話を聞いていたのである!

 最早、どれだけ突っ込んでも無駄か……。管理人も、無力感に苛まれている。

 恵子はなんとはなしに墓地に入り、老婆が参っていた墓を見付ける。供えたばかりの花で見当をつけたのだろうが、それには「久保家」と刻んであった。
 恵子は直前にトミーから聞いた久保と言う苗字を思い起こして怪訝な顔をする。そして、側面を見ると、

 「久保志津子」

 と言う名前が見えた。

 城達也「母の名であった。紛れもない母の墓銘碑がそこにあった」

 そう、つまり、あの老婆が幸子の母親だったのだ!
 何と言う衝撃の事実! ……もう何でも好きにしてくれ。

 もっとも、この時点では、同姓同名の可能性もあり、恵子もはっきりそうだと悟った訳ではないが。
 だが、このドラマ、これからますますとんでもない方向へ転がっていくのである。ふふふふ(ヤケクソ)。

 

  第23話「運命の祖母、母、娘」(1978年5月5日放送)

 あの老婆が自分の祖母ではないかと考えている恵子の前に、今度は異父弟の洋一が現れる。
 洋一「姉さん、姉さんだったんだね」
 恵子「……」
 洋一「俺の姉さんだったんだね」
 恵子「洋一」
 洋一「だから俺のこと庇ってくれたり、母さんと親しくしたり、俺の身代わりになって罪を引き受けたり……」
 感極まった洋一、しっかりと恵子に抱き付く。ただ、長谷川諭さん、相手が天下の百恵さんだからか、やや遠慮気味に彼女の体を抱いているように見える。
 洋一は恵子の過去や父親、あるいは母親の昔のことを根掘り葉掘り聞いてきて、恵子を困らせる。恵子が答えてくれないので、洋一は喚き散らしながら走り去って行く。

 吉川家では、その洋一について家族会議を開いていた。父親が「例のこと」すなわち、幸子が風俗嬢だったことさえ隠し通せれば良いと話していると、
 その洋一が飛び込んでくる。
 洋一「例のことってなんだよ、一体何を隠してんだよ! 今ここで分かるように話してくれよ!」

 三人(めんどくせえ奴……)

 吉川は笑って誤魔化そうとするが、洋一は引き下がらない。
 吉川「お前は父さんたちが信用できないのか」
 洋一「出来ないね、あんたたちなんかもう家族と思わないよ!」
 吉川「お前いい加減にしろ!」
 洋一の言葉に思わず顔面パンチをお見舞いする吉川。スカッとするね。
 恵子、順子の髪を整えてやっていたが、
 順子「どうしたんです、元気がないようだけど。顔色が悪いようねえ、少し休んだらどう?」
 と、以前とはまるで別人のように優しい言葉を掛けられる。

 恵子は順子の好きなイチゴを買ってくると、買い物籠をぶら下げて家を出る。順子も、天気が良いからと散歩に出る。
 恵子の前に、幸子が現れ、洋一に彼女の過去を話さないで欲しいと念を入れる。恵子はその機会を捉えて祖母、つまり幸子の母親について聞こうとしたが、
 順子「恵子さん! こういうことだったのね。何がお母様の好きなイチゴを買ってくる、です。みんな吉川さんに会うための口実だったのね」

 全米を震撼させた、あのパワフルな順子が帰ってきたーっ!

 やっぱりこうでなくちゃね。

 順子は前々から気になっていた恵子との関係を幸子に問い質す。無論、幸子の反応はいつもと同じでのらりくらりとかわすばかり。だが、今度の順子は簡単に引き下がらず、強引に幸子を家まで引っ張って行く。
 応接室で対座する両雄。
 幸子「奥様、わたくし、奥様に申し上げることなんにもございませんのですのよ」がひとつ多い
 順子「じゃあ何故この子は志摩家を裏切ってまで、あなたの役に立とうとするんでしょ?」
 幸子「……」
 順子「何故お答えにならないんです。奥様には人に言えないような疚しいことがおありになるんですね」
 恵子「お母様、もうやめて下さい……」
 順子「あなた、お黙んなさい」
 ピシャリと言われて、(やっぱりいつか殺す)と誓う恵子であったが、管理人の妄想である。

 その後、幸子が自分の身元について口頭で説明する流れになる。これもやや強引で不自然だが、これが終盤のとんでもない展開に繋がるのだ。
 順子「どちらでお生まれになったんですの?」
 幸子「東京、深川でございます」
 順子「ご両親は?」
 幸子「父は久保康夫、海軍軍人でした。母は貞子です」
 順子「戦災孤児だったんでしょう、奥様?」
 幸子「誰も好きこのんでそうなった訳ではありません。父は戦死し、母とは空襲で離れ離れになったんです」
 順子「さぞかし大変だったでしょうね」
 幸子「随分苦労致しました。でもね、奥様、あたくしその苦労は今になってとても良かったことだと思っておりますの。苦労しないでお育ちになった方と言うと、なんて言いましょうか、おっほほ、つまらないことで人を疑ってみたり、嫁いびりをしたり、世間にそう言う方いらっしゃいますわねえ
 ここで、幸子、華族の出でお嬢様育ちの順子へ、痛烈なあてこすりを言って反撃する。
 実際、恵子はともかく、現時点では志摩家と何の関係もない幸子が昔のことをとやかく聞かれるいわれは全然ないんだけどね。幸子が一矢報いた気持ちは理解できる。

 もっとも順子はさほど感情を乱さず、
 「吉川さん、ひょっとしたら恵子さんとあなたは……」と核心に迫りそうになる。

 順子は調べれば分かることだと、会見を打ち切る。

 その後、恵子はトミーに花売りの老婆が自分の祖母ではないかと話す。
 翌日、恵子が幼稚園で働いていると、その老婆が門の所から幼稚園をうかがっていた。恵子は単刀直入に、自分の祖母ではないかと尋ねるが、老婆は頑強に否定する。自分の名前が久保貞子だとは認めたが、あくまで人違いだと。
 恵子はそのことを萩野に話す。
 萩野は、自分がいずれ調べてやろうと請け負った上で、
 「本当のおばあちゃんだったら、うんと甘えさして貰え。お前は甘えると言うことを知らずに育ったんだから」

 ……と言うのだが、
 この二人の存在は……?
 恵子は赤ん坊の頃から、この二人に慈しみ育てられてきた筈なのだが。

 さて、いよいよ海難審判が始まるが、誰も興味ねえよ。
 吉川は、始まったばかりなのに既に白旗を上げていた。バカ正直なボースンの証言では、彼らに勝ち目はないと言う。結局、吉川は志摩局長と昌也の汚職に食らいつくしかない。で、これでもう何度目だ、と言う感じだが、恵子に証言してくれるよう幸子に頼むのだった。

 しかし、事故の賠償などでいずれ吉川が潰れるとしたら、いくら新日本海運を追及したところで無意味だろうに。
 そもそも、恵子の証言だけでは証拠にならず、どう考えでも望み薄だよなぁ。吉川がこの線に執着するのは、ドラマとしては必要かもしれないが、かなり不自然である。
 無論、幸子の返事もいつもと同じで「NO」だった。

 恵子の幼稚園に洋一が顔を出す。無言で走り去ってしまった洋一を、恵子は追い掛ける。
 久しぶりに大胆な街頭ロケが敢行される。みんなガンガン見る。そりゃ、山口百恵が目の前走ってたら、見るわな。
 その洋一、思い余って天敵・三郎に恵子の母親について聞いていた。
 三郎「おケイのお袋はなぁ、昔、赤線ってとこにいたんだよ。女が体を売って商売するところだよ」
 あっさり教えてあげる親切な三郎。

 しかし、なんで三郎はそんなこと知ってたのだろう? 恵子がぐれていた時に、彼女から聞いたのか?
 洋一は当然取り乱し、「デタラメ言うなよーっ」と三郎につかみかかるが、三郎と手下たちにフクロ叩きにされる。
 その騒ぎを見て驚く貞子。……って、なんであんたがここにいんのよ?

 恵子、三郎の手下たちが慌てて走ってくるのを見掛ける。最後に三郎が来たので洋一のことを尋ねる。三郎は幸子のことを教えてやったと話す。恵子は洋一を捜しに行くが、三郎に「あいつならパクられたよ」と言われる。
 三郎の言うとおり、洋一はパトカーの中にいた。多分、三郎との乱闘騒ぎで彼だけ逃げ遅れたのだろう。
 もっとも、恵子が警察署に行くと、既に解放されていた。意外なことに、貞子が付き添っていた。
 貞子「わたしが身元引受人と言うことで、許して貰ったのさ」
 恵子「ありがとう、おばあさん……」

 だが、洋一は家には帰りたくないと暴れる。恵子は洋一を引っ叩いた上で、貞子の言葉に甘えてしばらく彼女に預って貰うことにする。
 恵子「お願いします。離れて暮らしてみれば母親ってかけがえのないものだって分かると思うんです」
 頭を下げる恵子。
 貞子「あんたはいつもそうやって、人の為に頭を下げてるみたいだねえ」

 ところで、幸子の役名は、志津子なのだが、ホラー小説の「リング」の貞子も、母親の名前が志津子だったよな。こっちが先なんだけど、単なる偶然かな。
  
 恵子は幸子にそのことを知らせに行く。
 幸子「どういうことなの、どうして洋一がその、花売りのおばあちゃんのところへ?」
 恵子「洋一、お母さんが何処であたしを産んだのか知ってしまったんです……」
 幸子「えっ……え、ほんと? ああ、あの子があたしの全部を……全部を知ってしまった。あたしから離れていく……」
 ショックを隠せない幸子。
 恵子「お母さん、洋一はお母さんのところに帰ってきます。あの子が自分の意思で帰ってくるまで待ちましょう」
 幸子「でも、自分の知らない人と一緒に住むなんて、ああ、とても耐えられない……お願い」
 幸子は洋一を今すぐ連れて帰るよう頼もうとするが、
 恵子「お母さん、そのおばあさんの名前はね、久保貞子って言うの……久保貞子って……」
 恵子は思い切って老婆の名前を教える。相手の反応を確かめず、恵子はそのまま走り去ってしまう。

 幸子「久保貞子……クボサダ……」
 幸子は、その名を口の中で繰り返す。
  
 その洋一、貞子の住む漁村に来ていた。
 海に向かって駆け出す洋一を、貞子が追いかけてきて、
 貞子「こらっ待ちなさいって言うのに、こらっ、なんで働くのはイヤなんだね?

 全国のニートが震え上がる悪魔の質問をさらりとぶつける貞子。

 貞子「折角組合長さんに話して、仕事を世話して貰ったって言うのに!」
 洋一「あんたになんか話したってわかんないよ!」
 この難局を、洋一は「青春のフレーズ」で切り抜けようとする。が……、

 貞子「ああ分かんないね、自分の母親が赤線の女だったからって、それで働かなくたって良いって言う理由にはならないよ」
 年寄りにそんな理屈は通用しなかった。
 貞子は敵に塩を送るように、質問の角度を変える。
 貞子「第一、赤線ってところがあんたの年で分かるのかね?」
 洋一「薄汚いとこだよ。人間のクズが集まるところだよ!」

 貞子「ああ、そうさ、だけど、誰が好きこのんでそんなところで働くね? そこまで来るにはそれ相当の苦労や悲しみを背負ってきてるんだよ!」
 洋一「そこまで堕ちるくらいなら、死ねばいいんだよ!」
 相手が幸子や恵子だったら確実にぶん殴られるであろう無神経な台詞を吐くが、貞子はあくまで冷静で、
 貞子「人間、そう簡単に死ねるかね?」
 洋一「ああ死ねるよ、なんなら今死んでやるよ!」
 そう叫ぶと、再び走り出す洋一。お前は走る以外の移動方法を知らんのか? たまには歩けよ。
 次のシーンでは、モータボートに乗って海へ出ている洋一。
 嘘でも吉川海運の御曹司なのだから、モータボートの操縦くらい出来てもおかしくない……と言うことにしよう。
 貞子も、若い衆に頼んで別の船で追いかけるが、洋一は沖に出ると、海に飛び込んでしまう。
 ハッと息を呑む貞子。
 だが、すぐに貞子たちの船にすがりつく洋一。へぼーい。

 この際、若い衆も「おらおら、てめえ死にたいんだろうが」と這い上がろうとする洋一を海に蹴落としてやれば、良いクスリになっていただろうに。
  
 ……と思ったら、貞子自身がしっかりと洋一を突き飛ばしていた。

 必死に浮き上がろうとする洋一の頭を何度も押さえ付ける貞子。
 次のシーンでは、洋一は貞子の家で布団に寝かされていた。目を覚ました洋一、すぐに半身を起こす。
 貞子「どうだい、死に切れなかった感想は?」


 洋一「感想は、じゃねえよ。てめえさっきはよくも殺そうとしやがったな!!」
 激怒した洋一、貞子の首を絞めて殺してしまう。その後、正気に返ると、庭にあった井戸にその死体を落とし、逃亡。
 貞子の死体は誰にも見付けられず20年が過ぎ、やがてその土地にはペンションが建てられる。ある日4人の若者たちが宿泊し、一本のビデオテープを見付ける。それには井戸の底に眠る貞子の呪いが……って、おい、何の話だ?



 貞子「さっきあんたは何度も船べりにしがみついて生きようとしていたね。もしあの船べりが泥で出来ていてもあんたは多分、しがみついただろうね。そうは思わないかい」
 洋一「母さんもおんなじだって言いたいのかよ」
 貞子「それはあんたが考えることさ」
 貞子は買ってきたと言う着替えを渡し、小さな庭に洋一の濡れたズボンを干す。それを見ていた洋一、ガバッと起き上がり、すぐに寝間着を脱ぐ。
 貞子「何処行くんだい?」
 洋一「組合長のとこへ行けば仕事あるんだろ? 服代くらい稼いでやるよ」
 急に真人間になって、出掛けて行く洋一。次のシーンでは繋留された船のデッキをブラシで洗っていた(時給120円)。
 貞子の家へ萩野がふらっとやってくる。恵子に約束したとおり、貞子のことを調べに来たのだ。わざわざその為に千葉まで来た訳ではなく、他の用事のついでである。
 ワカメ好き好き萩野、貞子の家の前に吊ってあるワカメを見て、「おおっ」と目を輝かせる。
 だが、家の前には先客が立っていた。そう、幸子である。黒一色の衣装に身を包み、表札の「久保貞子」と言う文字を潤んだ瞳で見詰めている。恵子から住所は聞いてあったのだろう。

 意を決して「ごめんください」と声を掛けると、「はいはい、今開けますよ」と軽い感じで声が返って来る。
 生き別れの母と再会できるかもしれないと、そわそわする幸子、思わず背中を向けてしまう。
 ガラガラと戸を開けて貞子が顔を出す。
  
 振り向いた幸子(ほんとは志津子だけど)の顔を見て、貞子はハッとする。
 しばらく無言で見詰め合う二人。船のエンジン音が遠く聞こえる……。

 貞子はしかし、顔を背けて家の中に戻ろうとする。その背中に、幸子の掠れた歌声が……懐かしい子守唄を歌う声が届く。
 「〜なかずにねんねいたしましょう〜はしたのあさにははまにでてぇ〜か、へる……」

 音痴だった……。

 幸子「庭にはいっぱい花が咲いてた! お母様が小さな庭に丹精込めて……水仙、芍薬、牡丹、山吹の花!」
  
 幸子の言葉に合わせて、美しい花々が映し出されるが、そこへ空襲によると思われる爆弾が落ち、可憐な花々を吹き飛ばす。なかなか強烈な映像である。
  
 それに実際の記録映像が続く。

 城達也「昭和20年3月10日未明、約300機の米軍爆撃機は東京下町一帯に対して激しい焼夷弾攻撃を行った。罹災者概数百万余、消失家屋25万戸、死者10万、重軽傷4万の大惨事となった。いわゆる東京大空襲がこれである」

 映像に被せて、幼い頃の幸子であろうか、小さな女の子の「おかあさーん」と呼ぶ声がする。「志津子ーっ」と言う貞子の悲痛な叫び声も。

 幸子は改まった様子で一礼する。
 幸子「お母様、お久しぶりでございました……志津子です、お母様……30年以上経ってるって言うのにあたし分かる、お母様はちっとも変わってらっしゃらない」
 幸子があれこれと思い出話を語るのを貞子は横を向いて聞いていたが、
 貞子「あたしには志津子なんて娘はいないよ」
 幸子「お母様……!」
 貞子「誰かと間違えてるんじゃないのかい?」
 耐えられなくなったように、貞子は家の中に入り、戸を閉ざす。
 幸子「お母様……、お母様……」
 幸子は涙を流しながら、立ち去る。

 しかし、幸子さん、生き別れの娘と再会したかと思えば、今度は生き別れの母親と再会か。それに、元恋人の昌也とも再会してるんだよな。しかもせいぜい半年の間に。いくらなんでも再会のし過ぎであろう。

 しかも、恐ろしいことに、この後、また別の再会が待っているのだ。
 冷たく突き放した貞子も、無論、苦しんでいた。
 貞子「許して、許しておくれ志津子、ううううっ……」
 手拭を顔に当て、号泣する。彼女には母親だと名乗れない事情が……あったんだっけ?
  
 やがて、人の気配を感じて顔を起こし、庭に目をやると、萩野が立っていた。
 貞子「誰だい、あんた」
 萩野「やっぱりあなたが恵子のお祖母ちゃんですね」
 貞子「うう、何の話だい?」
 萩野「隠そうとなすっても無駄です。その涙が何よりの証拠です。私は決して怪しい者ではありません。恵子が勤めている幼稚園の園長をしている萩野と言うものです。以前は戦場カメラマンでした
 貞子「十分怪しいわいっ」
 ※赤字部分は管理人の妄想です。

 萩野は名乗れない理由を聞くが、貞子は「ほっといてください」と強くかぶりを振る。そりゃ、初対面の人間にそんなこと話す奴はいないよね。
 それでも貞子は「わたしは志津子からどんな罰を受けても受けたりない女なんです。名乗り出ちゃいけない人間なんです」と、深い事情が横たわっていることを仄めかす。

 萩野「あなたにどんな過去があったか知りません。でも、もし孫の恵子が可愛いと思うなら、あなたもご自分の過去を乗り切って、恵子に手を差し伸べてやって頂けないでしょうか? いつかそう言う日が来ることを待っています」
 深々と頭を下げ、去って行く萩野。
 幸子は、恵子に貞子がやはり自分の母親だったと伝えていた。
 恵子「だけど、どうしてお祖母さんは?」
 幸子「分からない、どうして名乗ってくれないのか……33年ぶりに会えたと言うのに……33年ぶりに……ひくひく」
 メソメソ泣く幸子。
 恵子の顔を正面から見詰めて、
 幸子「恵子、やっと分かった。あなたが初めてあたしのところに訪ねてきた時、私はあなたを知らないと言って帰したわね。辛かったでしょう?」
 恵子「お母さん……!」

 そして海難審判の判決が下る。
 「第三吉川丸船長は日程の遅れを取り戻すべく、荒天の中、危険な海域の中を操船し、ために当船を座礁、沈没せしめたと判断す。よって、当審判長は、船長を指導監督すべき立場にある、吉川総一郎が、自らの責任を十分に果たさなかったと断定す……」
 と言う、吉川海運にとって厳しい内容だった。
 実際は、昌也(清川)の策略による事故らしいのだが、その辺がはっきり分からないのがもどかしい。

 昌也は吉川海運の窮境に対し、松崎と祝杯を挙げていた。
 その吉川、資金繰りのために豪邸を手放さなくてはならなくなったと妻と娘に話していた。
 吉川「すまん、許してくれ」
 まゆみ「どうしたの? いつものお父さんらしくないじゃない。いつものお父さんだったらきっと言った筈よ。どうせポンポン蒸気3隻から始めた会社だ。最初からやり直すと思えば、どうってことないって!」
 父親を励まそうとする健気なまゆみさんをじっと見詰める吉川。娘ながら可愛いのうと思っていたのだろう。
 まゆみ「お父さん」
 吉川「こいつ、父さんの台詞を取りやがって、こいつ……」
 んで、早くも引越しをしている吉川家。
 志摩では、恵子が玄関前を掃除していると、貞子がふらっと姿を見せる。
 洋一からだと言ってワカメを一袋渡す。
 その機を掴んで、
 恵子「萩野先生から聞きました。あたしのお祖母さんなんですね?」
 思い切って言ってみるが、貞子は無言でさっさと帰ってしまう。
 恵子「おばあさーん!」
 その背中に呼びかける恵子。 
 城達也「子供の日であった。空にはこいのぼりが泳いでいた。戦後33年目の子供の日であった」

 城さん、何を言ってるんですか?

 確かにオンエアは「子供の日」だけどさ。

 

  第24話「闇からの声が私を呼んだ」(1979年5月12日放送)

 この企画を始めたことを本気で後悔し始めている管理人だが、死ぬ気で最後まで書く所存である。

 ボーっとした様子で恵子が志摩家で掃除機をかけていると、順子が呼ぶ。
 順子はどこぞの集まりに行くので、前夜から恵子に供をするよう言い付けていたのだった。
 順子「今日は楓会の奥様方が大勢集まる日ですからね。志摩家の嫁として恥ずかしくない格好をしてきて頂戴ね」

 一時は、すっかり恵子と仲良くなった順子だったが、前回の幸子との件で、元の木阿弥。刺々しい口調に戻っている。と言っても、以前に比べればずっと柔らかだが。
 と、そこへ、最近すっかり影の薄くなったトミーが階段を降りてくる。
 トミー「恵子は行けませんよ」
 順子「それどういう意味?」
 トミー「恵子は今日他に行くところがあるんです」
 恵子「いいんです、あたし……」

 トミーが代わりに行くと申し出るが、あくまで恵子は遠慮して、支度してきますと、奥に引っ込む。
 恵子は、長年住み慣れた豪邸を出、母・貞子と会えず寂しい思いをしている幸子のところへ行くつもりだったのだ。

 恵子は、順子と一緒に車で楓会と言う、上流階級の集まりへ、
 対照的に、吉川一家は荷物を積んだトラックで、新しい住居へ引越しの途中だった。
  
 その後も、楓会の着物を着た婦人たちのそばに立っている恵子と、狭い新居に荷物を運び入れている真砂子と言うように、落差はまるでドラマのように描写される。……あ、ドラマか。
 貧しいながらも、楽しい我が家と言う感じに、和気藹々の真砂子たち。ま、貧しいと言っても、あくまでそれまでのセレブライフと比べてと言うことだが。
 ふと、真砂子が入り口の方を見て、顔色を変える。
 そこには、悟りを開いた高僧のような顔のトミーが立っていた。
 ペコリ。

 「とりあえず頭下げときゃどうにかなるだろう」と言うのがトミーの人生哲学であった。(註・多分ほんとです)
 吉川「何をしに来たんだね、ここまで落ちぶれたうちを見て笑いに来たのか?」
 と、敵意剥き出しの吉川。

 事業のことはともかく、可愛い娘を捨てた男なんだから、この態度は当然である。
 トミーは一歩進み出て、
 トミー「良かったら、手伝わせてください!」
 吉川「なんだとぅー? こうなったらのもあんたの親父さんと清川のせいだ!」
 幸子「あなた……!」 
  
 トミー「僕がこの家へ顔を出せる義理でないことは、よく分かっています。でも今日は恵子の代わりに来たんです」
 真砂子「信夫さん……」
 トミー「こんなことを君に言えば傷付くのは良く分かっている。だけど今日は恵子の……とにかく、手伝わせて下さい」
 幸子「それじゃ信夫さん、あなた?」
 トミー「ええ、何もかも知ってます」
 「何もかも」と言うのは、無論、恵子と幸子の関係である。

 吉川はあくまで突っぱねるが、
 当の真砂子が進み出て、「いいえ、お願いします、信夫さん」と、にっこり笑って受け入れを表明してくれる。

 一方的に婚約破棄した相手から、こんな風に言われるとは、
 トミーのモテモテパワー、恐るべし!
 真砂子「ありがとう、助かるわ」
 深読みすると、この笑顔、かなり怖いんだけどね。
 トミーたちが汗を流している頃、順子たちは優雅にお買い物。後ろで、恵子が買ったものを持たされている。
 よく分からないけど、上流社会の頒布会みたいなものだろうか?
 トミーと真砂子は、まるで新婚夫婦のように一緒に荷物の整理をしていた。
 真砂子さん、擬似的にせよ、トミーとこんなことが出来て、とても嬉しかったのではないだろうか?
 だが、ここで、不意に幸子が倒れてしまう。慌てて駆け寄る二人。吉川は仕事で出掛けた後なのだ。
 真砂子「ひどい熱! 信夫さん、救急車呼んで!」

 担ぎ込まれた病院の医者は、過労から肺炎になっていて、今日明日が峠だと二人に告げる。
 志摩家では、志摩夫婦が、順子の買ってきたものを品定めしていたが、そこへトミーが飛び込んできて、
 トミー「恵子、君のお母さんが倒れたんだ! さあ早く行ってあげなさい」
 と、二人の前で恵子に話す。
 当然、「お母さん」と言う単語に反応する順子。
 順子「恵子さんのお母さんとかなんとか、一体誰が肺炎になったんです?」

 本来なら、小島家の養母(園佳也子)のことだと誤魔化すことも可能だが、既にこのドラマでは小島家の存在自体、なかったことになってしまっているので、トミーは「吉川の小母さまです!」と、思わず本当のことを言うしかなかった。

 トミーは恵子に確かめた上で、改めて幸子が恵子の実の母親だと明言する。
 順子は薄々そうじゃないかと思っていたと、それほど驚かない。志摩局長は、過去の恵子の振る舞いが、やっと腑に落ちたと言うような顔をする。

 また、志摩夫婦に父親のことを問われ、恵子はそれが清川だと打ち明けざるを得なかった。
 それを聞いて、更なる驚きに打たれる志摩夫婦。
 ……しかし、だからと言って、特にどうと言うこともない気もするなぁ。

 元々、志摩局長は清川と組んで政界に出ようなどと色気を出していたくらいなので、少なくとも清川から実害を被ったわけじゃないからね。
 まあ、そもそもこんなクソややこしい人間関係を前にして、どうこう言っても始まらない。

 トミーは強引に恵子を連れ出し、幸子のところへ行かせる。
 恵子が屋敷を飛び出し、手を挙げると一瞬でタクシーが止まってくれる。さすがドラマだ。
 恵子を出迎えたのは意外にも真砂子だった。
 真砂子「信夫さんにあなたを呼んできてってお願いしたのはあたしなの……さ、お母さんのところについててあげて。あたし、洋一を迎えに行きます」
 真砂子から洋一を預っている貞子の住所を聞かされ恵子は、ついでに貞子に幸子の病気のことを知らせてくれるよう頼む。
 もう、真砂子には、信夫を取られた恵子に対する恨みは残っていないようだ。
  
 病室に入り、昏々と幸子が眠っている枕元で静かに座っている恵子。
 ふっと幸子が目を開け、恵子がいるのに気付いて微笑を浮かべる。
 幸子「あなた、ここにいてくれたの……」
 恵子「さ、眠って、朝までぐっすり。あたしここにずっといますから」
 幸子は素直に恵子の言葉に従い、再び目を閉じる。
  
 さて、真砂子は早くも貞子のところを訪れていた。
 ところで、真砂子さん、さっきと違う服着てない?
 そりゃ、他人の家を初めて訪れるのだから、ちゃんとした服を着て行こうと真砂子さんが思っても不思議はないのだが、場合が場合だから、違和感を覚える。普通は(着替えるために)家に寄らず、真っ直ぐここへ来るだろう。

 洋一「なんだって、肺炎?」
 真砂子「洋一、すぐに来て、先生は今日明日が峠だろうって……」
 まだ幸子の「裏切り」を許せない洋一は、しかし強がってそっぽを向く。洋一に母親のところへ戻るように促した貞子に、真砂子は「恵子さんから母のことをあなたにも是非伝えてくれと……」と告げる。

 貞子はしらばっくれて、「ああ、良く花を買ってくれたからだろう」と適当に誤魔化して、すぐ病院へ戻るよう急かす。
 洋一はこの期に及んでも、「母さんの顔なんか見たくもないよーっ!」と怒鳴る。
 真砂子「バカーッ!」
 真砂子は初めて弟の顔をぶん殴る。
 真砂子「あなた、お母さんの本当の子供じゃない。それで、そんなことでいいと思ってるの?」
 いつになく厳しい顔を見せる真砂子。
 貞子「洋一、姉さんの言うとおりだよ。どんな親だって、いいや、我が子に申し訳ないと思っている親ほど、我が子のことをどんなにか……」
 洋一はいきなり家を飛び出して行く。
 真砂子「洋一! 失礼します!」
 真砂子は貞子に一礼して、洋一を追う。
 ひとり残された貞子はかなり凹んでいた。
 (まだ話が終わってないのに……)

 貞子は幸子の写真が載っている雑誌(サンデー毎日)を取り出して、「志津子、許しておくれ、行ってやれないけど頑張っておくれ」と詫びる。
 翌朝、恵子が志摩家に戻って、順子に朝食の支度が出来たと知らせに来るが、
 順子「出てお行き、あなたの顔など見たくありません!」
 恵子「お母様……」
 順子「あんな大切なことを今日まで隠していたような人の顔なんか見たくありません」
 一方的にドアを閉める順子。恵子の殺意はゲージを振り切ってなおも上昇中!
 さて、真砂子が荻野の幼稚園を訪れていた。そこで働いている恵子に、自分の代わりに母のそばについていて欲しいと頼みに来たのだろう。
 真砂子「母は私より恵子さんがそばについていた方が喜ぶと思います。それに私、お仕事を捜さなくてはなりません、大学にはもう休学届けを出しました」

 ここで、意外な事実が判明。真砂子さん、女子大生だったのだ!
 しかし、今までそういうことを匂わせるシーンや台詞はひとつもなかったなぁ。別に家事手伝いでも良かったと思うけど。

 萩野は快諾する。真砂子が出て行こうとするのを呼び止め、
 「真砂子さん、いつの間にあなたは……いや、ひょっとしたら、一番強いのはあなたかもしれないな」
 と、評する。ちょっと前まで、「死にたい」とか言ってたからね。
 萩野に言われたのか、恵子が病院へやってくると、玄関口でうろうろしている貞子を見付ける。
 貞子は持ってきた見舞いの花束を恵子に託して逃げるように立ち去ろうとする。
 恵子「おばあさん、何故避けるんですか? どうして本当のことを仰らないんですか。あたしの本当のお祖母さんなんでしょう? だったらどうして……?」
 貞子「恵子さん、何にも知らない方がいい。知ったらあんたは不幸になるだけだよ」
 恵子「あたしが不幸に?」
 貞子「嫌なことはあたしが、もうじき墓場の中まで持ってってやるよ」
 思わせぶりな祖母の言葉に、
 (この上まだ「意外な事実」があるのかよ……orz)

 城達也ナレも「久保貞子の言葉が不気味であった。祖母が名乗れない理由を私が知ると、何故不幸になるの? 恵子は三度、人生の深淵に立っているような気がした」と、恵子の気持ちを代弁する。

 とりあえず恵子が病室へ行くと、洋一が幸子の側にいた。幸子の峠を越えた様子に、恵子もホッとする。洋一は一度家に帰ってくるからと、恵子に頼んで出て行く。
 恵子「お母さん、早く元気になって! それが真砂子さんにも一番……」
 幸子「早く元気になりたい。今私はこうして寝てるわけに行かないの」
 髪型のせいか、ここの左幸子さん、妙に可愛い。若い頃は、さぞ美人だったんだろうなぁ。

 恵子は貞子の花を花瓶に生けて、幸子に見せる。
 恵子「綺麗でしょう。おばあさんが持ってきてくれたのよ」
 幸子「そいじゃあの人……」
 恵子「心配そうに病院を覗き込んでたわ。ねえ、あの久保貞子って人、あたしのお祖母ちゃんなんでしょう? お母さんが病気だって知ったら、きっと駆け付けてくれると思ってたの」

 幸子は、戦後33年、あの人にも人には言えないつらい人生があったのだろうと、母を思い遣る。

 幸子はきれぎれに父母の思い出を恵子に語る。
 それによって、幸子の父親が海軍大佐だったこと、戦死の公報が入った三日後に空襲を受けたことが分かる。恐らくその時、貞子と生き別れになったのだろう。
 恵子が志摩家に戻ると、こんな人が出てくる。
 恵子、思わず「あんた誰?」と言いそうになるが、なんとかトミーの姉・夏純子だと思い出して、「お姉さま、パリから何時?」と訊く。

 全然出て来なかったので、管理人も綺麗さっぱりその存在を忘れていたが、小島家のようにドラマから抹殺された訳でもなかったらしい。ただ、パリへ行っていたのと言うのがなんかイヤミだ。

 純子「帰ってくるんじゃなかったわぁ。こんなゴタゴタしたうちへ」
 純子は、順子に何もかも洗い浚いしゃべった方がいいわよとアドバイスしてから、
 「あたしの母だから言うわけじゃないけど、人間決して、鬼でも蛇でもないわ。元気を出して、さ、行って来い!」
 純子に励まされ、恵子の顔にも笑顔が浮かぶ。恵子は、志摩夫婦から呼ばれていたのだ。

 恵子は、志摩夫婦の前に立つ。
 志摩局長は、家族の間に隠し事があるのは良くないなどともっともらしいことを前置きし、恵子の過去について何もかも喋らそうとする。

 順子「まだ隠してることはないんでしょうね?」
 (敢えて言うことでもないが)いくら家族だからって、あらゆる秘密を共有しなくてはならないと言う法はない。その論理に従えば、志摩夫婦だって、過去の行状の全てを恵子に打ち明けねばならない筈だが。

 恵子にとってはまさに針のムシロ状態。
 部屋の外で聞いていた純子が入ってきて、
 「はぁーっ、まるでスパイか何かの査問委員会みたいね」とチクリ。

 しかし、順子も負けてない。
 順子「ええ、この人は現にスパイのようなことをしていたんですからね」

 と、味方である純子まで「恵子さんどうなの? こうなったら何もかも話した方がいいわよ」と言い出す。ま、さっきもそうアドバイスしてたけどね。

 恵子、両親のこと以外にもう言うべき秘密はないのだが、みんなの期待に応えようと(?)、
 恵子「あたしの祖母がいるかもしれません」
 と、言わなくてもいい「秘密」をぽつり。

 順子(嬉しそうに)「呆れた。あなたって人は何人係累が出てくれば気が済むの?

 その台詞、このドラマのスタッフに言ってやって下さい。

 でも、これって、脚本家が自分で自分のシナリオに突っ込んでるみたいで笑える。

 恵子は祖母と言うのは、死んだと思われていた幸子の母だと説明する。それにいちいち順子が食いつくのも可笑しい。
 ところが、その名前が「久保貞子」だと聞いた志摩局長の顔色が変わる。……嫌な予感がする。

 黙りこくって考え込む夫を見て、順子は「あなた、どうかなさったんですか?」と訊ねる。
 局長は、「いや、別に……恵子、他にもう隠してることはないだろうな? じゃ、もういい、下がりなさい!」
 と、慌てた様子で恵子を退ける。

 当然、順子は「久保貞子」について関心を抱く。
 純子が冗談っぽく「お父様が昔付き合ってたガールフレンドと同じ名前だったのかな?」と言って見るが、
 局長「バカなことを言うんじゃない!」
 と、本気で怒る。

 仕事から帰ったトミー(どんな仕事してるのやら……)も、恵子や姉からその話を聞き、「久保貞子」問題について興味を持ってあれこれ自分の推測を話すが、
 いい加減「赤い」シリーズのお約束にうんざりしていた恵子は、「やめて、もう何も聞きたくない、何も知りたくない」と耳を塞ぐ。
 これは、山口百恵さんの本音も混じってるんじゃないかなぁ……。
 だが、次のシーンではトミーがその久保貞子の家に来ている。
 恵子の夫として、自殺しようとした恵子を助けてくれたお礼を言ってから、両親のフルネームを告げて、「この名前に何か心当たりは?」と、単刀直入に聞く。こういうのを要らぬお節介と言うのだ。

 無論、貞子は何も知らないと言い張る。トミーは、何故幸子に母親だと名乗ってやらないのかと詰め寄り、理由を教えてくれないのなら、自分で勝手に調べさせて貰うと、半ば脅迫じみたことを口にする。

 まあ、相手は妻の祖母かもしれないのだから、トミーが拘るのも分からなくはないが、やっぱりこれは単なる迷惑行為だろう。
 恵子は依然入院している実母のところへ行き、志摩夫婦に自分と幸子の関係を打ち明けたと報告する。
 幸子はそれを聞いて、むしろホッとしたような顔になる。
 幸子「これでいいの。人間、自分が生きてきた道に責任を取らなきゃ。それを他人に隠そうとするから面倒が起きたり……恵子、よく話してくれた……ありがとう!」

 と、同時に、部屋の外から押し殺したような嗚咽が聞こえる。
 恵子がゆっくり立ち上がってドアを開けると、
 久保貞子が目にハンカチを当てて泣いていた。
 貞子「うっ、うう」
 恵子「お祖母さん!」
 幸子「お母様!」
 貞子「志津子、許して頂戴」
 幸子「やっぱりお母様だった」
 貞子「こんなあたしでも、お母様と呼んでくれるのかい。今あなたが恵子に言っていた言葉であたしは目が覚めました。志津子、あたしはあなたからお母様と呼ばれる資格はないの。だってあたしは20年前、あなたを一度捨てたんですもの 
 貞子は、空襲で生き別れた後、風俗嬢に身を落としていた幸子を見たことがあると告白する。
 貞子「飛んで行きたかった。飛んで行ってあなたを救い出したかった。でも、その時あたしは再婚の話が出ていたの。相手の人は立派な家柄の人だった。その頃のあたしは40過ぎだった。あなたを取るか、自分の幸せを取るか、迷った挙句、私はあなたを捨ててしまった……」

 しかし、結婚相手は病気で急逝してしまった。貞子は幸子を引き取ろうとしたが、その時はもう幸子は何処に行ったか分からなくなっていたと言う。

 幸子は、自分もかつて同じように、吉川海運の社長夫人の座と、恵子を秤にかけて、恵子を捨てようとしたと打ち明ける。
 幸子「恵子は私を許してくれた。私もお母様を……」
 貞子「志津子!」
 恵子「ありがとう、お祖母ちゃん、やっと、やっと久保家の血を引く三人がこうして一緒に……ありがとう」
 抱き合う三人。
 しかし、貞子の表情は、依然として翳りを帯びていた。……まだなんかあるの? あるんだよなぁ、とびっきりのが。
 ラスト、波止場にて。
 久しぶりの、パンチ若杉と純子のツーショット。

 若杉は、まだ清川の陰謀を暴くことを忘れていなかったが、差し当たり、この船で働くんだと純子を連れて来たのだ。
 じゃれる二人を見て、船長(?)の老人は、「女を船に乗せるな。お前の女房なら別だが」と言う。
 純子が勝手にそうだと認めて、その名前を名乗る。だが、「志摩」と言う苗字を聞いた途端、老人の態度は一変し、
 「帰って貰ってくれ! 志摩なんて苗字は死ぬまで聞きたくねえんだ!」と、吠える。
 無論、この時点では、相手がにっくき志摩の一族だとは知る由もないのだが。

 城達也「志摩と言う姓に何か拘りを持っているらしいこの老人は一体何者だろうか」

 恵子のお祖父ちゃんだよ!
 名優・宮口精二が演じてるんだから、重要な役に決まってる。

 この後、清川と吉川の会話。清川はまだ吉川海運の仕事の邪魔をしているらしい。正直、見てる方がうんざりする。
 そして、最後、トミーは久保家と志摩家には深い因縁があるのではないかと余計なことに首を突っ込もうとしていた。

 正直、この辺でレビューを打ち切りたい。

 

  第25話「暗い海で叫ぶ老船員」(1978年5月19日放送)

 くそー、まだあるのか。

 さて、恵子からあれこれ話を聞いたトミー、よしゃあいいのに恵子の祖母が再婚する筈だった相手こそ、自分の祖父ではないかと言う疑惑を抱いて眉間に皺を寄せる。
 恵子は20年も昔のことだからとトミーを止めようとするが、トミーは聞かず、その足で両親のいる居間へ行き、まず、久保貞子が恵子の祖母だったと明言する。
 志摩「本当か? そうだったのか、やっぱり……」
 トミー「何故そんなに驚かれるんですか?」
 トミーの質問に、順子が代わって答える。
 順子「驚かない方がどうかしてますよ。やれ誰それが父親で母親で、今度はおばあさんまでいたなんて! そのうちに、恵子さんの隠し子まで現れるんじゃないでしょうね?」

 前話にも似たような台詞があったが、後半はともかく、前半部分はこのドラマ、いや、「赤い」シリーズそのものを自ら茶化しているようにも聞こえて、なんとも痛快である。ライターも、この台詞を書くとき、思わずニヤニヤしてしまったのではないだろうか?

 しかし、実際、「赤い」シリーズ中でも、特にこの「絆」は、最終的にヒロインの肉親が新たに4人(母、父、祖母、祖父)も出てくると言うめちゃくちゃなことになっていて、自らそう腐したくなるのも分かる気がする。ついでに、異父弟(洋一)もいたな。 
 話を戻して、母親の暴言にトミーも声を荒げる。
 トミー「母さん!」
 恵子「信夫さんやめて、相手にしない方がいいわ
 順子「はっ?」
 恵子「えっ?」
 なんてことは口が裂けても言わない謙虚な恵子さん。
 でも、言うに事欠いて「隠し子」などと口走る相手に下手に出ることはないと思うよ。それがたとえ姑であろうと。

 それでも、
 トミー「母さんは黙ってて下さい。僕は父さんに聞いてるんです」
 ピシャッと順子を黙らせるトミー、中盤までのマザコンっぽいところと比べると、別人のように頼もしい。

 トミーは、貞子の再婚する筈だった相手が、自分の祖父、つまり志摩局長の父親だったのではないかと疑問をぶつける。志摩局長はあえて否定せず、
 「久保さんが言ったのか? 他に何か言ってなかったか、例えば、お祖父さんのこととか」
 と、逆に質問してくる。だが、トミーも恵子も何も聞かされていない。

 トミーは、その再婚話には何か裏があるのではないかと追及するが、志摩局長はあくまで何もないと突っぱねる。
 「そんな昔話を根掘り葉掘り引っ張り出して何になると言うんだ?」

 正論であるが、そんなこと言ったら、このドラマが成立しなくなる……。

 妻と二人きりになった志摩局長、ねちねちと妻に迫られ、結局彼女に秘密を打ち明ける。

 一方のトミー、恵子の祖母や母が不幸に陥ったのは、元はと言えば自分の祖父のせいだと、恵子に対して要らぬ罪悪感を抱いていた。
 恵子は今のままで幸せだから、過去のことを調べるのはやめてくれとトミーに嘆願する。
 トミーは、口では「分かった」と言っているが、今ひとつ信用できないなぁ。

 で、その秘密と言うのは、
  
 順子「暗殺? 恵子のお祖父さんに当たる人を暗殺?
     知らなかった。そんな 恐ろしい 忌まわしいことを!

 顔を覆って馬鹿でかい声を出す順子。
 志摩「やめんか、取り乱すなと言った筈だ」

 現段階では細かいことは不明だが、志摩局長の父親が、恵子の祖父を暗殺した(させた)らしい。ま、実際は、前回の最後にピンピンした姿を見せているんだけどね。
 志摩局長は、その上で、妻に、貞子がそのことを知っているのかどうかそれとなく探ってほしいと頼む。

 志摩家の名誉に関わることだと、順子は引き受けて、すぐに幸子の病室を訪れる。
 病室にはまだ貞子がいた。順子は来客かと遠慮しようとするが、
 幸子「奥様、あの、母でございます」
 と、少し照れ臭そうに紹介する。

 順子「まああなたが! 初めまして、志摩でございます」
 貞子「これはまあ、初めまして……」
 幸子「奥様、私も、これまで色々と……」
 順子「志津子さん、もうよろしいではございませんか」
 順子、下心があるので、いつになく柔和な態度で二人に接する。
 順子「それよりおばあさま、不思議なご縁でございますわねえ。30年前、信夫のおじいさまと結婚なさる筈だったとか」
 貞子「まっ、どうしてそんなことを?」
 順子「主人が全て話してくれましたの。信夫のおじいさまの急死でそれっきりになった縁談を、今何も知らぬ恵子さんと信夫が完成させたなんて、これも何かのご縁ですわね……志津子さん、知らないこととは言え、あなたや恵子さんにつらく当たって、許してくださいね」
 心にもない謝罪の言葉を口にする順子。役者やのう。

 ただ、ここの台詞は「30年前」になっているが、冒頭の恵子は「20年前」と言ってて、混乱してしまう。
 30年前だと、1948年になるが、貞子に再婚話が持ち上がった時には既に幸子が風俗嬢になっていた筈なので、明らかに矛盾する。正しくは20年前だろう。
 ただ、(約)30年前には、貞子と幸子が空襲で生き別れになっているので、それとごっちゃになっていたのではないだろうか。

 順子はさりげなく貞子に探りを入れる。
 順子「おばあさまも色々苦労なさったんでしょうね? ご主人は海軍の軍人さんだったとか」
 貞子「ええ、終戦の年に、戦死の公報が参りまして……」
 順子「まあ、戦死を? お遺骨などもちゃんと?」
 貞子「はい……」
 唐突な質問に、貞子も怪訝な顔をする。
 順子は適当なことを言って誤魔化す。貞子は、夫は間違いなく戦死したと確言する。

 順子はそれを夫に報告する。
 志摩局長は、遺骨は、暗殺に関わっていた国家と軍の上層部が用意した偽物だろうと説明する。
 志摩局長「恵子のおばあさんが連れ合いの戦死を信じていてくれればそれでいい、ほんとにそう信じてくれていれば……」
 志摩局長は祈るようにつぶやく。
 その死んだ筈の恵子の祖父の船で働いているパンチ若杉を珍しく真砂子さんが訪ねる。
 二人のツーショットは初めてかな?

 若杉「今日は何ですかお嬢さん」
 真砂子「うふっ、もうそんな風に呼ばないで。あたしは今は失業者よ」
 若杉「じゃあ大学辞めたってのほんとだったんですか」
 真砂子「今日はお願いがあって来たの。父は会社を立て直すために必死で努力してるわ。若杉さんもいつかきっと父の会社に帰ってくださいね」
 若杉「へっ、そんなことを言いにわざわざ?」
 真砂子「だって結局、父の力になって下さるのは若杉さんしかいないみたいなんですもの!」
 若杉「いやぁ……」
 そこまでは良かったが、話が真砂子の母・幸子に及ぶ。真砂子さんは、幸子が母親と再会したと話し、
 「つまり、恵子さんのおばあさん、久保貞子さんって方が見付かったんです!」
 と、名前のところを妙にはっきりと発音して説明するのだった。恐ろしいことに、
 それを恵子の祖父が耳にしてしまう偶然が発生するのだ!

 ま、この船は彼の所有なんだから、その場にいてもおかしくはないのだが、それにしても……。
 祖父は、面倒臭いので久保康夫と先に名前を出しておくが、すぐ真砂子さんに問い質し、
 康夫「生きてたのか! 貞子も志津子も!」
 と、驚きの声を上げる。
 見知らぬ老人の興奮に、真砂子さんは呆気に取られる。

 康夫はやや気まずい顔で船の方へ戻る。若杉が近付いて事情を聞こうとするが、康夫は逆に貞子や幸子のことを教えてくれと若杉に頼むのだった。
 恵子、思い出したように幼稚園で働いている。
 そういや、恵子、以前は保母さんになるのが人生の目標みたいなこと言ってたな……。
 若杉からこの場所を聞き出した康夫、すぐに恵子に会いに来る。
 初めて孫に会い、感極まり、ついでに乳を揉もうとするが(註・してません)、
 恵子「一体あなたはどなたなんですか?」
 当然、恵子は警戒する。

 そこへかなりわざとらしく、幼稚園の方から「志摩さん、外務省から電話よー」と呼ぶ声がする。

 夫が外務省のエリートと言う特殊状況があるとは言え、普通、なかなか「外務省から電話」は掛かって来ないよね。

 志摩と言う姓を聞き、康夫は、恵子の義父・志摩局長の父親の名前が「志摩タツオ」だと確かめる。
 孫が、こともあろうににっくき志摩家に嫁いだことを知り、頭を抱えて苦悩する康夫。
 康夫「バカな、なんてことだ〜」

 康夫はふらふらと帰って行く。
 そこへ、幸子の見舞いから帰る途中の貞子が現れる。
 恵子は、貞子が再婚する筈だった相手が、信夫の祖父・志摩タツオだったのかと問う。
 貞子も別に否定せず、
 貞子「でもそれは、遠い昔の話よ」

 恵子は、志摩タツオについてあれこれと聞く。
 志摩タツオは康夫の戦友で、康夫の「戦死」の後、なにくれと貞子の面倒を見てくれたらしい。
 貞子は、ほんとうに志摩局長が隠したがっている「秘密」については知らない様子だ。

 貞子は恵子を送って一緒に志摩家まで行き、それから家路に着く。
 だが、帰った筈の康夫が志摩家の前におり、貞子すなわち自分の妻の姿を見掛け、ほぼ何の躊躇もなく話しかける。 
 康夫「貞子、貞子だね」
 貞子「あなた……!」
 妻として、30年間音沙汰のなかった夫を責めても良さそうだが、貞子はあくまで夫との再会を喜んでいた。
 貞子「知らなかったわ、あなたがこうして本当に生きていて下さるとは……」
 康夫「俺だって……」

 康夫の方も、貞子と幸子が無事だとは知らなかったらしい。空襲で二人とも死んだと思っていたのだろう。

 康夫は恵子を志摩家に嫁入りさせたことで、妻をなじる。
 貞子が「何故か」と訊くと、

 康夫「俺を殺そうとしたのは志摩タツオなんだ!」
 と、衝撃の事実を打ち明ける。

 ……しかし、正直、どうでもいいなぁ。

 そもそも、今まで繰り広げられてきた親子の絆に絡む愛憎劇と、この康夫の戦争にまつわるエピソードは、まるっきり水と油で、不調和なこと甚だしい。第一、30年前も昔の話だしねえ。康夫が、昨日のことのように志摩家に対する怒りを滾らせていると言うのもなぁ。

 康夫は、暗殺の手を逃れて日本に帰ったこと、二人が死んだものと思い込んだこと、大崎と言う男の船員手帳を手に入れて大崎として長い間外国船で働いてきたことなどを話す。

 康夫もトミー同様、志摩タツオの為に貞子親子が不幸になったと言う考えだった。
 うーん、これもなぁ……、一番の原因はあの空襲、ひいては戦争そのものだと思うんだけどね。

 恵子は志摩家の「秘密」について調べることを決意し、萩野に話す。萩野も反対だったが、恵子の意志は固い。

 萩野「かつて日本は、いや、世界は狂気の時代を経験した。そのもっとも極端な表れが、ナチズムだといえば、戦争を知らないお前にも想像が付くかもしれない。それと似たようなことが日本にもあったんだ。恵子、ひょっとするとお前、その狂気の時代、暗黒の時代に足を踏み入れることになるかも知れんぞ。それでもいいんだな?」

 かなり抽象的で大仰な萩野の脅し文句に、恵子は黙って頷く。
 遺憾ながら、萩野の台詞は、当時の、そして現在の視聴者の関心をほとんど呼ばないのだった。

 「絆」のこの終盤のエピソード、ほんっっっとに面白くない。ただ放送を続けるために話を引き延ばしているようにしか見えない。
 よって、更にスピードアップ。

 恵子は、船で作業をしている康夫に会いに行くが、康夫は「志摩家の人間には会いたくない」と、鬼の形相で恵子を追い返す。
 そこへ貞子が現れ、恵子を無理矢理引っ張って行く。
 また、近くの車には志摩局長がいて、康夫の暴れる姿をばっちり目撃していた。

 貞子は恵子に、これ以上過去のことを知ろうとするのはやめてくれと哀願するが、恵子はきっぱり「イヤです」と応じる。
 何故なら、そうシナリオに書いてあるからだ。

 しかし、この場合、貞子の「人間にはね、何にも知らないでいるほうがずっと幸せなことがあるんだよ」と言う言葉の方が絶対、正しい。
 それと、恵子の「あたしは今日まで、ひとりぼっちで生きてきました。肉親の優しさも知らず……」と言う台詞。

 繰り返し述べてきたが、恵子が、去年の夏まで、血の繋がった家族と信じて倹しくも幸せに暮らしてきた小島家のことが完全になかったことにされている……。

 とにかく、恵子は肉親の愛に飢えていて、母親、祖母だけでは足りず、祖父も欲しいと言うことらしい。欲張り。
 貞子は康夫に会い、過去のことは忘れて二人で一緒に遠くで暮らそうと説くが、
 康夫「貞子、悔しくないのか。お前と志津子と、聞けば恵子も、三人の人生をどん底に落とした志摩タツオが憎くないのか?」
 貞子「でもぉ、あの人はもう亡くなって」
 康夫「それがどうした? 恵子が志摩タツオの孫に蹂躙されてんだぞ!」
 貞子(処置なしだわ……)

 康夫は恵子をなんとしても志摩家から取り戻すんだと鼻息を荒くさせる。

 しかし、幸子(志津子)はともかく、貞子や恵子の不幸まで、志摩タツオのせいにするのはやっぱりおかしい。

 一方、志摩局長は自分から清川に会いに行き、今度の件について助力を頼む。
  
 早速、清川の指示を受けた松崎と、久しぶりに登場の三郎が、車で康夫に近付いて拉致しようとする。
 だが、ちょうど通り掛かったのが、三郎の天敵・パンチ若杉だった。彼らに邪魔され、敢え無く失敗。

 三郎、ほんっっっと、何をやらせてもダメな人。

 さて、幸子はほどなく退院する。
  
 病院の廊下を、娘(無職)と息子(浪人)に付き添われながら歩く。
 真砂子さんも洋一も、もう母親に対する蟠りは解けたようで、とても優しい。
 洋一「俺さ、表までおぶってってやるよ」
 幸子「人に見られたら笑われるわよ」
 洋一「いいから乗れよ、照れんなって」

 強く促されて、面映そうに息子の背中におぶさる。
 それを後ろから見守る真砂子さんも幸せそうな笑みを浮かべる。

 洋一「軽いな。でもなんでこんなに軽いんだろう?」
 幸子「まだおぶさってないからよ」(嘘です)
  
 真砂子「みんなが苦労かけたからじゃない?」

 洋一「そうだよな、ひとりで苦労背負い込んでたら、軽くなっちまうよな……だけど、これからはひとりで背負い込むなよな、苦しいことも楽しいことも、家族みんなで分けていこう」

 洋一の言葉に、思わず涙ぐむ幸子。

 真砂子「洋一、お母さん泣かしちゃダメじゃない」
 洋一「いいよ、泣いたって、今日は嬉しい日じゃないか。退院の日だもの。嬉し泣きくらいしてくんなくちゃ、おぶるほうも張り合いがないよ」

 家族の温かさに包まれて幸せそうな幸子。
 終盤の、取って付けたような康夫問題と比べて、空中分解しかけた吉川家が再び絆を取り戻す一連のストーリーは素直に感動できる。その辺を中心にして、もっと早く、26話くらいで終わらせておけば良かったのだ。

 しかし……、
 医者と話している父親のところへ引き返した真砂子の耳を、
 吉川「えっ、ガン?」
 と言う声が貫く。

 そう、大映ドラマの最終兵器、「不治の病」砲である!

 ま、お約束ですね。考えたら、今までキャラが誰一人として死んでないから、むしろ遅いくらいだ。
 吉川「志津子が、あいつがガン?」
 吉川の言葉に、ノックを仕掛けた手を止めて、その場で凍り付く真砂子。
 しかも医者は、手遅れで、あと1ヶ月も持たないと無情の宣告をする。
 演じているのが宇津井健なら別だが、こういうドラマの医者は大抵役立たずである。

 吉川「そんな……」
 ショックのあまり言葉もない吉川。

 真砂子さんもドアを開けて入ってきて、医者に縋るが、医者は一言「ダメです!」と言って、出て行く。やる気ないんか。
  
 早くもその場に泣き崩れる真砂子さん。
 吉川「いいな、真砂子、お母さんには言うんじゃないぞ! うん? 分かってるな?」
 真砂子「お父さん!」
 思わず父親に抱き付く真砂子。

 吉川はその肩を抱きながら、(やっぱり若い女の子は良い!)と、思うのだった。
 吉川はともかく、井川比佐志さんは思ってたかもしれない。
  
 洋一と幸子が待っている駐車場へ何食わぬ顔でやってくる吉川と真砂子さん。
 と、その近くに恵子が立っていた。お忙しいお方。
 洋一「(恵子)姉さん!」
 思わず声を出す洋一。こんな美人の姉が二人もいて、羨ましいのう。
 恵子の顔を見て、幸子も穏やかに微笑む。
 恵子は言葉をかけることはせず、慎ましく一礼してすぐ立ち去ろうとするが、意外にも吉川が呼び止める。
 吉川「待ちなさい、恵子(呼び捨てすんなよ)、俺たちは今から帰って志津子の退院祝いをやるんだ。良かったらあんたも来ないか?」

 無論、余命僅かの幸子のことを思えばの配慮である。
 ためらう恵子を洋一が無理矢理引っ張って、みんなで車に乗る。
  
 退院祝いと言っても、すっかり貧乏になった吉川家なので、ごくささやかなもの。
 みんなで、「海は広いな大きいな〜」と、童謡の「海」を合唱する。歌謡曲とか歌ったら、著作権料を取られるからだ。

 しかし、幸子のガンのことを知っている吉川と真砂子さん、ともすれば沈みがちになる。
 真砂子は耐え切れなくなったように立ち上がり、台所の陰に隠れて泣いている。
 幸子「夢だったわ、はぁ〜こうやってみんなで楽しくするの、何度も夢に見た」
 恵子の手を取って、しみじみと思いを語る幸子。
 場を浮き立たせようと、吉川はしきりに洋一に歌えと促す。
 しかし、洋一は、こともあろうに、「母さんが夜なべをして〜」と、ある意味最悪の選曲をする。
 真砂子さん、思わず振り向いて、(まさかこの子、知っててわざとやってるんじゃないでしょうね?)と、白い眼で弟を睨む。
 もっとも、何も知らない幸子や恵子には好評であった。
 吉川も真砂子さんも何とか耐える。

 その夜、帰宅して門を閉めていたトミーに、康夫がいきなり話しかける。
 康夫「あんた志摩信夫だね。志摩タツオの孫だな」
 トミー「そうですが」
 康夫「それなら、はっきり言っておく、恵子は必ず取り戻す! あの子は久保家の娘だ。汚れた志摩家の血を混じらすことはこのワシが許さん!」
 トミー(季節の変わり目に多いんだよな)(註・断じて頭のおかしい管理人の妄想です!)

 康夫は「覚えておけ」と吐き捨てて闇の中に消える。
 しかし、これもねえ、この30年間、大崎と言う男に成り済まして、久保家は死に絶えたものとして船乗りとして生きてきた男が言う台詞じゃないよな。

 だいたいそんなに志摩家に恨みがあるのに、なんで今まで復讐をしようと思わなかったのだろうか?
 トミー、しばらく考え込んでいたが、急いで家に入り、再び父親に直に問い質す。どんなことをしても調べ出すと言うトミーの決意を聞き、志摩局長も折れる。
 志摩「やもえん、お前も志摩家の人間だ。話しておいたほうがいいかもしれない」

 話の内容をかいつまんで言うと、

 ・康夫は戦争反対論者で、戦時中、スイスで極秘の和平工作を行なっていた。
 ・軍部、官僚はそんな康夫に暗殺者を送り込んで抹殺しようとした。
 ・それを命じたのが、トミーの祖父に当たる志摩タツオだった。
 ・戦後、タツオはそれが外部に漏れるのを気にして、貞子と結婚しようとした。

 と言うことになる。

 しかし、あまりに漠然としている上に、戦時中の軍部、政府はもっとひどいことをいっぱいやってるわけで、そんなムキになって隠すほどの秘密ではないと思うんだけどねえ……。

 それでも志摩局長は志摩家の名誉、ひいてはトミーたち子供の将来、社会的地位のある事件に関わった人たちのことを考え、そのことをずーっと隠して来たと言う。

 トミー、ひとりになって、必要以上に悩むのだった。
  
 恵子は、真砂子さんに送られて帰ってきたが、別れ際、堪え切れなくなった真砂子さん、
 「死んじゃうのよ、お母さん! ガンなのよ……」
 と、恵子に告げる。

 真砂子「ガンが、もう転移して……」
 恵子「嘘ッ、嘘でしょ!」
 真砂子さんは、泣き濡れた顔を横に振る。
 恵子は「嘘よ、嘘よっ」と叫びながら走り去る。
  
 身も世もあらぬ風情で泣いている恵子、その背後にトミーが立つ。

 普通だったら、何故泣いているのか気になるところだが、トミーの頭は今、さっき聞いた「秘密」のことでいっぱいで、そんな余裕はないのだった。とりあえず、恵子はトミーに抱き付いて思う存分泣く。

 城達也「つらい夜であった。悲しい夜であった。そして星ひとつない夜であった」

 

  第26話「二人を引き裂く新たな復讐!」(1977年5月26日放送)

 お久しぶりでございます。あまりにながいこと休んでしまい、管理人、ストーリーをすっかり忘れています。

 でも、面倒なので忘れたままレビューします。
 トミー「恵子、恵子、僕は……」
 恵子「癌なんです。吉川の母は癌で、もう手遅れなんです」

 恵子は「どうしてあたしたちだけがこんなに苦しまなければならないの?」と、熱っぽく訴える。
 トミー「本当に癌なのか?」
 恵子「信夫さん、癌の薬ないの? お医者様にもたくさん友達いらっしゃるんでしょう?」

 トミー「僕、友達いないんだ……」
 恵子「知るかっ」(嘘です)

 しかし、実際、このドラマでは不自然なほどトミーの友人と呼べるような男は出てこない。「不良少女〜」では、男谷と言う素敵なお友達が大活躍されているが。

 恵子はトミーに抱き付いて、「奇跡が欲しい」と一言。
 もう、今まで散々「奇跡」が起きてると思いますが……。

 トミーはトミーで、その脳裏には、父の「久保康夫を暗殺させたのが私の父、志摩タツオだ」と言う言葉が響いていた。

 トミー「許してくれ、君の一家を陥れたのは……!」
 トミーの言葉に、恵子は顔を起こしてトミーを見るが、トミーはそれ以上喋らず、恵子に、今はとにかく幸子のそばにいてあげることが大切だと説く。

 帰宅したトミー、両親に向かい、幸子の癌のことを話し、久保家や、幸子たちの不幸はみんな志摩家のせいじゃと喚き立てる。

 何度も言うようですが、違うと思います。

 志摩局長は昔のことだと突き放すが、
 トミーは決然と、「明日から恵子には時間の許す限り行かせます」と宣言する。

 順子「信夫さん、そんなことをしたら世間体が……」
 トミー「世間体? そんなことを言ってる場合ですか!」

 場合が場合だけに、さすがの順子もそれ以上反対できない。
  
 吉川家のアパート。
 床に就いている幸子の枕元で、アルバムのモノクロ写真を見て、恵子と真砂子の美人姉妹が笑い声を上げている。
 洋一「ただいま。あ、姉さん、来てたの」
 恵子「お帰りなさい」
 洋一「ナニ笑ってたんだよ」

 それは洋一の幼い頃の写真だった。これは長谷川諭さん本人のプライベートな写真であろう。
 真砂子「洋一の小さい頃の写真よ」
 恵子「案外、チビだったのね」
 幸子「よくおねしょしたの……」
 洋一「か、母さん、やめよう、これ」
 慌てて写真を隠そうとする洋一。

 真砂子「赤くなって」
 洋一「言ったな、この、来い!」
 真砂子「やる気ぃ?」
 と、ボクシングの真似をして、兄弟喧嘩を始める二人。ただし、笑いながら。

 しかし、洋一、帰ったら山口百恵さんと岡まゆみさんが待っているとは、世界一幸せな浪人生である。

 真砂子がふと思いついて「そうだ、みんなで写真を撮りましょうよ」と言い出す。
 真砂子「恵子さんの写真ないでしょう、お母さんと一緒のところ写すと良いわ」
 恵子「真砂子さん、ありがとう」
 真砂子「カメラ取って来るわ」
 恵子が振り向くと、幸子が手で顔を覆って泣いていた。
 恵子「お母さん」
 幸子「嬉しいの、とっても嬉しいの、だから……」

 幸子は、病気が治ったら家族旅行に行こうと決めたと話し、その時は恵子も一緒に来てくれるよう頼む。
 無論、恵子は快諾する。
 かなわぬ夢と知らず、その為にも早く元気にならねばと言う母を恵子は悲しみに満ちた目で見詰める。
 一方、吉川は、停泊している船に康夫を訪ね、互いに志摩家へ恨みを持っているもの同士、協力しないかと持ちかける。なんかまた話がこんがらがりそうで、嫌な予感がするが、幸い、康夫は誰とも手を組むつもりはないとにべもなく断る。

 それを見ていた三郎、すぐ松崎に注進する。
  
 恵子たちは表へ出て、かわるがわるシャッターを切っていた。
 ここで、幸子が「よく撮れたら私の葬式の時の写真に使うからね」と、冗談を言う。
 当然、固まる恵子と真砂子。
 洋一は「縁起でもない、せめてお見合いの時の写真に……」と、冗談で応酬する。
  
 とにかく、写真を撮る恵子。真砂子が、こちらをじっと見詰めている。
 ナレ「そこに何も知らない母の笑顔があった。そしてこのまま時間が止まってくれたらと願う、娘の涙であった」

 清川、志摩局長、松崎がいつものバーで話している。
 局長は、志摩家の過去が明るみになるのを依然恐れていたが、清川は平然と、33年も前の話だし、生き証人(康夫)は何も喋らなくなると、口封じを匂わせる不気味な発言をする。
 だが、その康夫、足元にカチカチカチと鳴る怪しげな包みを置いたまま、船員を残してひとりで出港してしまう。
 さて、純子のショップ、例によって繁盛していた。しばらくパリに商用で行っていた純子だが、店はその間、他の人間に任せていたのだろう。
 店を訪れているトミー、気のなさそうに雑誌をめくっている。
 純子「この間パリで仕入れてきた品物、かなり評判良くてね」
 トミー「そう」
 純子「どうしたどうした、か細い声出して……話ってなに?」

 トミーは、康夫が何処に住んでいるのか教えて欲しいと頼む。純子は、康夫に会ったことはあっても、その身許については知らされていないのだ。
 純子「お父さんもあたしに同じことを聞いたわ。ね、そのおじいさん、一体どういう人なの? それを話してくれたら、私もあなたの質問に答えてあげる」
 トミー「姉さん」
 純子「私も志摩家の人間よ。知る権利がある筈だわ!」
 いつになく真剣な眼差しの純子。
  
 一方、康夫は沖へ出てから、例の包みを海へ投棄する。やはりそれは時限爆弾で、爆発して水柱が上がる。
 康夫「何処までも汚い真似を!」

 しかし、いくら清川が悪い奴でも、直接恨みのない康夫を爆弾で殺そうとするかなぁ?
 それに、発覚したら彼らの身の破滅につながる重大事だ。
 この展開はやや、と言うか、かなり唐突だ。

 それを清川たちから仄めかされて、薄気味悪い思いをする局長。浮かない顔で、自宅へ向かっていたが、
 突然、車の前にぬっと亡霊のように康夫が現れる。
 さすがにギョッとする局長、車から降りる。

 康夫「志摩邦夫さんだな。その様子だと、ワシが誰だか分かってるようだな」
 二人は場所を移して話す。

 康夫「どうやらワシは運の強い人間らしい。33年も今日もこうして命拾いしたんだからな」
 局長「私は何も……」
 康夫「言い訳を聞く為に来たんじゃない! 33年だ。ワシにとってこの33年間がどんなに辛い年月だったか、お前さんに分かるか?」
 局長「分かりません」
 康夫「初めの10年、ワシはお前さんの父親を憎むことで生きてきた。だが、ワシは憎むことをプツリとやめた。何故だと思う? 日本が目覚しい復興を遂げ、みんなの胸からあの戦争のことが忘れられていったからだよ」

 それから、延々と自分の来し方を語る康夫。

 特に面白くないので省略します。

 とにかく康夫、自分を暗殺しようとし、戦後も高級官僚としてぬくぬくと特権的な生活を享楽してきた志摩家の人間への憎しみをぶちまける。
 志摩局長、とりあえず謝るが、康夫はそんなことで引き下がろうとはしない。

 局長は、父親と自分とは別個の人間だと主張し、
 「なるほど、あなたは立派だった。そして歴史の中で私の父親が悪役を演じてきたことも認めましょう。しかし、いまさらそんなことを穿り出して、一体どうなると言うんですか?」
 と、正論をぶつける。
 局長「忘れましょう。お互いの悪夢として」
 康夫「できんな」
 局長「久保さん!」
 局長「忘れようとしていた昔のことを思い出させたのはお前さんだよ。お前さんが今やってることなんだよ。お前さんの一家が清川と言う男と手を組んで、志津子や恵子までも苦しめてきたことをな」

 こんな議論をしても埒が明かないので、志摩局長は「どうすれば気が済むんですか」と開き直る。

 康夫「恵子を返して貰おう」
 局長「恵子を?」
 康夫「ワシの可愛い孫をこれ以上お前たちの犠牲にする訳にいかん!」

 「ワシの可愛い孫」っつってもなぁ、つい最近までその存在すら知らなかったんだけどなぁ。

 返さなきゃ、志摩家のやってきたことを公表すると脅し、康夫は闇の中へ消えて行く。

 志摩局長は家に帰り、妻にそのことを話す。
 恵子が目障りでしょうがない順子は渡りに船とばかり、「恵子を返しませう」とけしかけるが、

 局長「そんな簡単な話じゃないんだ。あの男はこの志摩家に復讐しようとしてるんだ。ただ、恵子と言う枷があるために手が出せないだけなんだ。恵子は言ってみれば大事な人質なんだ。絶対に渡すわけにはいかん」

 そこへ、その恵子が帰ってくる。
  
 順子の恵子を見る目には、いつになく殺意がこもっていた。あ、いつもか。
 順子「あなたって人は、何処までこの家を不幸に陥れたら……」

 事情が分からず怪訝な顔をする恵子。

 翌日、吉川が志摩局長のところに押しかけ、「康夫とは馬が合う」などと嘘をついて康夫のことを持ち出した上で、性懲りもなく仕事の口添えをしてくれるよう頼む。
 そう言えば、吉川海運が今どういう状況なのか、途中からぜんぜん説明されなくなったなぁ。

 貞子が、港の康夫を訪ね、せめて娘の幸子(志津子)にだけは会ってやってくれと懇願するが、
 復讐のことしか頭にない康夫は、「志津子や孫たちのことをよろしく頼む」
 と、だけ言って、船の中へ入って行く。貞子は肩を落として帰って行く。

 その貞子の前に恵子が立っていた。
 貞子「恵子、どうして此処へ?」
 恵子「此処へ来れば、会えると思って」
 貞子「何かあったのかい?」
 恵子「おばあちゃん……」
 気丈な恵子、珍しく涙を見せる。……涙は、珍しくはないけど、恵子が人に縋るような態度を見せるのは稀である。

 間に、幸子と真砂子のほのぼのしたやりとりを挟み、
 恵子と、恵子に引っ張られるようにして歩く貞子の姿。
 幸子の病気のことを話し、もう一度会ってくれるよう頼んだのだろう。
  
 吉川のアパートを笑顔で訪ねる恵子。
 ひとり臥せっていた幸子、貞子の姿を見て慌てて起き上がろうとするが、貞子が止める。
 貞子「ああ、起きるんじゃない、起きるんじゃない」
 幸子「だって、こんな格好じゃ」
 貞子「なにを言ってるんだね、他人じゃあるまいし、ささ、横になって」
  
 幸子「お母様……」
 母親を前に、思わず涙をこぼす幸子。
 貞子も「ほほぉ、なんだねえ、その顔は」と、幼子をあやすように幸子の顔を触る(涙を拭いてやっている?)。

 貞子「うーん、顔色は良いじゃないか」
 幸子「ふふっ」
 幸子を励ます貞子。
 トミーがまた姉の店を訪ね、康夫と会えなかったと報告している。
 と言うことは、トミーが康夫の素性を既に純子に話し、代わりに純子は康夫の所在をトミーに教えたと言うことだろう。

 トミー、マザコン疑惑のみならず、シスコン疑惑も窺われるシーンである。
 変な責任を感じ、康夫に会わなくてはならないと頑なに念じるトミーに、常識人の姉は、
 「その人に謝りたいと言うあなたの気持ちも分からなくはないわ。でも何度も言ってるようにその33年も前のことで今のあなたが苦しむことはないんじゃないの?」
 と、極めて妥当、穏当な意見を述べる。
 トミー「僕の気持ちが済まないんだ!」

 康夫に負けず劣らず頑ななトミー。
  
 純子「許してくれなかったらどうするの?」
 トミー「許して貰えるなんて最初から思ってないよ。だから何度でも足を運ぶ……」
 純子「それでも許して貰えなかったら?」
 トミー「……」
 純子(溜息まじりに)「しょうがないわねえ。ま、好きになさい」

 純子「でもこれだけは言っとく。あなたがそれまで思い込んでるならそのことを早く恵子さんにあなたの口から教えてあげなさい。その後で二人で考えた方がいいわ」

 しかしトミーは恵子には話せないと訴える。
 純子「ね、なんでも話し合ってこそ夫婦なんじゃない?」

 姉の言葉に、考え込むトミー。

 それにしても、この終盤の康夫33年問題、ぜんっぜん視聴者の関心を呼ばないなぁ。せめて貞子までにしておけば良かったのだ。考えたら、恵子って、自身も含めて実父、実母、母方の祖父、母方の祖母、みんなとんでもないワケありの人生を送ってるんだよなぁ。父方(清川)の祖父母も、悲惨な死に方をしているらしいし。
 仕事(何してるんだろ?)から夜遅く帰ったトミーを、恵子が出迎える。
 トミーが帰るまで食事を取っていない恵子を見て、思わず、
 「恵子、君は何故優しいんだ? 何故そんなに優しいんだ?」と、呻くように問い掛ける。
 恵子「どうしたの?」
 トミー「重過ぎるよ、君の優しさが……僕は君の夫でいる資格のない男なんだ!」

 トミー、突然叫ぶように言い放つと、そのまま2階の部屋に逃げるように駆け上がってしまう。

 しかし、やっぱり、33年前の祖父の暗殺の件で、ここまで罪悪感を感じるというのは……、いくら大映ドラマと言っても、不自然で、説得力に欠ける。康夫が実際に殺されていたのならともかく。

 貞子と幸子が生き別れになったのは、以前にも書いたが、大空襲のせいなんだしね。
 義母に言われて、食事を2階に持っていく恵子。だが、恵子がいくら呼びかけてもトミーは何も答えない。
 あまつさえ、涙まで流すトミー。さすがにそんな奴おらへんやろ。
 翌朝の食卓。妙に人が多いと思ったら、何故か純子までいるのだ。
 しかし、ショップまで経営しているのに、弟夫婦のいる実家に住んでいると言うのは……? ま、どうせ近いうちにパンチ若杉と結婚する予定だから、その時(ついでに)新居に移るつもりなのかもしれない。

 純子「どうしたのみんな、まるでお通夜みたいじゃない?」
 その純子、黙りこくって箸を動かしている家族に向けてズケズケ言い放つ。

 その後、ぎこちない、表層的な会話を交わすトミーたち。トミーはそそくさと食事を終え、仕事へ行く。
 福原物産と言う会社から明るい顔で出てくる吉川と、えーっと、久しぶりに登場の藤木敬士さん。役名忘れた。
 どうやら、志摩局長の口添えで、難航していた契約があっさり結べたらしい。
 その情報をすぐキャッチした清川、そのことで志摩局長をやんわり非難する。
 局長、仕事の規模は小さいのだから目くじらを立てることはないと言い訳するが、
 清川「申し上げた筈ですよ。私は吉川をとことん壊滅させるまでは復讐をやめないと。私の終極的な目的は、吉川を私の父と同じように、自殺にまで追い込んでやることなんです」

 物騒なことを言う清川。
 更に、これ以上吉川に協力するなら、自分が康夫のことで脅迫させて貰うと局長を脅かす。
 八方塞の局長、魂が抜ける。

 しかし、実際にマスコミに公にされても、大した騒ぎにもなりそうもないネタだ。物的証拠もなく、あくまで康夫自身の証言しかないわけだしね。
 役所の屋上で一人、悩んでいるトミー。仕事しろよ。

 父や姉、恵子の言葉が頭の中に渦巻く。
 恵子、萩野と話している。恵子はトミーとの仲が気まずくなっても、事実を突き止める覚悟だと告げる。

 恵子「あたしに何ができるか分かりません。でも、今信夫さんが背負ってるものと同じものをあたしも背負いたいんです」

 萩野「お前がそんなに言うなら、俺は止めやせん。金魚鉢の金魚だって、ガラスに頭をぶつけながら、そこにガラスがあることを知り、大きくなっていくんだ。ぶつかってみろ恵子」
 恵子「はい」

 このたとえ、変だよなあ。どうせ金魚鉢の金魚は死ぬまでそこから出られないのだから。

 続けて、萩野、
 「だがな、もしガラスにぶつかって、大きなコブが出来て、そいつがたまらなく痛くなったら、俺のところへ戻って来い
 と、熱っぽい瞳で言う。
 恵子「先生……!」

 (やっぱりこのオヤジ、あたしにメロメロwww)などと、軽薄なことは絶対思わない恵子さんでありました。
 でも、この台詞は萩野の愛の告白と言ってもいいだろう。だいぶ前、順子が二人の仲を疑うような発言をしていたが、正鵠を得ていたようだ。ま、恵子がどう思っているかは別だが。

 くそー、まだあるのか。
 港で、康夫と貞子が口論している。そこへすたすたと恵子が近付いてくる。
 恵子は、33年前のことを教えて欲しいと単刀直入に尋ねる。
 康夫「そんなに知りたいか?」
 恵子、大きく頷く。

 康夫「いいだろう。話してやろう。その代わり、それを聞いたらお前は志摩の家を出てくるんだぞ」
 貞子「あなた、やめて下さい」
 康夫「志摩タツオと言う男はな!」
 貞子「恵子、聞くんじゃないよ」
 康夫「志摩タツオと言う男は……」
 恵子(うぜえ……)
 だが、その時、「待って下さい」と声が飛んでくる。見ればトミーがやってきた。だから、仕事は?
 トミー「志摩信夫、志摩タツオの孫です。僕の口から恵子に話します」
 一拍置いて、立ち位置を変えている4人。
  
 トミー「恵子、君の一家を不幸にしたのは、全て僕の祖父、志摩タツオなんだ」
 恵子「どういうことですか?」
 トミー「僕の祖父は、ここにいらっしゃる君のおじいさんを暗殺しようとしたんだ!」
 恵子「……」
 トミー「祖父は敗戦後、そのことが公になるのを恐れた。だから、君のおばあさんとの再婚を考えたのも、君のおばあさんがその秘密に勘付いてるかもしれないと恐れたからなんだ」

 そう言えば、タツオは貞子と再婚しようと思ってたんだよな。これもねえ、敵である康夫の妻と結婚までしてその秘密を守ろうとするだろうかと、あまり説得力のない話に思える。結果的に、その再婚話のせいで、貞子と幸子が再び生き別れになってしまったのだが……。

 恵子は振り向いて、祖父母を見る。祖父母は無言。
 トミー「これで分かったろう。君の一家が辛い宿命を背負わなければならなかったのも、すべて、僕の祖父のせいなんだ。もし、僕の祖父さえいなければ……」
 と、貞子が力強い口調で口を挟む。
 貞子「いけないよ、もし、なんて考えたら、人の一生にもし、なんて考え始めたら、きりがないよ」
 トミー「でも、僕は考えないわけには行かないんです」
 逆らうトミー。
 康夫「当たり前だ!」
 トミーの応援をする康夫。

 康夫―貞子、トミー―純子を見ていると、やっぱり女性の方が現実的で、逞しいなぁと言う感じがする。清川もそうだが、過去のことにいつまでもうじうじ拘っているのが、とても幼稚に思えてくる。

 清川や康夫は当事者だからまだしも、祖父のことでくよくよ煩悶するトミーなんか、特にね。

 トミー「もし僕の祖父さえいなければ、君のおじいさんだって無事すぐ日本に帰ってきただろう。そうすれば君のお母さんだって、空襲で行方不明にならずに済んだかも知れない

 そうかなぁ?

 逆に、親子三人揃って空襲で死んでいたかも知れないぞ。

 トミー「そう言うことになれば勿論あんな場所で働かずに済んだだろうし、清川と言う悪魔にも魅入られずに済んだんだ」

 その代わり、恵子自身、生まれて来なかったんじゃないの?
 トミーの話を聞いているのかいないのか、美しい恵子の横顔。

 トミー「君が忌まわしい過去を引き摺って、苦しんでる時、何も知らず僕は、君を力づけようとしていた。そんな僕が、今、たまらなく恥ずかしいんだ!」

 恵子「信夫さん」
 トミー(康夫と貞子に)「これでいいんですね。これが真実なんですね」
 貞子「それが真実です。でも、今のあなた方には何の係わり合いもないことなんですよ」

 トミーの長台詞を全否定する貞子。
 貞子「あなた、昔のことは忘れて下さい! あなたが志摩家を憎めば憎むほど、恵子は不幸せになるんですよ!」
 重ねて夫に懇願する貞子。
 そう言われると康夫も答えに窮し、恵子に向かい、
 康夫「その男が好きか? 今の話を聞いてもまだその男の妻でいたいと思うのか?」
 恵子、無言で康夫を見返す。
 康夫「お前はワシの孫だ。ワシの血を引いたお前が、ワシを殺そうとした……」
 恵子「愛しています!」

 尚もぐじぐじと言い募る祖父の繰言をシャットダウンするように、キッパリ断言する恵子。
  
 その言葉に、会心の笑みを浮かべる貞子。対照的に、渋い顔をする康夫。ま、ずーっと渋い顔か。
 恵子「愛してるんです。信夫さんの妻でいたいんです!」

 トミー「恵子」
 恵子「信夫さん、あたしはどんなことがあっても、あなたの妻よ」
 トミー「恵子、ありがとう……」
 うるうるした瞳で見詰め合う二人。

 恵子「おじいちゃん、分かってください。おじいちゃんにとっては絶対に許せないことかもしれません。でもあたしは」
 康夫「もういい!」
 康夫は恵子の言葉を遮り、背中を向けてしまう。

 貞子「おじいちゃんは分かってくださったのよ、ね、そうですね? おじいちゃん」
 康夫「……」

 貞子「さ、もういいから、あなた方はお帰りなさい」
 貞子に促され、二人は一礼してから歩いて行く。
 貞子「あなた」
 康夫「志摩家の人間にしては出来た方だ」
 おお、トミーの愚誠が、康夫の復讐心を溶かしたのか?

 康夫「貞子、志津子に会ってみるか」
 貞子「……」
 康夫「どうしたんだ?」
 貞子「いいえ、別に……そうですね、是非会ってやって下さい」
 癌のことを言うべきかどうか、一瞬迷ったのだろう。

 その足で、吉川のアパートの近くまで来た二人、と、目の前を救急車が走って行く。
  
 何事かと見ている前で、幸子が担架に乗せられ、運び出されて行く。容態が急変したのだろう。

 康夫「どういうことなんだ、貞子、こりゃ一体どういうことなんだい」
 貞子「……」
 辛そうに目をつぶる貞子。
 そのことはすぐ恵子に電話で知らされる。トミーと二人でタクシーで病院へ着いた恵子だが、
 病院から出てきた康夫、再び態度を硬化させ、
 「許さん、ワシは決して許さんぞ! 志津子の命を縮めたのは貴様ら志摩家の人間だ!」と、吠える。
 トミー(めんどくせ)

 康夫「貴様に分かるか、33年ぶりに出会った自分の娘が、もう手遅れだと聞かされた父親の気持ちが?」
 トミー「わかりません」
 トミーの襟を掴んでトミーをなじる康夫。

 だけど、癌の責任まで志摩家に押し付けると言うのは……。幸子の心労の原因は、ほとんど清川だからね。

 康夫「恵子、お前は実の母親の体をあんなにした奴らが憎くはないのか? それでもこの男の妻でいたいと思うのか。お前がその気なら、たった今からお前はワシの孫ではない。志摩家の人間として、お前も共に滅ぼしてやる!

 怒りのあまりムチャクチャを言い出すジジイ。
 康夫「33年前に捨てたこの命を賭けて、お前たち一家を滅亡の淵に追い込んでやる!」
 トミー(……)
 恵子(……)
 ナレ「血と愛と憎しみの絆が今、恵子の体をキリキリと締め上げようとしていた」

 あー、やっと終わった。あと2話です。頑張りましょう。

 

  第27話「復讐の矢は弦を放れた」(1977年6月2日)

 さすがに引っ張りすぎたこのネタ、残りの2話は簡単に、一気に済ませたい。

 ……やるんじゃなかったこの企画。

 病院に入院した幸子。病室の前で心配そうに立っている恵子と洋一。
 後から吉川は幸子が癌で余命幾許もないことを二人に告げる。
 洋一「やだよーっ、母さんが死ぬなんて、俺そんなのやだよーっ」

 既に幸子の病気のことを知っていた恵子は対照的に落ち着き払い、洋一の背中に優しく手を置く。

 吉川は、幸子が死ぬ前に吉川海運の船が出航するところを見せて安心させてやりたいとつぶやく。
 例によって外へ飛び出した洋一、恵子が追いかけてきて、強く抱き合う。

 何度も百恵さんと抱き合って、長谷川さん、羨ましい。

 吉川の所へ腹心の大沼が来て、福原物産と言う取引先が仕事を断ってきたと告げる。
 吉川はすぐ、清川と志摩局長の差し金だと、いつものバーに行き、二人に文句を言う。
  
 康夫は康夫で、死ぬ前に幸子に、志摩家がメチャメチャになる様を見せてやると鼻息を荒くする。
 貞子「そんなことをして、志津子が喜ぶとお思いですか?」
 康夫「志摩タツオは罪を隠す為、お前に言い寄って再婚までしようとした男だ。そんな腹黒い男に繋がる全てを俺はこの手で叩き潰してやる!」

 昔のことをいつまでもぐちぐち言う康夫、さすがにいい加減ウンザリである。

 こんなはた迷惑なキャラを出して引き延ばさず、もっと早く終わっていて欲しかった。

 そこへまたまた吉川が来て志摩家の秘密を教えて欲しいと頼む。最初はにべもなく断っていた康夫だが、ここでやっと吉川が幸子の亭主だと知り、「志津子の為ならば」と、協力することになる。
 吉川は康夫から秘密を聞くと、その足で志摩局長のところへ押しかける。
 吉川「何もかも聞きましたよ、この人から」

 吉川は志摩家の不祥事をネタに、局長の権限で自分の会社に仕事を回してくれるよう強要する。
 志摩局長が断る気振りを見せると、吉川は終戦記念日などの特番に、康夫を出演させようかと脅す。

 吉川「終戦秘話と言う奴ですかな。和平工作を進めていた海軍士官の暗殺計画、戦後の日本を混乱に陥れたのは誰かと言う……」
 志摩「ま、待ってくれ」

 外聞を気にする志摩局長、最後は折れるしかなかった。
 その後、珍しくパンチ若杉と吉川のツーショット。
 吉川は、清川に狙われるかもしれないから、若杉に康夫を守ってくれと頼む。若杉は今、康夫の船で働いているのだ。

 志摩局長、仮に吉川の頼みを聞いても、今度は清川に脅されると、八方塞の状態だった。
 窮余の一策として、康夫の孫である恵子に説得させてやめさせるしかないと妻に意向を漏らす。

 しかし、頭の高い順子は「恵子に頭を下げるなど真っ平だ」と反発する。
 最終回も近いと言うのに、順子の性格は全く変わらないのであった。

 順子が声を荒げて、元はと言えば夫の父親のせいじゃないかと言うと、温厚な志摩局長が珍しく怒って「バカッ」と妻に手を上げる。
 そんな修羅場に、恵子が帰ってくる。
 志摩「恵子、話がある。この通りだ。何も言わずに私の頼みを聞いてもらいたい」
 恵子「お父様」
 志摩「我が家の浮沈は君にかかっている」
 恵子「一体私に何を?」
  
 順子はソッポを向いていたが、夫に懇願され、屈辱と怒りで煮え滾るハラワタを抑え、物凄い顔で頭を下げる。
 順子「恵子さん、この通りよ、これからお願いすること、どうか聞いて頂戴」

 二人頭を下げられては恵子も断る訳に行かず、翌日、康夫の船に出向くが、康夫は全く耳を貸そうとしない。
 康夫「恵子、お前はお前を産んでくれたおふくろさんの方が大事なのか、それとも昨日今日知り合った、亭主の家のほうが大事なのか?」
 恵子(ダメだこりゃ)

 しかし、確かに幸子は産みの親だけど、産んですぐ人手に渡してるんだよねー。
 恵子、仏頂面で祖父の言葉を聞き流していた……と思いきや、結構こたえたのか、次のシーンでは萩野の前で突っ伏して嗚咽している。
 恵子の嘆きを我がことのように辛そうに聞いていた萩野だが、

 「ねんねんころりぃ〜よ〜ころりよ〜」
 突然、子守唄を歌いだす。

 そんな奴、大映ドラマにしか出てこねえよ!……あ、大映ドラマだったか、これ。
 泣き濡れた顔を起こす恵子。
 萩野「眠れ、恵子、そのまま泣き疲れて眠れ、あのグリム童話の眠り姫のように何年も何年も眠り続けるんだ。今の俺にはそれしか言えん。もし俺の歌に魔法の力があったら……頼む恵子、眠ってくれ!」

 これまた、ドラマでしか聞けそうもない台詞だ。ドラマだから良いけどさ。
 恵子「先生……」
 萩野、どさくさに紛れて、恵子の顔を胸に抱き締める。

 萩野「このままお前を連れてどっか遠くへ飛んで行ってやりたい。誰も住まない、誰も知らない遠い遠い国へお前を連れて飛んで行ってやりたい」

 これはもう完全な、愛の告白ですな。やるー。

 これで、二人が不倫の恋に落ちたらすげー面白いのだが、今までのドラマの流れとして、無論そんなことにはならず、萩野、急に恵子の体を離し、「すまん、許してくれ」と、教育者の顔に戻って部屋を出て行ってしまう。

 萩野、その足で外務省へ行き、トミーに会い、「恵子を守ってやってくれ」と適当なことを言う。
 このシーン、要ります?

 志摩局長、またまたあのバーで清川と会っている。
 脅しに屈し、吉川に有利になるよう取引相手に行政指導をしていることを清川に責められる。
 志摩局長は、こればかりは見逃して欲しいと頭を下げる。
 
 清川「だから要するに、あの老人を喋れなくすればいいんでしょう?」

 清川の意味ありげな一言に、思わず振り向く局長。
 貞子、娘の病室の前まで来るが、結局部屋に入ることは出来ず、そっと花束を置いて帰るのだった。
 だが、病院を出たところで、いきなり数人のチンピラに襲われ、どこかへ連れ去られてしまう。清川の命令を受けた、三郎たちであった。
 恵子が幼稚園を退勤して帰っていると、向こうから康夫がやってきて、貞子がさらわれたことを知らせる。
 康夫「奴ら、俺の口を封じる為に……」
 恵子「おばあちゃんが?」

 康夫は、貞子がどこへ連れて行かれたのか探って来いとムチャなことを命じて去って行く。
 恵子、何を思ったか薄暗いアングラバーみたいなところへ行き、久しぶりに不良時代の友人二人と会う。
 この二人、何話ぶりだろう?

 恵子は友人の着ていたジージャンを見て、「少しの間で良いの、これ貸して」と頼む。

 いってみれば、不良時代のファッションに戻った恵子、三郎たちのヤサへ向かっていると、途中でパンチ若杉と合流する。若杉も、康夫に頼まれて探していたのだろう。
  
 若杉が見張りをぶっ飛ばしている間に中に踏み込む恵子。
 案の定、三郎たちに監禁されている貞子の姿があった。

 恵子、ジーパンのベルトを外し、ムチのように構える。直後、ジーパンがずり落ちて、パンツが丸見えになったらドリフである。

 若杉と一緒に、チンピラたちをぶちのめす恵子。
 だが、三郎が貞子にナイフを突きつけて、手を引くよう脅す。
 貞子も、自分がここにいれば康夫も局長を苦しめることが出来ないから、ここにいた方が良いと言う。
 貞子「さあさお帰り、そしておじいさんにそう言っておくれ、もう昔のことなんか忘れてバカな考えはやめなさいって!」
 三郎「見ろ、ばあさんもこう言ってんだ。とっとと帰れ」
 だが、その腕に若杉が横から掴みかかり、その隙に恵子は強引に貞子を引っ張って外へ逃がす。
 貞子、ここにいた方が良いとか言ってたのに、外へ出ると猛烈なスピードで地上へ出る階段を駆け上がる。
 貞子を追う三郎の服を掴んで止める恵子。
 だが、道路の方から急ブレーキの音と、大きな衝突音が聞こえ、悪い予感に思わず凍り付く三人。
 三郎はさっさと柵を飛び越えてトンズラ。恵子と若杉が急いで階段を上がると、
 貞子、死す!

 ……あっさり死ぬなよなぁ。
 と言っても、即死ではないんだっけ。
 恵子、すぐ駆け寄ろうとするが、
 若杉「今行ったら、どうしてこうなったか、警察に何もかも話さなきゃならなくなるぞ、そしたら、志摩のうちに、信夫君のうち……」
 と言われ、祖母を見捨ててその場を去るしかなかった。
 恵子「おばあちゃん……」

 恵子は、トミーと会って事情を話す。
 帰宅して、トミーがすぐ警察に電話して事故のことを聞こうとしているのに、順子が素早く気配を聞きつけて恵子を居間に連れて行く。
 順子「あなた、おじいさんにちゃんと話してくれたんですか」
 恵子「……」
 志摩局長「どうなんだ、君が説得さえしてくれれば、清川だって無理なことは……」
 順子「恵子さん、あなたがしっかりしないからよ」

 さすがの恵子も、その握った左拳を順子の憎たらしい顔面にめり込ませたくてしょうがないのだった。

 が、トミーが「今更なに言ってるんですか、恵子のおばあさんは、逃げる途中車にはねられて……」と割って入ったので、うやむやになる。
 
 志摩局長「ほんとかっ」
 トミー「父さん、父さんはおじいちゃんがやったことと、おんなじことをまた繰り返してるんですよ。自分の地位を守る為に、陰謀を張り巡らして、他人を犠牲にして……」
 順子「何を言うんです、それもこれもこの志摩家が大切だから……」
 トミー「家がなんです、名誉がなんです? 血がなんだ。そんなものなくたって、人間は幸せに生きて行ける筈ですよ」

 口を極めて訴えるトミー。さらに、恵子が、事故に遭った祖母を目の前にしながら、志摩家のことを慮って断腸の思いでその場を離れたことを訴えると、
 志摩局長「本当か、恵子?」
 と、さすがの志摩局長も顔色を変える。

 トミー「父さん、どうして恵子のこんな気持ちを分かってやってくれないんですか? 父さん、母さん!」
 恵子「信夫さん、もうやめて……」
 涙まじりに、夫の腕を掴む恵子。
 そんな恵子の様子を見て、極悪非道(言い過ぎ)の順子の表情にも、後の「改心」の伏線のような動揺が生じる。
 さて、気になる貞子の容態だが、吉川家を訪れた若杉の台詞であっけなく死亡が判明する。
 若杉「出血多量と、お年の為に」

 洋一「おばあちゃん、死んじゃったのか?」
 しばらく起居を共にしたこともある洋一もショックを受ける。すぐそれを貞子の娘である母親に知らせに行こうとするが、父親に止められる。
 打ち続く不幸に、その場に崩れ落ち、「ああーっ! ううっ……」と嗚咽を漏らす洋一。
  
 若杉は、貞子はただの事故死として片付けられたこと、遺体は康夫が引き取ったことなどを話す。
 吉川「じゃあ、志摩家の秘密はばれなくて済んだんだな?」
 若杉「社長はそれで喜んでんですか?」

 暗い顔で、つぶやく若杉。吉川の方を向いて、

 若杉「それで今後も、志摩局長を脅すネタが残ったと、社長は喜んでんですか?」
 
 吉川「若杉、お前……」
 若杉は洋一の側にしゃがみこみ、「洋一君、おばあちゃんのところへ行くかい」と、優しく話しかける。
 洋一が即座に頷くのを見て、笑顔を見せる。若杉の笑顔は、この陰気なドラマの中で貴重な存在である。

 くそー、まだあるのか。
 翌日、恵子とトミーがタクシーで港へ行くと、康夫が船の舳先に貞子の棺を置いて、彼流の弔いをしているところだった。
若杉と洋一の姿もあった。洋一、恵子を見て、「姉さん!」と駆け寄る。
 恵子がトミーに背中を押されるようにして船に乗ろうとすると、
 「恵子、船に乗っちゃ行かん。ここは志摩のうちの人間の来るところじゃない!」

 ……めんどくせ。この出す必要もない頑固キャラのお陰で、話数が無駄に延び、終盤が全然面白くなくなり、こうして自分がレビューするのに膨大な時間を費やさせられているのかと思うと(しなきゃいいんだけどね)、ほんとーに腹が立つ。

 トミー「おじいさん、恵子はおばあさんと血の繋がる……」
 トミーが何か言おうとするが、
 康夫「ほざくな!」と、一刀両断。

 康夫「貞子を殺したのはお前の血だ! 分かるか、お前のじいさんが(以下略)」

 しかし、今回の事故についてだけ言えば、むしろ責任は強引に連れ出そうとした恵子と若杉にあるんじゃないかと言う気もする。無論、拉致した三郎、三郎に命じた清川にも責任はある。
 若杉も恵子をとりなすが、康夫はうだうだと理屈を並べて折れようとしない。
 さすがの若杉も「やれやれ」と言う顔で聞いている。

 恵子に、線香も上げさせない康夫。若杉は貞子の持っていた財布を形見だと言って恵子に投げ渡す。
 更に康夫は、船に乗りたかったら、今すぐトミーと別れろとムチャを言い出す。
 が、恵子は静かに首を振り「私は信夫さんの妻です、志摩信夫の妻です。私は志摩恵子です!」と、叫ぶ。
 康夫はこれ以上議論しても無駄だと言う顔で、若杉に出港を命じる。
 エンジンを響かせ、岸壁を離れていく船。

 どうでもいいけど、水葬にするつもりなの?
 気丈に振る舞っていた恵子だが、さすがに最後は形見の財布に顔を埋めるようにして、「おばあちゃん、許してーっ」と号泣するのだった。
  
 沖へ出て、最後の別れを告げる康夫。若杉と洋一が棺を傾けると、布に包まれた貞子の遺体が垂直に落下する。

 リアルでやだなぁ。
 恵子が帰宅して、自分の部屋で貞子の形見の財布に手を合わせていると、順子がノックをして入ってきて、無言で貞子に線香を上げ、手を合わせる。
 意外な姑の行動に、恵子は驚く。気でも違ったんじゃないかと。

 順子は、最後まで無言で、軽く頭を下げて出て行く。
 恵子「おばあちゃん、ありがと」

 恵子にとってはとても温かで、心の休まる存在だった貞子への、これが最後の言葉だった。

 一方、康夫は志摩局長のところへひとりで押しかけ、もう吉川海運とは関係なく、即座に行動に移ると宣言する。具体的に、かつての戦友や上司などを集めて、みんなでテレビに出て証言してやると鼻息を荒くする。

 八方塞の志摩局長、今度は恥も外聞もなく、吉川のところへ行き、仕事上の便宜を図る代わりに、康夫の動きを封じて欲しいと頼み、吉川は吉川で、あっさりその取引に応じる。

 吉川は大沼と二人で港の康夫を訪ね、無理矢理車に乗せてどこかへ連れ去る。

 そのことを松崎から知らされた清川は、例によって例の如く、恵子に狙いを付ける。
  
 恵子が保母さんとして、子供たちを連れて路上を歩いていると、最後尾の子供が突然不審者に抱え上げられる。
 あ、どっかで見た顔。

 男「動くな、この子がどうなっても良いのか?」
 子供「せんせい、こわいよーっ」
 城達也ナレ「瞬間、恵子の周りから全ての物音が消えた。恵子は恐ろしいほどの沈黙と空白の中に立ち尽くした」

 

  第28話「若き絆の旅立ち」(1978年6月9日)

 いよいよ最後です。ああ、長くつらい戦いだった……。

 27話の最後から引き続き、暴漢と対峙している恵子。
 恵子「その子を一体どうしようってんですか」
 男「どうもしやしねえよ、お前が大人しく一緒に来てくれさえすればな」
 恵子「行きます、ですからその子を放して下さい」

 恵子にはそう答えるしかなかった。
 一方、前回は(スケジュールの都合か)全く顔を見せなかった幸子。病室に吉川が見舞いに訪れている。
 幸子「あなた、私は一体、私の病気は……?」
 吉川「うん、そんなことより、今日はお前にあわせたい人があってな……どうぞ」
 吉川の言葉に静かに入ってきたのは、意外にも康夫だった。
 吉川「どうだ、覚えがあるか? この方と離れたのは確かまだ9つの時の筈だったな」
 幸子「……はぁっ、あなた……あなたは……生きてらしたの……」
 ベッドの上に半身を起こして、じっと康夫の顔を見ていた幸子、それが誰か悟り、声を喘がせる。

 康夫「志津子……!」
 幸子、康夫のゴツゴツした手を握り締め、感動の涙を流す。康夫もさすがに感極まった様子。

 しかし、今更だけど、このドラマ、「何十年ぶりかの再会」が多過ぎ。

 吉川は廊下へ出て、大沼に、隣の部屋に康夫を入院させ、病院から一歩も出すなと厳命する。
 康夫を幸子の近くに軟禁状態にして、マスコミや清川と接触させない作戦なのだ。

 康夫は、とにかく、娘にあわせてやると言う吉川の言葉に、大人しくついてきたのだろう。
 と、大沼が立ち去ったあと、今度はさっきの男が現れ、自分が清川の部下であること、恵子の身柄を預っていることを告げた上、恵子と康夫の身柄交換を申し出る。
 この男を演じているのは大木正司さん。昔は、こんな尖った襟の服を着ていたんだね。

 吉川「冗談も休み休みに言え、俺は志津子の為に荷物を満載した船の出港を見せてやりたいと思ってるんだ。いいか、清川に良く言っとけ、恵子をネタに脅かしても俺はビクともせんとな!」

 清川、志摩局長とバーで会い、吉川海運への協力をやめない限り、恵子を返さないと脅す。
 が、志摩局長、家の名誉の方が大事だと言って、屈服しない。
 一方、トミー、いかにもついさっき会ったばっかりと言う感じの同僚AとBと肩を並べて、外務省から出てくる。
 A「良かったな、いよいよ海外研修が決まって」
 B「パリか、運が良いよな、お前は」
 A「どうしたんだよ、浮かない顔してるじゃないか」
 トミー「いや、別に、つーか、お前ら誰だよ?」(註・大嘘です)

 どうやら、かなり都合よく、トミー、パリへ研修に行くことになったらしい。

 と、向こうから、荻野が来て、恵子がいなくなったことを知らせる。
 その恵子、何処かの倉庫の中に監禁されていた。その前に、実父の清川が立っている。

 清川「かわいそうな娘だな、お前も……吉川も志摩も、会社の為や、家の名誉の為に、二人ともお前を捨ててしまった。両方の家の為に一生懸命尽くして、その挙句がこの有様だ」

 散々恵子を苦しめ痛めつけていた清川にそんなことを言う資格はないのだが、ここでは、本気で父親として恵子を不憫に思っている感じが滲んでいる。
  
 恵子「……かわいそうなのは、お父さんです」

 恵子の言葉に、険しい顔で振り向く清川。

 恵子「だって、私が捨てられたと言うことは、結局お父さんが見捨てられたことに……」

 うん……、そうなるかなぁ?
 清川「恵子、お前は本当に私を父だと思ってるのか?」
 恵子「……」
 清川「それならば、その父の頼みを聞いて欲しい。お前が病院へ行くのは誰も文句は言えんはずだ。見舞いに行くふりをして、あの老人を、お前のお祖父さんを、それとなく連れ出して欲しいんだ、頼む」

 無言の恵子に対し、清川は園児たちのことまで持ち出して脅す。恵子の脳裏に(とってつけたように)園児たちの楽しそうに遊ぶ姿が浮かぶ。
 で、次のシーンで早くも幸子のところへ来ている恵子。
 幸子「まぁ、良く来てくれたわね」
 恵子「母さん、元気ね、元気になったのね」
 幸子「ありがとう、お父様、びっくりなすったでしょう、こんなに大きな孫がいるなんて」
 康夫「驚いたのは、この子が志摩のうちのものになってることを知った時だ」
 幸子「お父様……」
 自分の復讐のことしか頭になく、空気を読まない父親に、悲しそうな目を向ける幸子。
 恵子「おじいちゃんのそんな気持ちが、吉川海運と新日本海運の争いに利用されてるってことが分からないんですか?」
 幸子に代わって、恵子が訴える。

 康夫「なぁにぃ?」
 恵子「おじいちゃんが志摩の家に恨みを持ってその気持ちが、結局は二つの会社の争いに利用されてるだけなんです!」
 幸子「恵子……」
 康夫「誰が何と言おうと、わしはわしの気持ちを貫くだけだっ」 
 手に負えない頑固ジジイの康夫、そう吠えて病室を出て行くが、出たところで大沼にキャプチャーされる。
 言うことは勇ましいが、実はあんまり強くない康夫、そのまま隣の病室へ叩き込まれてしまう。

 トミー、自宅にて、父親を詰問している。
 しかし、終盤になると、志摩局長が清川と吉川の間を、短時間のうちに行ったり来たりするので、「今、三者はどういう関係になってるんだっけ」と、分からなくなることがしばしば。
 珍しく家にいる純子、二人の会話を聞いていたが、
 純子「ね、若杉さんに聞いたんだけど、我が家に恨みを持ってるって言う大崎デンゾウっておじいさん、どうやら吉川海運の社長さんに連れて行かれたらしいって……」
 と、父親の顔をチラチラ見ながら、言いにくそうに話す。
 
 トミー「そうか、それで分かった。父さんは恵子のお祖父さんを吉川に監禁させて、その代償に吉川海運に仕事を……」
 順子「やめなさい、信夫、どうしてお父様の苦しい気持ちを分かってあげないの? 今あのお祖父さんに無分別に行動されたら、この志摩家の名誉はめちゃくちゃになってしまうのよ」
 トミー「僕はそんな地位も名誉も要らないよ!」
 純子「あら、海外研修のパリ行き、おじゃんになっちゃってもいいの?」
 トミー「自分の名誉の為なら、平気で他人を犠牲にする、そんな態度が許せないんだ!」

 トミー、そう叫んで飛び出そうとするが、意外にもその前に恵子が立っていた。
 トミー「帰ってきてくれたのか」
 恵子、トミーの肩越しに、順子たちに頭を下げる。
 恵子「ご迷惑をお掛けしました」
 トミー「よく帰って来れたね」
 例によって、しゃしゃり出てくる順子。トミー(いっぺん、ぶっ飛ばしたろかこのアマ)←管理人の妄想です
 順子「恵子さん、あなた清川さんに何か言われてきたんじゃないの?」
 恵子「許してください、みんな父が、父がいけないんです」
 トミー「やめたまえ、君には責任はない」
 恵子「信夫さん、もうお父様を責めるのはやめて……お父様にはお父様達の世界があるのよ。そして祖父には祖父の世界が……」

 両者の融和への努力を放棄したかのように、淡々とトミーに語りかける恵子。

 志摩局長「恵子、お祖父さんに会ったのか?」
 恵子(頷いて)「でも、祖父は考えを変えてくれませんでした。でも、病院で母と暮らしていれば、祖父の心もいつかは解けると思います」
 順子「そんなこと言ったって、清川さんが黙ってないでしょ」
 恵子「清川の父には、私がついています。父には私を除いて誰一人肉親がいません。私が側にいてあげればあるいは……ですから、しばらくの間、私は清川の父のところへ」
 純子「あなた、ほんとに帰るって言うの?」
 恵子「はい」
 トミー「バカな、僕がそんなことを!」
 恵子「分かって、行かなければならないんです。帰らなければ……」
 思わす檄するトミーを、諄々と諭すように説得する恵子。

 トミー「ひょっとしたら清川は帰らなければまた幼稚園の子供たちに……そうなんだな?」
 トミーはなおも恵子を行かせたくない風情だったが、
 恵子「今私が帰らなければ、清川の父は何をするか分からないわ。お願い、行かせて。大丈夫、血の繋がった親子ですもの」
 と、敢えてその手を振り切る。
  
 恵子、あの倉庫へ再び戻ってくる。
 清川「どうやら、あの老人を連れ出すことには失敗したらしいな」
 恵子「いいえ、はじめからそのつもりはありませんでした」
 清川「うーん?」
 恵子「ただおじいちゃんに、会社の争いに巻き込まれるのはつまらないってそう言いに行ったんです。それに、あそこにいる限りおじいちゃんは安全ですし……志摩の家のためにも」
 清川「なるほど、そういうことか……それで良く帰ってきたな、やはり、幼稚園の子供たちのことが……」
 恵子「違います。私があなたの娘だからです」

 恵子の意外な一言に、一瞬言葉を失う清川。

 恵子「お父さん、ひとつだけ……」
 清川「そう言う言い方はやめてほしい! 私はお前に、父らしい気持ちも、娘だと言う気持ちも、ただの一度も持ったことはないんだ」
 無論、清川がそれくらいであっさり人間らしさを取り戻す筈もない。

 恵子「ひとつだけ教えてください、何故そんなに吉川海運が憎いんですか?」
 この期に及んで、根本的な質問を投げる恵子。
 
 清川「何度言ったら分かるんだ。昔私の父は、吉川の卑劣な策謀で会社も船も奪われて死んで行ったんだ」
 恵子「それだけですか。お父さんが吉川さんを憎んでいるのは、本当はお母さんが、吉川夫人になっていたからじゃないんですか?」
  
 恵子の鋭い指摘に、顔色を変える清川。畳み掛ける恵子。
 恵子「そうでしょう、愛していた女性が吉川夫人になり、しかもそのお母さんは吉川さんを愛しているから……」
 清川「違う!」
 恵子「いいえ、お父さんはお母さんを愛してるんです! 今もずっとお母さんを、だから吉川さんが憎くて……」
 清川「バカなことを言うんじゃない! 私が吉川をとことん追い詰めてやりたいのは、そんな甘い気持ちじゃない」
 あくまで否定する清川。

 恵子「でも、私はそう信じます。いいえ、信じたいんです。お父さんは今もお母さんを愛していて、だから吉川さんを憎むんだって……」
 清川、これ以上恵子と一緒にいるのが耐えられなくなったように、急にその場から出て行く。
 「恵子、私は失敗は絶対に許さん男だ。この償いは、きっとして貰うからなっ」と言い残して。
 翌日、純子、若杉のところへ出向き、何とか恵子を助けられないか相談する。
 若杉「だけど、仮に彼女を助けたら、カッとなって清川が何をやるか分からないぜ。今は彼女が手の内にいるから清川も大人しくしてるんだよ。いや恐らく、彼女はその為に帰って行ったんだろう?」
 純子「だとしたら、なおさら、恵子さん一人に背負い込ませるわけには行かないわ」
 若杉「万が一その為に、君の家の秘密がばれることになっても良いのかい?」
 純子「仕方ないわ」
  
 純子、背中を向けて、「海の男の奥さんに、地位とか名誉とか要らないわ」

 さりげないプロポーズ(?)に、満更でもない顔になる若杉。
 純子、若杉の顔を見てやろうとするが、若杉、照れくさそうにそっぽを向くのだった。

 これで、割と長く続いた二人の関係も、事実上のハッピーエンド。
 劇中では、ほとんど唯一、血の繋がりとか忌まわしい過去とか、そう言うドロドロしたものの絡まない恋愛関係だった。

 ……ま、どうでもいいんだけどね(おいっ)
 一方、トミー、父親に、いっそ康夫にテレビで何もかもあらいざらいぶちまけさせるべきだと主張する。
 順子「信夫さん、あなた、志摩の家がめちゃめちゃになってもいいっていうの?」
 トミー「母さん僕に、秘密を背負って一生苦しめって言うんですか? 一生恵子にすまないと思い続けながら生きろっていうんですか」

 トミーの強い言葉に、志摩局長も順子も目を伏せる。
 トミー「わかったよ、もう父さんには頼まないよ」
 と、家を飛び出して行く。
 その康夫、つい最近初めて会った孫の洋一に連れられて、病院から出てくる。
 大沼が懸命に引き留めようとする。
 洋一「だけどおじいちゃんが表出たいって言ってんだよ」
 大沼「とにかく、戻って下さい、ね」

 大沼も、相手が社長の息子なので、あまり強い態度が取れない。
 と、彼らの前に車が止まり、吉川と真砂子が出てくる。
 吉川「どうした」
 真砂子「どうしたのよ、洋一?」
 洋一「父さん、おじいちゃんが表へ出たいって言ってるんだよ。いいだろ」
 吉川「いや、いかん! 大沼!」
 結局、康夫はそのまま病院へ連れ戻される。
 殺風景な康夫の病室。康夫が吉川に抗議している。
 康夫「志津子のそばにいさせてやるとかなんとかうまいこといって、こりゃあていのいい監禁じゃないか。それとも勝手にわしが志摩家の秘密をテレビやなんかに話しちゃ具合が悪いのかね?」
 吉川「そこまでご存知なら、もう何も言わん。あんたが私のところにいてくれるというだけで、志摩局長は私のところへ仕事を回してくれるんだ。頼む、志津子の為にも、どうかしばらくこのまま……」

 しかし、このドラマって、やたら登場人物が監禁・軟禁されるシーンが多いような気がする。
  
 廊下でその会話を聞いていたトミー、たまらなくなったように飛び込む。……って、洋一も真砂子もおったんかい!

 吉川、そんな話、子供たちの前でするなよな……。

 トミー「吉川さん、お祖父さんを自由にしてあげてください」
 吉川「信夫君、そんなことをしたらこの人はあんたんちの秘密を……」
 トミー「いいえ、構いません、いっそそうして頂いた方が良いんです。お祖父さん、どうか、僕のうちのことは気にしないで思った通りにして下さい」
 トミー、康夫の肩を抱いて、熱っぽく語りかける。

 序盤の、親に頭を押さえつけられている優柔不断なトミーの姿は最早そこにはない。横で見ている真砂子も、元婚約者の成長ぶりを眩しそうに見詰めている。

 どうでもいいけど、真砂子さんには新たな恋の芽生え、なんてのが一切用意されてなかったな。

 吉川、そんなことをされたら困ると反対する。
 ここで、康夫が「そうか、やっぱりあんたたちはわしを利用してたんだな、恵子の言った通り」と、突然悟りを開くのが、いかにも「最終回だから巻いていこう!」と言う感じである。
 康夫「なんっということだ! 昔、日本の運命を左右するほどの事件(註1)が、その戦後33年にわたる恨みが、単なる会社同士の争いに利用されていたのか、ふっふふふ……」
 (註1……ほんとはそんなに大した事件じゃありません)

 自嘲気味の笑いを漏らす康夫に、
 トミー、「何もかも明らかにしてください、つらいけど、僕は志摩家の人間として、甘んじてそのそしりは受けます。さ、行きましょう……」
 吉川「待ってくれ! あともう少しで吉川海運は立ち直るんだ。そうすれば、志津子にもうちの船が出て行くのを見せてやることが出来るんだ」
 真砂子「お父さん、それでお母さんが喜ぶと思って? 信夫さんの言うとおりにさせてあげて、お願い!」
 と、意外な助け舟が出る。
 吉川「お前はこのまま吉川海運が潰れてもいいと言うのか」
 真砂子「お父さん、元はと言えばお父さんが清川さんに恨まれたのは、そうして会社を大きくしようとしたからじゃありませんか。なりふり構わず、他人を犠牲にしてまでも会社を発展させようとするから、だから清川さんに……」
 自分の意見に共感してくれる真砂子に、熱っぽい視線を送るトミー。

 洋一も「また一からやり直せばいいじゃないか」と姉に同調する。
 トミー「ありがとう、僕も、僕のうちのことはもう諦めている。いや、昔祖父が犯した罪は僕たちが償うべきだと思う。そのことで志摩家の全てが失われたとしても、君たちが言ったとおり、僕は恵子と二人、志摩家を一から出発させることが出来ると思う」

 ……しかし、今更そんな戦時中の罪(と言っても、最早立証不能で、当事者も死んでいる殺人未遂なのだが)が世間に暴かれたとしても、「全てが失われ」るなんてことになるだろうか? せいぜい、志摩局長が辞職するくらいだろう。会社存亡の瀬戸際に立つ吉川海運とは、事情が異なると思うのだが。

 彼らの話を横で聞いていた康夫、つと立ち上がって、「恵子に会わせて欲しい」とトミーに頼む。
 トミーが、恵子がまだ清川のところにいると話すのを、病室の外で、幸子が立ち聞きしていた。

 次のシーンでは、バーのカウンターで清川と二人で会っている幸子。時間がないのでかなりテンポが速くなってきた。
 幸子「お願い、もうこれ以上、恵子をいじめないで……」
 清川「それじゃあ、あなたがあの老人を、いや、あなたの父親を吉川のところから連れてきてくれますか」
 幸子「清川さん、私の命は、もうあと少しです。みんなは隠してます。でも、自分の体のことは自分が一番良く分かります。清川さん、これが最後のお願いです。どうか、どうかお願い……」
 清川、さすがに厳粛な面持ちになり、そっと幸子の肩に手を置き、立ち上がる。
 清川「一緒に来て貰いましょうか」
 幸子「何処へ?」
 清川「恵子のところへ……実の母のこんな姿を見ても、恵子は心を動かされないかどうか」
 幸子「はぁーっ、清川さん、あなたそれほどまでに吉川のことを……」
  
 さて、気付けば長いこと清川の下っ端として活躍(失敗の連続だが)してきた三郎、今度は、萩野の幼稚園に現れ、仲間に園児を拉致させようとする。が、その前に颯爽とパンチ若杉が立ちはだかる。
 揉み合う若杉と三郎。考えたらこの二人、
 静弦太郎(アイアンキング)と葉山譲治(宇宙鉄人キョーダイン)と言う、70年代特撮ヒーローの組み合わせなんだよね。

 で、今回もあっけなく任務を放棄して、逃げ出す三郎。これで何回目の失敗だろう?

 今回は、若杉もそのままに捨て置かず、三郎を追いかける。

 三郎の車を、タクシーで追跡すると、港の倉庫へ到着。どうやら、そこに恵子が監禁されているらしい。
 若杉は、電話ボックスに入り、「佐智子さんお願いします」と言っている。誰のことかと思ったら、夏純子のことだった。特撮オタク以外どうでもいいことだが、石橋正次と夏純子は、「アイアンキング」で既に共演済みだった。
 三郎「すいません、とんだ邪魔が入って……」
 大木「まぁ、いい」

 1話からでてるのに、前回初めて登場した大木に、サングラスを外してペコペコ謝る三郎。しかも恵子の目の前で。
 三郎、すっかり哀愁が漂うキャラになっちゃったなぁ。
 若杉から恵子の居場所を知らされた純子は、恵子を助けるべきではないかと母親に訴えている。この二人のツーショットはかなり珍しい。……と言うか、初めてか?

 でも、前にも書いたかもしれないが、この二人実際は7つくらいしか年が違わないんだよね。
 と言うか、順子、そもそもトミーとも、13歳くらいしか離れていないのだ。

 純子「恐らく今頃恵子さんは、我が家の為に苦しんでるのよ。我が家と、実の父親との板ばさみになって苦しんでるんだわっ。ねえ、お母様、恵子さんは今までたとえようのない苦しみを味わってその悲しさに耐えて生きてきたのよ。その挙句に今のような……私だったらとても生きていけないかもしれない」
  
 娘の言葉を黙って聞いている順子。
 純子「お母様、分かってらっしゃるわね、それでもお母様は恵子さんを許そうと……助けようと思わないの?」
 順子「……」
 純子「それなら悲しいけど私、お母様を自分の母親だとは思えなくなるかも……」

 純子はそう言い捨てて立ち去ろうとするが、ここでやっと順子が「佐智子さん」と、その手を取る。
 そして、次のシーンでは、「もしもし警察ですか、あの、誘拐された若い娘を助けて頂きたいんです」と、電話をかけている順子だった。

 やや物足りないけど、ウルトラ意地悪シュウトメとして数々の名場面をものしてきた順子の、改心の瞬間だった。

 ……しかし、いかにも最終回だから急いで片付けましたと言う感じがするなぁ。ま、今回、そんなのばっかりだけど。
 次のシーンでは、運命の家族三人が、例の倉庫で会っている。
 清川「どうだね、おじいさんのところへ行ってくれるかね」

 幸子まで利用して、恵子に康夫を連れてこさせようとする清川。
 念の為、彼が康夫に固執するのは、彼が志摩家の秘密を握っていて、吉川がそれをネタに志摩局長に自分の会社に有利なように取引先に働きかけさせているのを阻止する為である。

 幸子「いけない、恵子、そんなことをしたら、あなた、志摩さんのうちを裏切ることになるの、いけない」
 苦しそうに息も途切れ途切れに訴える幸子。
 清川「どうした恵子、お母さんを早く病院に返したくないのかい? 私だってこんなことはしたくない、しかし、たとえお前たちに恨まれようと、私は吉川が憎いんだ!」
 恵子「お父さん……」
 清川「ああ、お前が言ったように、志津子が吉川の妻であることを含めて、私はあの男が憎いんだ!」
 恵子、目に涙を溜めて、両親の顔をじっと見詰めていたが、
 「お父さん……、お母さんをお願いします」と、清川の言葉に従い、病院へ向かおうとする。
 だが、「恵子さん、やめろ、そんなことより早く逃げるんだ!」と、意外にも若杉が現れる。
 恵子「お願いです。このまま、母を助ける為に私……」
 若杉「じゃあこの清川の言いなるになるってのかよ!」
 と、ここで、順子の電話を受けた警察が数台のパトカーで早くも急行する。
 外で見張っていた三郎たち、慌てて逃げ出す。

 しかし、三郎たち、見張っていた筈なのに、易々と若杉に侵入されてるんだよね。最後まで役に立たない人だ。

 三郎は倉庫に入り、「サツだ、清川さん、裏から」とだけ言って、自分もさっさとトンズラしようとする。若杉は「おい、待て」と、三郎の後を追う。
 幸子「あなた、早く逃げて……」
 が、清川が逃げる暇もあればこそ、すぐ二人の刑事が駆けつける。
 刑事「志摩恵子さんですか?」
 恵子、黙って頷く。
  
 外では、若杉が三郎をボッコボコにしていた。
 若杉「やぁろぉおおーっ」
 馬乗りになって、一方的に三郎を殴る若杉。

 三郎、昔はもうちょっと強かったと思うんだけど……。
 若杉、三郎のサングラスを取り、
 「おい、てめえ、一体いつまでバカな真似やってんだ、ええっ?」

 三郎、不貞腐れたように「うるせえ、どうにでもしろよ」

 若杉「ああ、どうにでもしてやるよ。……海の上でな。徹底的にしごいてやる!」
 若杉の言葉に、少し眩しそうに顔を起こす三郎。

 こうして、三郎は、船乗りとして更生の道を歩むことになるのだった。これまた、かなり強引なオチである。
 これが、様々なネタを提供してくれた三郎のラストカッとになるのかな? ご苦労様でした。
 刑事は当然、清川を連行しようとする。
 刑事「ここは新日本海運が借りてる倉庫ですね。そしてあんた、その新日本海運の専務さん」
 刑事「一緒に来ていただけますね」
 さすがの清川も、現場を押さえられては言い逃れできない。茫然と俯いていたが、やがて観念したように、
 「恵子、お母さんを頼むぞ」と、一言。
 清川、刑事と一緒に行こうとするが、突然、恵子が「待って下さい!」と叫ぶ。
 思わず振り向く三人。恵子は、清川に向かい、「お父さん」と呼びかける。
  
 刑事「お父さん……? あんた、誘拐されてきたんだろ?」
 恵子「違います。私は、父に、会いに来たんです」
 刑事「しかしあんたの家からあんたが誘拐されたから助け出して欲しいと110番があったんだよ。志摩トキさんと言う人、知ってるね?
 恵子「知りません」
 順子「ええーっ? そういうこと言っちゃう?」

 ……嘘です。

 正解は、「お母様が……」でした。

 刑事「どうなんだね、妙なことを言って混乱させないでくれよ」
 恵子「申し訳ありません。でも、ここにいるのは本当に私の父と、そして母なんです。信じてください。本当に父と母なんです。ただ、ただ色んな事情があって、今日までバラバラに生きてきました。今日初めて、ここでこうして親子三人出会うことが出来たんです」

 色んな事情どころじゃないだろ。

 恵子「分かってください。こんな風にして産みの父と母に会うこと、嫁ぎ先の母に言えなかったんです。だから!」
 嘘をついてまで、懸命に清川を庇おうとする恵子の言葉に、目を潤ませる幸子。
 刑事「清川さん、事情はあとでお聞かせ願います。外でお待ちしています」
  
 家庭内の事情かと、急にやる気のなくなった刑事、倉庫から出る。
 清川「恵子!」
 さすがに感極まったように清川が娘の名を呼ぶ。

 直後、幸子がその場に倒れ込む。
 清川「志津子! 志津子……」
 思わず駆け寄り、抱き起こす。
  
 清川「恵子……」
 恵子「お父さん……」

 恵子の献身を見て、漸く人間らしさを取り戻した清川、恵子の肩に手を置く。
  
 幸子「恵子」
 恵子「お母さん……」
 もう言葉は要らない。熱い抱擁が全てを解決してくれるのだった。

 ……しかし、清川、これくらいのことで改心するのなら、とっくの昔にしてると思うけどね。
 感動のシーンではあるのだが、これも、唐突な感じは否めない。
  
 順子か、純子が(ややこしいなぁ)知らせたのか、倉庫の外にはトミーと康夫も来ていた。
 康夫「ここは恵子ひとりに任せたほうが良い、どうやら、あんたたち若いもんの方がいさぎいいようだな。あんたたちを見てると、わしの気持ちなど、えらくつまらなかったことだったような気がする」

 今まで鬼のような形相で散々息巻いてきたのに、あっという間に温和な表情になって復讐心をさらりと忘れてしまう康夫。これまた、いかにも唐突だ。最終回で、全部の問題を解決しようとするから、こうなるのだ。
  
 その後、ひとり倉庫から出てくる恵子、ガードレールに手を付いて景色を眺めていたトミーを見付ける。
 トミー、こちらを振り向く。
  
 当然、こうなる二人。
 何故か、ここで、それを見る萩野の姿が……。彼も気になって駆けつけたのだろう。
 しっかりと抱き合う二人。
 一旦体を離して見詰め合うものだから、次はてっきりキスをするのだと思っていたら、
 もう一回ほぼ同じポジションで抱き合うのだった。

 「キスせんのかーーーいっ!!」(by萩野)
 さて、再び大海原へ旅立つ康夫と、それを見送る若杉と純子。
 康夫「どうやらわしは、日本に帰ってきたのが間違ってたようだな」
 若杉「じゃあ、ひとりでいっちまうのかよ」
 康夫「ああ、海で貞子が待ってるんでな」

 貞子が……?

 想像すると、ちょっと怖い。

 康夫「心配するな。死に損なった命だ。せいぜい大事にするよ」
 康夫の言葉に安心したように笑みをかわす二人。
 純子「志津子さんや恵子さんにお会いにならなくていいんですか」
 康夫「会いたくないことはないさ、でもな、間違えて戻った人間は、そっと消えるのが一番ふさわしいんじゃねえかな。じゃ、世話になったな、達者でな」
 あっさり別れを告げ、タグボートで本船へ向かう康夫。
 具体的に、どんな仕事をするのか分からんけど。
 それを見送る二人。これが、二人のラストカッとになるのかな。
 バタバタと話は進み、次のシーンで早くもパリへ行く身支度をしている恵子。
 順子も、すっかり柔和な顔になり、
 順子「どうお支度できて? これね、パリへ着て行くお洋服、私が見立てたんだけど」
 恵子「わぁ、綺麗……」
 順子「気に入ってくれて?」
  
 恵子、改まった様子で、「お母様、ほんとうに、色々ありがとうございました」
 順子「ふっ、なに言ってるの。それより恵子さん、吉川さんの船、もう出港の時間でしょ。行ってらっしゃい」

 これが順子の最後の台詞となった。
 しかし、恵子の言葉は、役柄の上のことだけじゃなく、百恵さんの、長い間一緒に仕事をしてきた先輩への挨拶のようにも聞こえて、ちょっと感動してしまう。
  
 吉川家が、港へやってくる。
 吉川「見ろ、志津子、あれが第一吉川丸だ。うちの船が荷物を一杯にして出て行くんだぞ」

 ゆっくりと進む大きな船を指差す吉川。
 清川が復讐を諦めたので、吉川海運も無事に事業を続けられるようになったのだろう。

 海難事故の件がうやむやのままだけど。ボースン、何処行ったの?
 真砂子「ほら、お母さん、見えて、若杉さんよ」
  
 真砂子の言葉にカメラがズームすると、確かに、航海士の制服を着た若杉がデッキから手を振っている。
 しかも、横に三郎がいるではないか。

 若杉が、吉川に頼み込んで船員として雇って貰ったのだろう。
 無論、台詞は聞こえないが、そばでタバコを吸っている三郎に、若杉が何か言い、結局三郎も手を振り始めるのが、とても微笑ましい。
 洋一「姉さんどうしたんだろうなぁ」
 と、気を揉んでいると、ほどなく恵子が走ってやってくる。
 同時に、吉川丸の汽笛が鳴る。
 真砂子「恵子さん、早く、ほら、船が出て行くわ」
  
 幸子、疲れ切ったように夫の肩にもたれていたが、恵子に気づいて、笑顔を向ける。
 恵子「お母さん。良かった」
 幸子「恵子……」
 幸子、恵子の頬を撫でていたが、
 それで安心したように、その場に崩れ落ちる。
  
 幸子「真砂子さん、恵子、洋一……、洋一、みんなありがとう、ありがとう」
 がくっと夫の胸に倒れる幸子。これが、幸子の最期の言葉となった。

 洋一だけ二回名前を呼んでいるのが、いかにも女親らしい。
  
  
 それぞれ悲痛な表情を浮かべる家族の姿。
 恵子「お母さん……」
  
 次のシーンでは、幸子の新しい墓の前に立っている清川の姿。
 花と線香を手向ける。
 恵子の姿に気付くが、何も言わずに去って行く。

 恵子「お母さん、お父さん来てくれたわね」
 恵子も、持参の花を供える。

 城達也ナレ(人の世の絆薄き娘であった。恵子を取巻く久保家の家系は、一瞬のうちに浮かび上がり、そして束の間に消えた。しかし恵子は母の墓前に誓った。お母さん、私は久保家の娘に生まれて幸せだったと思います)

 久保家の娘に生まれてっ、と言ってもなぁ……、何度も指摘してきたが、彼女をこの年まで育ててきたのは小島夫婦だと思うんだけどね。途中から、小島家は最初からなかったことになっちゃってるので、しょうがないんだけど。

 くそー、まだあるのか。
  
 こちらの親子も、なし崩し的に和解して、出立前の乾杯を交わしている。
 志摩局長「フランスへ行ったら、しっかりやってくるんだぞ」
 トミー「ええ、少なくともお父さんのような役人にならないように、心掛けますよ」
 志摩局長「おいおい、厳しいことを言うな、ははははっ」
 トミー「でも、ほんとに感謝してます。父さんのお陰で、恵子のお母さんが第一吉川丸の船出を見送ることが出来たんですからね」

 と言うことは、結局、志摩局長、吉川海運の為に便宜を図ったと言うことのだろう。いいのか?

 志摩局長「もう良い、信夫、これからは君たちの時代だよ……そう、君たちのな」
 噛み締めるようにつぶやく志摩局長。もう一度、トミーとグラスをあわせる。
 いよいよラストシーン。
 パリへ向かう飛行機の、タラップの途中、立ち止まって見送りの人たちを見る二人。
  
 志摩家の三人に、萩野、洋一の顔も。どいつもこいつも暇だなぁ。

 どうでもいいが、純子は、まだ若杉とは結婚してないのだろうか?
  
 何故かここで、恵子の視線は「お母様」に注がれ、順子も応じて手を振る。

 強敵と書いて、トモと呼ぶ。

 洋一「がんばれよっ」
 洋一の声に微笑み、機内に入る二人。
 さすがに、二人一遍に旅立つので、寂しさを隠せない順子。
 動き出すジャンボジェット機。
 洋一「萩野先生」
 萩野「なんだ」
 洋一「ひょっとしたら、先生、恵子姉さんのこと……」
 萩野「それより、君も来年の受験を頑張れよ」
 堂々と誤魔化す萩野。

 まさか、こんな台詞が最後の台詞になるとは。
  
 普通なら、機内の二人の様子を映すものだが、そんな余裕がなかったのか、機内の映像は一切ない。
 離陸するジャンボ機と、もう一度見送りの人たちを映像を映しつつ、城達也さんのナレーションで締める。

 城達也ナレ(そこに新しい絆があった。古い絆の代わりに、今、新しく芽生え始めた若い絆の旅立ちがあった)

 (機内にて)
 トミー「ところで恵子」
 恵子「なに、信夫さん?」
 トミー「僕、フランス語喋れないんだ」
 恵子「知るかっ」

 チャンチャン! おあとがよろしいようで(よろしくあるか)。

 と言う訳で、長きに渡ってお送りしてきた「赤い絆」レビュー、これにて終了。ああ、しんどかった。